第五章。無限の球の瓶
5.1. 倉崎沙也香の初登場
「松兼君、焼き蕎麦一個や冷やし蕎麦二個の注文だ」
「はい、苺味のアイスクリームです。ごゆっくりどうぞ」
「ん———、この親子丼は凄く美味い、父ちゃん」
「ママ、化粧の屋台に行ってみようよ」
「うわっ、凄えな水色の物が生えちまったぞ」
「わ——、電球が光ってるよ。うちに持ち帰っても良い?」
「なるべく手しっかり握って腕の動きを使って下さい」
「弦を指がもっと優しく揺らすべきです」
「どうか、どうか易しい問題が出てきてくれますように」
「こらっ、うろうろしちゃ迷っちゃうぞ」
「本当に大きい屋台だね。彼奴らこの地を買えたらも常人じゃないかもな」
「いらっしゃいませ。ごのんびりお参り下さいませ」
「混雑お避けする為、並びの順番お守りお願い申し上げます」
「お客様、改めてこう申し上げます。時間お守りする為、なるべく全ての屋台を体験する時間お配りするようにして下さい」
「ちょっと君、厠はどこにあるかい?」
「あの舞台の後方の数メートルにあります。あっちのタイルの道の方向に歩いて下さいね」
7時15分。最早夏祭りの一夜目が人の賑やかさにさっぱり覆われていた。私達の屋台組の前では短い時間で既に大並びになっちまって、並びの最後の位にいたゲスト達に他の屋台を試しといた方が良いと私達が求めているほどだった。笠人君の屋台組は一番忙しい屋台組に決まっている。彼の屋台組は一瞬小さな飲食店となった、彼が仲間と一緒に働き始めた直後。並びがどんな長くても、お父様とお母様の情熱な協力と共に、笠人君と綾瀬ちゃんが叫び声を調節し、料理人の全員も機械のようにお料理を次々と出すことが出来た、初めてから思った通り間に合わなく出したものの。
夏祭りの開幕を宣言した後の私と純彦君はお腹が大変減っていたが、澁薙君と音楽部と舞踊部の皆が自分のお腹を満足させるまで我慢して待機しなければならないことになった。彼らは毎日毎日頑張って練習していたから、あの物凄く素晴らしい演奏を完成させてくれたから、優先的にして仕方ない。降恆ちゃん達そして全ての屋台の担当者達も私達の発表と演奏の間に暇を見付けてもうお持ち帰りを食べていたから、残りはたったこの二人共。
「皆食べ物を買ったぞ。二人共の番だから速く」、澁薙君が知らせてくれた、温かそうなうどんをずるずる啜りながら。半時間以上待っていて遂に食べられた。こんな時間には夕食を始めるなんて体重に悪く影響しちまうかもが、8時にならない限りどうでも良い。
「笠人君、食べ物まだ残ってんの?大勢の人がさっき集まってってるのだって」
「ここは9時までに売り切れになるんだから安心してよ」
「お父様とお母様がいたら心配なく。二人共は立派な発表を完成させたことで、だけあってのお料理をあげるに決まってる」
「だから、お身内を最後のお客様にしちまいましたね」
「そうよ。お前達が僕のお店でたっぷり食事をしてるし、お身内を優先にしたら飲食店の規則を逆らってしまうし」
「その通りだ。俺達はお客様を一般的に認めて公平にお料理を出すこと」、笠人君がもっと悪戯らしい言葉を加えた。
「しんどいよ、二人共、その冗談をしてるなんて」
「じゃー、お前ら何を注文する?時間がないだろ」
「お父様と笠人君、あおゆみの特別の親子丼を頂戴」
「俺は中華風の炒飯を注文する」
「はい、畏まりました。丼と炒め物のご注文でございます。7分お待ち下さい。お持ち帰りそれともここで食べること?」
「ここで食べることにしよう。もう7時半以上になってお客様の大並びがデザートの屋台に移ってるからさ」
「二人共の注文が出来たら俺も直ぐにあそこに移ってくるよ」
「だってね。暑いなら甘い物に惹きつけられるわけだ、皆は」
「当たり前でしょ、スミヒコ君。あそこでお母様が必死に働いているから、お父様じゃないと笠人君こそ手伝ってく」
