第15話 エルフさんと僕①
――地下一階 大森林にて
僕たちはいったんダンジョン工事を中断して。僕とロボさんの住んでる家に戻っていた。
僕らの家は地下一階、大森林の中央にある湖のほとりにあった。
ワンドさんのメンテナンスもそうだったけど、複雑な作業はこの家にある工房でないとできないからだ。
では今は何をしているかというと。リッチさん専用の工房を増設しているのだ。
リッチさんにはぜひダンジョンで生活をしてもらいたいと思っていたのだけど。何分まだ未完成だったし、工房をダンジョンに設置するにはいろいろ時間がかかる。当面は僕の家の隣に立ててもらうことにした。
ちなみに、僕たちの工房も元々は異世界さんの工房であった。彼が今まで作ったいろんな発明品もここで作られた。
リッチさんとワンドさんは今は家で寝泊まりしてもらってる。
リッチさんも寝るんですねと聞いたら。当然だ、寝ないと心が休まらないだろうとのことだった。
たしかにその通りだと思った。当然僕だって寝るし、ロボさんだって寝る、記憶の整理をこまめにしないと爆発するといってたし。
「このまま、この家で過ごせばいいじゃないですか」
僕がそういうと。ロボさんは僕を見つめながら言った。
「いいですか、今はそれでもいいですけど。ワンドさんはいずれ身体を手に入れるでしょう。
そうなった場合は、当然、私たちとは別居してもらいます。マスターは馬に蹴られて死にたいのですか?」
それもそうだ、二人の邪魔をしてはいけないのだとロボさんは遠回しにいったのだった。
そうして、リッチさんの工房(仮)は僕の家の隣に完成したのだった。本当は僕たちの工房を使ってもいいといったけど
リッチさんたっての願いだったのだ。下手に触って迷惑をかけるのは申し訳ないとか。自分の空間でないと集中できないとか。
さすがは、教授だっただけのことはあるようだ。
いよいよワンドさんの素体である魔導人形の作成に入ったので僕たちはその見学に来た。
いきなりクオリティが高い人形は無理だから何度か練習が必要だろう。リッチさんも今までは魔導人形に嫌悪感を抱いていたため、まったくの素人からのスタートだった。しかし、今回は大事な人の身体を作るという使命感のようなものもあり嫌悪感は皆無だった。
また彼は新しいことに挑戦できることに感謝しており、とても楽しそうだった。
僕はうまくいくといいなと思いながら彼の作業を見守っていた。
最初に出来上がったのは二頭身の寸胴な体に手足が生えた、どこかで見覚えがある素体ができた。
「うむ、わかってはいたが。造形は奥が深い……」
リッチさんの懐の中にあるワンドさんから禍々しいオーラがあふれ出ていた。
「ち、ちがうぞ、あくまで最初は感を掴むためだ。けして君をイメージした訳ではない」
「リッチ様、さすがにそれは酷すぎですね。フォローのしようがありません」
あ、そうだった、見覚えがあると思ったら、この造形は異世界さんが最初に作ったやつにそっくりだ。
そうして僕はリッチさんに提案した。
「大丈夫ですよ、異世界さんだって、最初に作ったのはこんなもんでした。
それから今のロボさんになるまで結構時間をかけてましたよ。気長に行きましょうよ」
「うむ、フォローありがたい。しかし、問題は材料だな、私たちのために貴重な魔法粘土を無駄に浪費してしまうのも悪い気がする」
別にそんななこと気にしなくていいのに。真面目な人だなと思った。
「なら、こうしましょう。いきなり大人の身体を作るのではなく。子供の身体を最初に作って人型に慣れていけばいいんじゃないですか?
それなら材料を半分以下にできると思うし」
「ふむ、名案だ、それならば彼女の希望にも答えられるしな」
どうやら、ワンドさんは人型の身体が待ちきれないらしい。よほどメイド服が着たいのだろう。
「そうすると、服がありませんね。ここには子供服はありませんよ? 裸でいいなら構いませんが」
ロボさんが喜ぶリッチさんとワンドさんに水を差した。いくら子供でも裸は可哀そうだ。
「ロボさん、いじわる言わないで服を作ってあげてよ」
「しょうがないですね。では子供服程度なら、今ある材料で何とかなるかもしれませんね」
「そんなに少ないんですか? そう言えばあれから随分といろんな服を作ってましたからね」
「何から何まですまないな、しかしメイド殿は服も作れるとは、異世界殿は実に多彩だったのだな」
「あ、違うんですよ、ロボさんは最初は服は作れなかったんですよ。
でも一緒に住んでたエルフさんに教えてもらったんです」
「ほう、そういえばそのエルフ殿とはこの大森林を作った方と同一人物なのかな?」
「はい、そうですね。僕たちとエルフさんはちょうど森ができる前のこの場所で出会ったんです――」
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