犬豪伝

星一悟

第0話:枕言葉

 夜 びょうと遠吠えすれば 神仏まで震えて眠るなり


 柴犬頭の犬豪けんごう ミナモトノウズマサは


 何を思い どう生きるのか


 これは ミナモトノウズマサの物語である



☆☆☆


 東の果て、獣頭人の国、阿島。



 神秘の力を持つ少数の純血主義支配種族である『白狐しらぎつねの民』と、彼等に従属する狸人たぬきびとが住んでいた。


 そこへ中央大陸から勢力争いに負けた狼人おおかみびと達が阿島へとやって来て、やがて狼の一族は平和の内に阿島の一員となった。


 その後、狸人と狼人との間に犬人いぬひとが産まれたが、生殖機能が弱かった狼の一族は混血の血を残したまま滅んだ。


 犬人は、武人の文化と血を持つ狼人を敬い、白狐の民につかえる犬士けんしとなった。


 それから数百年。白狐の民、犬人、狸人、妖怪や少数民族など、緩やかだが絶対の序列で秩序が保たれていた。

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