ビクトリー!
一ノ瀬 夜月
第1話
私が高校に入学してから、一週間が経った。新しいクラスにも、馴染んで来た気がする。でも、私は今、ある一つの悩みを抱えている。
「はぁ〜、どの部活に入ろうかな?」
中学時代は、美術部に所属していたが、正直あまり楽しくなかった。特別絵を描くのが好きなわけでもなかったし、高校でも続ける気にはならない。
そうなると、尚更、どの部に入ろうかと迷ってしまう。考えること数分後、背後からいきなり声がした。
「毬花、どうしたの?何か考え事をしていた感じ?」
いきなり話しかけてきたこの子は、同じ中学出身の鷹取瑠璃乃。お互い、共通の趣味がある事がきっかけで仲良くなった。高校もクラスも一緒になるのは正直驚いたけれど、近くに居てくれると、とても心強い存在だ。
「ビックリした、瑠璃乃だったんだ。実は、どの部活に入ろうかと悩んでいるんだ。」
と返答すると、瑠璃乃は少し考える仕草を
しながら、言葉を発した。
「じゃあ、ソフトテニス部はどうかな?私も今日、仮入部に行こうと思っていたし。」
瑠璃乃から予想外な提案が来て、少し混乱した。瑠璃乃が元ソフトテニス部だから、仮入部に行くのは自然だ。それに引き換え、私は運動があまり得意ではない。証拠に、体育の成績もいつも3だし、運動部に入るなんて考えたこともない。
でも、瑠璃乃が一緒に行ってくれるなら、試しに仮入部にいくのも良いかも。
「仮入部だけなら行こうかな?」
そう返すと、瑠璃は目を輝かせて次のように言った。
「本当に?なら、今すぐ準備して。ソフトテニス部の開始時刻に遅れちゃう。」
「分かったよ、なるべく早く準備する。」
準備が出来て、テニスコートに行くと、ソフトテニス部の部員らしき人達がいた。
「ようこそ、ソフトテニス部へ。仮入部の子達だよね?二人は、初心者と経験者どっちかな。」
という先輩の問いかけに対して、私達は、
『初心者と経験者一人ずつです。』と返した。
「オッケー、経験者の子は、コートに入って
練習しようか。初心者の子は、基礎練からだね。」
先輩の指示通り、瑠璃乃はコートの練習に合流し、私はコートの外に出て、初心者の練習用のスペースに移動した。
その後、私は先輩達にラケットの持ち方から素振り、ボールの打ち方を丁寧に教わった。スポーツは苦手だけど、実際にやってみると案外楽しかった。
「最後に、何回かコートで打ってみようか。」
先輩は、軽いノリで言っていたけど、少し練習しただけで、コートにボールが入るの?というような疑問は残りつつも、試しにボールを打ってみた。そうすると、ふらふらの軌道ながらも、どうにかボールがコートに入った。
「やったー、コートにボールが入りました。
もう一回打ってもいいですか?」
「いいよ、何回でも打って。」
それから、何回かボールを打ってみたが、コートに入ったり入らなかったりを繰り返した。
でも、ボールが入ったかどうかより、ボールを打つ感覚が癖になって、純粋にテニスを楽しんでいた。
仮入部終了後...
「今日は、仮入部に来てくれて、ありがとう。特に鞠花ちゃん、コートで打つのがすごく楽しそうだった。」
「はい、今まであまりスポーツをやった事がなかったのですが、ソフトテニスをやってみて、とても楽しかったです。」
「私も先輩達と打てて楽しかったです。」
「それは良かった。もしよければ、ソフトテニス部に入ってくれると嬉しいな。」
『分かりました、前向きに検討していきたいです。』
二人同時に返答すると、先輩が笑顔で「入部してくるのを待ってるね。」と言ってくれた。
その数日後、私と瑠璃乃は入部届を出し、ソフトテニス部に入部した。
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