「何でお前の言い方は僕を簡単に考えさせられないだろ?」
「お父様ただ考え方をどこへ向けているのです。私のせいじゃありませんよ」、私の言い方も純彦君をぱっと笑わせた。やがて、綾瀬ちゃんが二つの温める料理を出してくれた。鶏肉が煌めく黄卵を浴びた私の親子丼、そして実った玉蜀黍の種のような煌めく飯の種の純彦君の炒飯。やはり、綾瀬ちゃんと男達の腕を立派に良くさせたのね。
「あらっ、やっと夕食をしてるんだね」、思いっきり食べていた間に松澤先生の声が聞こえた。松澤先生が側の席に座っていた、赤を混ぜた白いアイスのグラスを持ちながら。次いでは、軽部先生と八田蜜の
「あらっ、先生達もここにね。森坂先生はどこにいますか?」
「森坂先生はデザートの屋台で君の母親と話しかけてるさ」
「三年間の仲良しですから。私達の発表は如何でしょうか?」
「政治家殿が拝読した発表みたいだけど、虹を手作りに生み出す実験そして観客との話し合いのお陰で、詰まらないのが減ったんだ」
「その後のよさこいの演奏も素晴らしいんだね。葛飾北齋殿の有名な浮世絵をもとに詩と曲を作って上手だろ」と言った松山先生。
「東京大学なら驚かないんだ。驚いたのは東京大学生の作った旋律の下で小田原の生徒達がしなやかに演奏を支配出来たものだ」と言った軽部先生。
「劇場の音楽会を見たみたいと言いたがったよね、軽部先生。この町の子供達は彼らの学校で自分のクラブを設立したのさ。音楽と舞踊なら最初から狙っていた訳」、松澤先生がそう説明して松山先生と軽部先生を交流会のことを思い出させていた。
「あー、あの交流会のお陰なんだね。小田原の全ての学校には音楽部、舞踊部、しかも美術部もあったこと」と言った松山先生。
「そして最新は私達のクラブなんです」、純彦君が咄嗟に話し合いに参加した。それは松澤先生を一つ質問させた。
「確か絲島君と渡邊さんのクラブは6月末に設立されたそうだね。どうして昨年の少年祭の折に設立してなかった?」
「資本と財政の問題だからです。文化に跡を残した芸術と違って、科学ならお金や知識を沢山身に付けないといけません。戦争が激しい状態になった時にはお金が一番大きな問題だったし、廣瀬君の父親も八田密の一番の問題だったし、一段で解決するには少年祭しかありませんでした」
「そういうことです。少年祭のお陰で、八田蜜の金庫ばかりか小田原の金庫も復活することが出来ました。勿論、私達の財布もかなり厚くなることになったのです。お金を脇に置いて知識と言ったら、知識だけでは足りなく製品もあっては余裕です。製品があったら友達と皆のご信用を受けることが可能ですから」
「渡邊さんなら必ずそう言う。成果じゃなくて製品だね。ここを煌めいて光っている交流電流の発電機を制作していた間に君が必ずその格言を守っていた。発明家ならその格言を焼き付けるものだ」
「はい、軽部先生がその言葉を教えて下さいましたから。ところで、私達の製品を試すのは私と純彦君と一緒に行きませんか?」
「是非行くよ、渡邊と一緒に」、松澤先生が興味塗れで答えた。
「私なら担任として絲島君と一緒にするよ。軽部先生はどう?」
「私は森坂先生と二人っきりで良いと思ってる」
「あたしも行きます、渡邊雅實さんと一緒に」、あるとても美しい女子がいきなり出てきてそう言った、藤模様の赤い浴衣や、髪をお団子の型に結んだ緋色のリボンの華やかな姿と。微かに鋭そうで茶色を混ぜた二個の真珠のような煌めく目、元気なピンクの両頬、雅やかな横顔、すべすべそうで艶々そうな肌、艶やかな花魁のような身体。
「わー、綺麗すよっ嫌っ、綺麗ですよ、貴方は」、彼女は私が同じ女でもそう褒めたほど美しい。
「お美女さん、ご注文下さい。屋台の献立表は右側に」、お父様が彼女に注文して貰うと求めた、お母様と初めて会うような声で。
