地下四階

第18話 迷宮事変★

《カメラドローンが一瞬ですべてブラックアウトしたのですね?》


『イエス。だから状況がわからない。もしかしたら全滅したのかも』

『★TOKION★はレ・ミリアたちと同じレベル8で、探索のトップ争いをしてた。

リーダーの戦士の名前が★TOKION★っていうDチューバーのパーティ』

『ドローンを全部叩き落としたとすると範囲攻撃だと思う。でも呪文は詠唱に時間が掛かるから奇襲攻撃驚かすのには向かない。竜息ブレスだと思う』

『 “緑竜ガスドラゴン”がまた出たんだ。あいつら四階に巣くってるから』

『ガス以外に、そこまで強力な先制範囲攻撃を持ってるMOBは四階にはいない』

『でも今の迷宮は普通じゃない。難易度レベルデザインが明らかに狂ってる』

『また深層から強力なMOBが湧いてでたのかも』


《なるほど》


 Dチューバー★TOKION★たちのパーティに起こった異変は、瞬く間にネットを駆け巡り、昨夜のレ・ミリアたちの全滅に続きダン配ファンを騒然とさせた。

 メンターの浮き足だったコメを、エバさんは対照的に沈着な表情で確認している。


『ど、どうするの?』《ど、どうするの?》


 メンターとは思えない情けないコメントをしてしまう僕。

 期せずしてケイコさんと、ユニゾンしてしまった。


《慌てず、急いで、慎重に進みます。迷宮の危険が増していようとわたしたち自身が “闇王ダークロード” に追われている身ですから。ですが最低限の保険はかけておきましょう》


 そういうとエバさんは背嚢リュックを下ろし、中から何かを取りだした。


《ケイコさん、これを着けてください》


《ヘッドカメラ?》


《予備の物です。集音マイクつきですから、もしもの場合も配信を続けられます》


 ケイコさんは言われるがままに、ヘッドカメラを装着した。

 手慣れた様子で電源を入れると画面の端に、ケイコさんから見たエバさんの映像が映し出される。

 ヘッドカメラは咄嗟の際にブレが酷くて配信ではあまり使われないけど、非常時の予備として携帯されていた。


《次にドローン5を失われてしまったドローン4の代わりに、後方を警戒するカメラにしましょう》


 ドローン1 前方警戒と、前方からエバさんをカメラ

 ドローン2 右側面警戒と、右からエバさんをカメラ

 ドローン3 左側面警戒と、左からエバさんをカメラ

 ドローン4 後方警戒と、後方からエバさんをカメラ(“闇王” によりロスト)

 ドローン5 エバさんの周囲から、エバさんをカメラ


 ドローン4が失われたので、遊撃ポジだったドローン5を後方警戒に回すみたい。

 多少は見づらくなってしまったけど、また全周をカバーできた。

 これにエバさんとケイコさん、それぞれの視点のヘッドカメラが加わる。


《進発します》


 エバさんを先頭に、歩き出すふたり。

 三階からの縄梯子は、東西に長く延びる回廊の真ん真ん中に垂れていた。

 ふたりが進むのは東。

 闇の浮かび上がる線画の迷宮が、どこまでもどこまでも続いている……。

 

 不意にカメラ1~5の映像が激しくブレた!

 ケイコさんのカメラに、盾を構えて彼女の前に立つエバさんの背中が映る!

 

 キンッキンッ!


 連続するが盾に弾かれる硬い金属音!


「な、なに!?」


『カメラ1、ロスト!』

『カメラ2、ロスト!』

『カメラ3も、ブラックアウトした!』

『5も映ってない!』


 恐慌を来す視聴者リスナーたちに関係なく、生き残ったエバさんとケイコさんのカメラが、前方から音もなく寄せてきた “闇” を捉えた!


 ガキンッ!


 エバさんの盾が、さらに重い金属音を上げる!

 飛び散る火花が、人の形をした “闇” を浮かび上がらせた!


《やはり、★TOKION★さんたちのカメラが死んだのはこういう理由ですか》


 エバさんが盾受けする “闇” に向かっていう。

 迷宮の闇に溶け込む、漆黒の着物を着た男Man in Kimono

 片刃の直刀でエバさんの首筋を狙った、東洋の暗殺者アサシン――。


「“上忍ハイニンジャ” !」


https://kakuyomu.jp/users/Deetwo/news/16817330665194178066


 驚愕が僕を震撼させる!


「どうしてこいつがここに!?」


 だってこいつは、こいつがいるのは――!


「“飛苦無” でカメラを潰し、動揺した探索者を驚かすSurprise Attack。鮮やかな手並みです」


(エバさんは気づいていた? ★TOKION★たちを襲ったのが “上忍” だって?)

 

《詠唱に時間が掛かる魔法では先制攻撃はできません。そして先制可能な竜息ブレス中規模グループ範囲の攻撃。天井ギリギリを滞空するドローンを全滅させるには到りません。消去法で残るは遠距離武器によるですが、迷宮でそんな芸当を可能にする技術を持つのは――》


「でもこいつがいるのは、モンスター配備アロケーションセンター! 昇降機エレベーター ルートの区域エリアじゃないか!」 


《ええ、ですから出張してきたのでしょう。当然、


 エバさんがそういうなりケイコさんのカメラのマイクが、前方から接近する複数の足音を拾った。

 ガチャガチャとやかましい、金属の鎧と鉄靴サバトンの音。

 その騒音に紛れる、スタスタと石畳の床を叩く軽やかなブーツの音。

 “上忍” に続いて回廊の闇から現れる、六人の人影。


 “レベル7戦士ファイター” ×2

 “レベル7魔術師メイジ ” ×2

 “高僧ハイプリースト” ×2


 迷宮が出現して以来探索者の地下五階への侵入を頑として阻み続ける、難攻不落の警備部隊パーティが立ち塞がる。



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ご視聴、ありがとうございました

エバさんが大活躍する本編はこちら

https://kakuyomu.jp/works/16816410413873474742

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実はエバさん、リアルでダンジョン配信をしてるんです!

エバさんの生の声を聞いてみよう!

https://www.youtube.com/watch?v=k3lqu11-r5U&list=PLLeb4pSfGM47QCStZp5KocWQbnbE8b9Jj

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