空虚

俺には何もない

過去むかしの想い出

現在いまの現実

未来これからの希望

それらの日々がない

あるとすれば空虚くうきょという名の生命いのちだけ

俺という生物が産まれた瞬間に得た生命いのち

俺という人格が生まれた瞬間に獲た空虚くうきょ

気がつくとその二つだけが俺に寄り添っていた

どんなに笑っていてもその裏には空虚があった

どんなに笑わせていてもその裏には空虚があった

喜び、怒り、哀しみ、楽しさ

全部すべてかげに隠れていつもそこに空虚があった

俺の過去むかしは空虚に包まれ

思い出など存在しない

俺の現在いまは空虚に苛まれ

何一つ感じられない

俺の未来これからは空虚に包まれ

絶望すらも許されない

タスケテ

と言えるほどの人間ではない

タスケテもらえるほどの人間ではない

俺が他人ひとをタスケテも感謝される価値はない

全部すべてが空虚に包まれた俺は

他人から感謝されてはならない

生命いのちがある空虚の塊は

恩を仇で返されても仕方がない

なぜこうなったのかなどわからない

気がつくと空虚しかなかった

友人も知人も家族も俺自身も

俺にとって全部すべての他人が空虚の外側にある遠い存在となっていた

泣き言を言えるほどの人間ではない

泣き言を言っていいほど生きてない

生きてはいても活きてはない

死ねば終わる

終わらせることは出来る

ただ一つ他人と共通する生命いのちという空虚

それを手放すことは幸せか不幸せか

結論こたえは出ている

その空虚を手放した瞬間に俺はきっと

全部すべての他人と同じ世界にいく

ただそこには俺はいない

誰かが俺を見ていて

誰かが俺を思い出してくれるかも知れない

それだけしかない

それならばせめて

たった一度だけでも産まれてきてよかった

生きていてよかった

そう思える瞬間を活きられるまで

俺は空虚を抱いて空虚と共に過ごす

求めるものは何もない

あるとすればただ一つ

空虚の外側にある世界

俺は空虚だ

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