「あっ、はい・・・じゃー、炒め素麺お願いします」
「畏まりました。少々お待ち下さい」、お父様が注文を受けた時、好奇に頭を出して見た数人の男が直ぐにその注文を取りにそっと争った。ったく、彼らが新たな美人の料理を作りたいのね。
「多分降恆君のライバルかもしれんぞ、彼女は」と私を耳打ちした純彦君、あの女の外見について。それは私が否定出来ないの。
「綺麗なお嬢さんのお名前は?」と問った松澤先生。
「あっ、すみません。あたしは
「こちらこそ宜しくお願いします。倉崎さんは今まで夏祭りと呼ばれるお催しに参加したことがありませんのでしょうね?」
「はい。初めてで、あたしこのような浴衣の姿と参加してます」
「ここに来た時、貴方には他の知り合いが付いてきてますか?」
「いいえ、あたし一人で。更に、先ほどここに入りましたので、あのよさこいの演奏のただ歌を遠くで聞こえていたのですが、それだけでも気持ちが昂りました」遺産
「わー、聞くだけで盛り上がる感じがしてくれて嬉しいですよ」
そして、倉崎さんの炒め素麺が出てきた。しなやかな各麺がそれぞれ編み合い毛糸の鞠の形が出来て自身の黄色、海老の橙色、砕いたトマトの赤、葱と萵苣の緑、胡椒の黒で光を反映したその外見は、倉崎さんをそっと優雅な女子から食道楽の信者へと変えちまった。箸を上げ口に入れた度に幸せ極まる顔をしていた、まるで「生まれて初めてこんなに美味しい料理を食べたことないよ」と伝えるように。箸を動かし続け、なるべく最も短い時間以内にこの物凄い素麺を食べ切ろうとして、私達を口を開けたまま驚かしちまったの。確か10分未満後、その皿の上に何も残っていなかった。
「匙でさえソースを掬い切って皿を真っ白に、貴方は。これじゃあの綾瀬さんを洗わせませんよ」
倉崎さんが早速優雅の状態に戻っておしぼりを取りすっきり口を拭いた。「素麺は極めて美味ですし。どの方でも自分が作ったお料理をこのように食べ切ってくれたらとても誇らしい感じを持ちます」
「ほらっ、美人の言葉が聞こえる、池澤君?誇らしい気持ちを」、お父様が倉崎さんの料理を作った池澤君に彼の気を乗らせるのに知らせた。さっさと池澤君が凄く喜んじまったよ。
「池澤君そして料理の屋台組の皆も同じ上手な調理の腕なのですけど、彼らの一番腕が良い一人は松兼笠人君、ここの担当長で、その兄さんの愛弟子であります」
「兄さんって言って何だよ?更に『であります』っても」、お父様が不満そうな声を出しながらも本当の快心を隠さなかった。「笠人君は僕の店の最も若い料理人なので、最も長い教え込む時間を過して、あの子を料理長へとならせるその為だった」
「そして松兼君も友達にご調理を教えて特訓してあげましたね」
「そうよ。二年間だけ経ってあの子はこうなって僕をそっと呆れたんだ。さっ、皆も長い時間にここに座ってたから、時間の為にちゃんと巡り歩きなさいよ」
「はい、早速、お父様。じゃー、スミヒコ君、支払いしようよ」
「勝手に俺のあだ名を呼ぶなよ、お客様の前で」
「貴方達は沢山お金を出してここを造りましたでしょう?」
「食客なら誰でも払うことは当然です。更に、貴方の為に私達の奢りです。えと、炒飯、親子丼、炒め素麺は合計・・・24銭13厘」
「君の10銭は俺より多いから2玉引いて。俺は5銭の1玉や1厘の3玉引いたら十分」
「適切な配分だよ、財布の相関の問題に・・・はい、過不足ない24銭13厘です」
「あやっ、数秒以内にその配分が出来たなんて。11月までにももっと恐ろしくなってよ、二人共」
「どうせ数学の屋台組に入りますから、先生ごゆっくり・・・」
「松兼君と山口さんを特別な担当によって除いて、私と渡邊さん以外に、日澤さんと越川君も自分の屋台組から巡り歩く旅に参加。この祭を開きましたので司会者を担って、全ての屋台組の進捗を見たり上級な案内をあげたりお客様と一緒に遊んでみたりします」
