女子高生バラバラ殺人事件(仮)

@new02saddle25

 ヤマネマコト。彼女は一ヶ月前にパワハラに耐えかねて教職を辞め、空田市そらたしにある首山くびやまに移り住んだ。DIYが得意な彼女は、山奥と言えどなかなかに快適な暮らしをしていた。元々見た目を気にするタイプではなかったが、常にジャージでいて良い生活は彼女にとってとても快適だった。

 そんなある日、マコトが自宅の周辺を散策していると、不自然な土の色に気がついた。山菜を採るために持っていたスコップで掘り返してみると、部活で使うようなエナメルバッグが埋まっていた。土で汚れて見づらいが、よく見ると市内の高校の名前が書いてある。

 マコトはそのエナメルバッグを開けた。

 そして絶句した。


 女の子の生首。


「ヒエッ」

 マコトは驚いてエナメルバッグを放り投げた。

 すると、エナメルバッグの方から「...いったあ!何!!?」と声が聞こえた。いや、正確に言えば、エナメルバッグの中から声が聞こえた。

 マコトは初めて見る人の生首に暫く放心していたが、聞こえる声を確認するために恐る恐るバッグのなかを覗き込んだ...

「痛い!何すんのよ!...てかここどこ?あんた何?誰?」

 え、喋ってる。

 生首って喋るっけ?喋んないよね?

 マコトはさらに呆然とした。目の前で何が起きているのかもよく分からなかった。

 しかし、そんなマコトにはお構い無しに、生首の少女は話しかける。「ねぇ...今私どうなってんの?なんか...首から下が...見えないんだけど」最後の方は目が潤んでいた。

 マコトはひとまず正気を取り戻し、彼女に状況を説明した。ここが首山であること、エナメルバッグに入って土に埋まっていたこと...説明するうちに、堪えきれず生首は泣き出した。マコトもなんだか疲れ果て、2人で暫く座っていた(生首に座っていたという表現が正しいかは分からないが)。

 傾いていた日がしっかり沈む程度の時間が経過した頃、生首は一言「リコ。」と言った。マコトが「え?」と尋ねると、「私の名前...それしか思い出せないけど、リコ。」

 どうやら名前以外の記憶を失っているようだった。

 そしてリコは「私、なんで死んだのか知りたい。なんで死んじゃったのか、なんで首だけにされちゃったのか...知りたい。一緒に探してくれない...?」とマコトに言った。

 マコトも状況がわからず泣き惚けるしかできない彼女に少々同情したところがあり、半ば勢いで快諾した。それがその後、どうなるかも知らずに。


 マコトはエナメルバッグを家に持ち帰り、綺麗に掃除した。これから先、リコを入れて行動することになるからだ。初めはリコに触れるのに勇気が必要だったが、会話をしながら髪や顔の泥を落としてやるうちに、親近感すら湧くようになってきた。「これも彼女の性格ゆえだろうなあ」マコトはぼんやり思う。リコはあれ以降泣いたり騒いだりせず、むしろ明るく振る舞おうとしているように見える。それが強がりなのか、彼女の元々の性格なのかはわからないが、マコトはそれに安心し、リコと軽く打ち解けるまでになった。

 綺麗にしたエナメルバッグからは、“銅が港高等学校 陸上部 2年”と読み取ることが出来たので、マコトは次の日そこへ向かってみることにした。

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