森のお医者さん

べんぢゃみん

第1話婚約者が死んだ。

ある晴れた日の午後。

明日はきっと素晴らしい日になるはずだった。


花が咲きはじめ爽やかな風が村を通り抜けるそんな春の日に最愛の君が死んだ。



君の名前はマリナ。

マリナは清純そのもので私にとってこの世で1番綺麗だった。


私の名前はエドワード。

物書きを目指しながら足の悪い母と共に2人でひっそり暮らしている。


マリナは村中の人に好かれていて、誰にでも優しかった。

私にとって1番の恋人だったんだ。


頑張って働いて貯めた財産を叩いて小さな指輪を買った。


君にプロポーズするために。


君は泣きながら喜んでくれた。

本当に幸せだったんだ。


春の暖かい日に結婚式を挙げよう。

村一番の仕立て屋でドレスを頼もう。

レースもたくさん使って君に似合う真っ白なドレスだ。

村のはずれになる今流行りのお菓子屋でケーキを焼いてもらって、花は君の好きな君影草を私がたくさん摘んでこよう。


村中の人が祝福するだろう。

その真ん中に君がいるんだ。

幸せそうに笑った君が、




馬車に轢かれて死んだ。




不安な事故だったんだ。

誰も悪くないからやりきれない。


誰かを憎んだって君はきっと悲しむだろう。

悲しみに明け暮れる私に君は何て言葉をくれるのだろうか。


「泣かないで、、、エド、、、。」


と、優しく背後から抱きしめてくれるだろうか。

あんなに近くに感じていたのに、

すぐ側にあったはずの温もりがもう思い出せない。

あの華奢な肩も柔らかくて癖のある髪の毛も、

もう君の声すら思い出せない。


村中が悲しんだ。


でも3日も経てば皆、元の日常に戻り始める。


私は足の悪い母の面倒を見なくてはならない。

私がこの調子では村の人達もきっと心配するだろう。


きっと、君も、天国に行けないだろう。


私は何とか自分の意識を手繰り寄せ明るく日々を過ごす。



だけど、やっぱり君に会いたいんだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る