エッセイ

すばる

小学生の頃の話

私がいわゆる「オタク」になったのは小学六年生の秋だった。当時、クラスでは軽いいじめ_いじめと言うほどのものだったかはわからないが、クラスメイトからハブられたり陰口を叩かれている女の子が一人いた。彼女をKさんとしておく。Kさんの机に触れてしまったら他の人に擦りつけて、擦りつけられたらまた別の人に擦りつけて…というなんとも馬鹿な小学生らしいことをされていた。ちなみに陰口の内容は「指で鼻をほじっていた」だの「鼻くそを食べていた」だの「フケがたくさんついている」だの。でも、そんなくだらないことをして優越感に浸っていた奴らの中に私の好きな人がいて、好きな人に「ノリが悪い奴」とか思われたくなくて、なんとなく私も加担していた。今はどうしてアイツなんか好きになったんだろうと思うけど。

加担と言っても、私がしていたのはせいぜい机を少し離したり、悪口を言われているのを「へ〜」と否定も肯定もせず聞いていたぐらいだった。だってKが何をしていようと興味がなかったから。なんと思われていようと私には関係なかったから。別に陰口を叩くこと自体は悪いことだとは思っていない。良くないな、と思うのはそれを本人の目の前で言っていたこと。他人の行動が気に障ったりするのはわかるし他人を嫌う気持ちもすごくよくわかる。現に私も吐くほど嫌いな奴が何人かいる。でもそういう愚痴を、直してほしい訳でもないのにK本人に聞かせる必要があるか?ただの嫌がらせだ。そりゃそうか。アイツらは彼女を嫌ってたんだから。

運動会の準備のときだっただろうか。たまたま私がKの机の横を通った際に、アレが目に入った。当時私が一番好きだったアニメの下敷き。共通点を見つけた瞬間、Kは私にとっての「ただのクラスメイト」ではなくなってしまった。今まで無関心だったくせに、急にKを庇うような気持ちが湧き上がってきた。その時は「これ〇〇だよね、好きなの?」くらいしか言えなかった記憶があるが、それ以来私はKに自分から関わっていくことにした。

Kに話しかけるようになってからすぐ、HRで担任が言った。詳しくは覚えていないけど、「良くないことが起きている」だっけか。そんな予言者みたいだったかしら。とりあえず、担任は私たちから言うのを待っているようで、でもほとんどみんな加害者だったから誰も何も言おうとしなかった。ところが、なんの正義感か知らないが、私は手を挙げてしまったのだ。「Kさんが、クラスの人にわかりやすく嫌われていること…ですか?」私の声はひどく震えていた。当時の私が全力でオブラートに包んだ結果の言葉がこれだったのだが、もう少し良い言い方があったんじゃないか?まあこれで伝わったし、担任が言いたかったのはそれだったので良いことにする。発言に力を使いすぎて、その後のことはあんまり覚えてないけど。

Kとつるむようになってから、つるむ前に仲の良かったSは私から離れていった。クラスメイトから「喧嘩でもしたの?」と聞かれた時に「してない。すばるは好きだけどKが嫌いだから一緒にいたくない」と堂々と宣言していた。なんつーメンタル。私は自分が嫌われているのではないことに安堵しつつも、酷い話、Sと関わることに疲れ始めていたから丁度良いと思った。

Kはオタクだった。そういえばKがハブられていたのが、Kがオタクだからという理由もあった気がする。陽キャの「オタクきも笑笑」というやつである。Kと関わるうちに当然布教をされるわけで。それで私はとあるゲームに出会ったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

エッセイ すばる @tikuzenn

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