「面白そうなの、あの旅が力を沢山引き出すと感じがしても」
「はい。貴方と松澤先生と松山先生は私達担当者の大変な仕事を試してみます。やり抜いたら旅館に帰ったと朝まで眠り切れますよ」
「そう。それぞれの屋台に訪れて体験する時間は30分から35分までぐらい限られます。連続体験の屋台は特に15分で延長。10時半に停止してしまうこの祭の毎晩の一方で、全ての活動を試すことが出来ませんので、祭の経過に連れて行う訳です」
「巡り歩く旅をただの遊びと認めたら苦労でも楽しくさせるのです。まずは甘い物の屋台に行きましょうか?さっき風味豊かなお料理を食べたばかりなので」
「良いよ。組に別れる前に口と喉を涼しく綺麗にしないと」
あっという間に、大勢の人が集まっていた賑やかなデザートの屋台に移った。お母様と笠人君達は習熟した両手でつくづくデザートを出し続けていたと同時に、パンを思いっきり焼いている暖炉から脱出した煙が屋根を渡っていっていた、残り二つの屋台より強烈に。だが、いくら煙が強く厚く発出しても、パンの生地が適切に調理されたうちの魅惑的な香りを運んできていたよ。遠くで立ったらその気がする。近付いたら二つの逆の感覚が同時にする。何故なら生地を調理する暖炉と、クレームや果物などを蓄える冷凍庫はこの屋台を二つに分け合ったように同時に暖気と冷気を発出していた。
並びは5分以内に縮め切ってよかった。私達の出番までは、お母様と笠人君は市松模様の手拭いを濡らすほどの汗で草臥れそうなものの、まだ熱情を取り戻し、私達のジュースの注文を全うしてくれた。その時、倉崎さんには多分二つの対立的な表情が見えていた。それはお母様の優雅な美しさと手厚い話し方のことと、笠人君の熟練な技術のことに憧れる表情や、私がまだ思い浮かべない何かが怖がる表情。その二つの表情は恐らく一つになったかも、お母様が渡してくれた橙のジュースを啜ってみた時。
「倉崎ちゃん、君も気軽になったのでしょうね?先ほど君の気持ちはどこかで薄くて不安そうなものだけど」、お母様が多分倉崎さんの表情を読み取っちまったようだった。
「いいえっ、何でもありません。ただ巡り歩く旅をもう直ぐしますのでちょっとどきどき感じがするからです」
「いずれの問題が発生するなら、ちゃんと雅實ちゃんのことに頼んでね。但し、うちの娘なら仕事に没頭して君を吹き晒すことがあるから、ちょっと気を付けて欲しい」
「お母様、昨年の時の愚痴を繰り返さないで下さいよ」
「でも事実じゃあるまいか?君の過剰な熱情の有難いことで、小学校の頃も中学校の頃も学校やうちを騒々しくさせてばかりで、君の先生達さえも疲れてしまったでしょう」
「せめて同じその熱情がある友達がいますーよー」
「純彦君にとってはその分が正しいけど、残りの君の親友にとっては『ある』ではなく『染まる』なの。でも、その熱情を持ってくれてどうーもー」、お母様がわざと私と同じ最後の言葉に音韻を延ばし、倉崎さんに咄嗟に妨げようとした笑いのような声を出させた。
「お姉さんと渡邊さんの小話が緊張感をほぐして下さいました。必ず心の奥まで楽しんで参ります」
「私達もその楽しみをお客様として貴方に共有することにしますから・・・お母様もお父様と一緒に夏祭りを遊ぼうと思ってますね」
「うん。今夜は子供達の為にご苦労になって悪くないかもしれないけど、次の夜は是非ヒロシちゃんと飽きてしまうまで遊んでいく」
「はい。その時、私の監視に任せといて下さいね。明日も宮原おじさんのお菓子を再び味わいたいの」
「うん。お前に多く力を加えるでしょ。それじゃ、皆良い旅を」
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