第23話 幕間 ロボさん空を飛ぶ

「そーらを自由に飛びたいな。はい!」


「マスター……。お薬は体によくないですよ、廃人になりたいのですか?」


 今日のメイドさんはきつい、俺はまともだ。いやさすがにテンション上げ過ぎたか……


「いやいや、ロボさんや、君は何も分かっていない。空を飛ぶのは男の子の夢だ。それにそのネタは笑えない」

 

 ――薬で空を飛んではダメだ、絶対に。


 今回、俺は飛行機を作ることにした。外の世界に行くのにいちいちロッククライミングするのは面倒だし、第一カッコよくないからだ。



 さてと、俺は工房に行くと様々な魔石やミスリル鋼材などを並べて一通り思案すると。


 ――やはり、あれか、やってしまうか。いいのかあれを作ってしまって。


 少しだけビビりながら。ミスリル鋼材でプロペラをつくり可動部分を魔石で動くモーターに接続した。



 出来てしまえば。なんてことない、オリジナルよりもプロペラがかなりでかいから全く別物だといえるしな。


 そうして、試作型ロボットの頭頂部にセットし起動実験を行った。


 なんということでしょう。プロペラが回転しだすと試作型ロボットの首がねじ切れて明後日の方向に飛んで行ったではないか。



 ――そうだった。俺は夢を優先させて力学のことをなにも考慮してなかった。


 プロペラは回転運動によってカウンタートルクが生じる。それを相殺するためにヘリコプターでいうところのテイルローターを設置する必要があるのだ。


 しかも同時に俺は気づいた。これは危険だと。吹っ飛んだプロペラに殺されそうになってしまったのだ。

 人間サイズで飛ばそうとしても、それなりに大きなプロペラが必要になり危ない。


 最初からヘリコプターを作ればいいのだが。それにはいろいろ手間がかかるし洞窟内ではやはり大型の乗り物は無理があるか。



 小型でパワーがあると言えば、やはりジェットエンジンしかないか。 



 これは大仕事になるが、いいだろう、やりがいがあるじゃないか。



 俺が作ったジェットエンジンはざっくりいうとこうだ。

 

 まず、ミスリル鋼材で作ったファンから空気を吸い込み、コンプレッサーで空気を圧縮させる。


 圧縮した空気を火の魔石により燃焼させる。その後はタービンを通して後方に噴射させる仕組みだ。ちなみにエンジンスタート時は風の魔石によりコンプレッサーを回転させる。



 実に簡単にできてしまった。ミスリルというファンタジー金属のおかげで火の魔石の燃焼にも耐えているのがでかい。



 早速、試運転を開始した。キーンという音がし、エンジン後方からものすごい勢いで燃焼ガスが噴き出した。


 ――成功だ。


 その後も何度かテストを繰り返し、試作型ロボットで飛行実験もした。いよいよ本番だ。



「よし、ロボさんこれを背負うんだ。ジェットパックというやつだ。ロボットは後期は飛べるようになるのもセオリーの一つだからな」


 ロボさんは自分の身体よりも小さなカバンのようなジェットエンジンを背負いながら。


「マスター、またおかしなものを作りましたね。こんなことなら空を飛べるお薬でもお出ししたのに……」


「むう、ロボさんや、またそんなことを。いいかい? これは全ての男の子の夢なんだ」



 しぶしぶ言いながらもロボさんはジェットエンジンを起動し、空高く飛ぶ……はずだった。



 しかし、ものすごい勢いで噴射したガスが地面に跳ね返り、彼女のスカートがおもい切りめくれあがってしまった。


 あろうことかスカートの端がジェットエンジンの吸気口に吸い込まれ。彼女のメイド服はズタボロに引き裂かれてしまったのだ。


 緊急停止したジェットエンジンと相まってか沈黙が周りを包んだ。



「マスター……。女性の服を引き裂くのが全ての男の子の夢なのでしょうか?」


「ち、違う! そういう輩もいるにはいるが、俺は断じて違う!」



 ――後に、ぴっちりした防火性のボディースーツを作り。無事、飛行実験は成功したのでした。


 ちなみに飛行制御が難しいのでロボさん以外は飛行できないという落ちがつき、異世界さんの空への夢は終わりました。


 異世界さんはパイロットになれなくても、綺麗な飛行機を作るのが夢だという男の子だっているのだと熱弁していました。


 たしかに空を飛ぶロボさんはとても綺麗でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る