第6話 前夜祭

 第六回西方会議。

 大陸西方の少なからぬ国家が参加するこの会議は、もともと急速に勃興しつつあるケルム帝国の封じ込めを図るため、キスレチン共和国が音頭を取って、開催したのがその始まりである。


 設立時は直接帝国と国境を接しているキスレチン共和国とクラリス王国の二カ国で始まり、周辺国はオブザーバーとしてキスレチンに派遣している大使のみを参加させる形であった。


 だがその際に、次回から他国を正式に参加できるよう促すため、唯一となる緩やかな参加規約が定められた。それは大陸西方の一定数の人口を有する国家というものである。


 この条件を元に、ラインドル王国とクロスベニア連合が第二回会議に参加し、また第四回会議からは比較的小国と呼んでも差し支えのないホスヘル公国が、キスレチンの肝いりで参加することとなった。


 これらの直接帝国と国境を接しない各国の参加は、その理由の一つとして交易や国境問題など、国家間調整が必要とされる非常に多くの事柄について、集中的に交渉を行う機会として有用であるとみなされたことが大きい。

 特に交易においては、大国であるキスレチンを中心とした経済ブロックという意味合いも緩やかながら存在し、キスレチンに集った各国の代表団には政商などとも呼ばれる有力商人が、各国代表団の同行者として多く見受けられた。


 またそれ以外の視点で、この会議の参加国を見てみるとすれば、やはりとある国家の存在感が非常に大きいことがわかる。

 その代表的な例として、第四回会議からのホスヘル公国参加があげられた。つまりホスヘル公国は、同会議に於けるキスレチンの主導権維持のため、その数合わせとして参加させたという見方である。


 キエメルテ共和国から分離独立した三カ国は紆余曲折あったものの、現在では相互に同盟関係を構築している。だがその中でも最弱国であるホスヘル公国は、キスレチンの軍隊を自国に常駐してもらい、どうにか国防体制を維持しているのがその実情であった。

 それ故、彼の国はキスレチンの属国的見方をされることが少なくない。


 もちろん同会議に参加する国家の中で、キスレチンがもとより圧倒的な強国であるのは言うまでもない。

 だが第四回会議の直前にラインドルとクラリス間において同盟が成立し、西方会議内の勢力バランスに狂いが生じたことから、キスレチンが強引な手に出たと一般的には解釈されている。


 それまでクロスベニア連合が参加基準をぎりぎり満たしていると一般的に考えられていたものを、実数で定義されていないことから彼等は拡大解釈し、人口要件をホスヘル公国も満たしているのだと主張して彼の国を第四回会議に参加させた。そして彼らは、協定案を数の論理で自国優位に締結することに成功する。


 この最終日に多数決によって締結される協定案は、そのまま西方会議に参加する各国の施政方針に直結される事となっていた。

 つまりキスレチン共和国は、旧キエメルテ共和国に端を発するキスレチン、クロスベニア、ホスヘルの参加国を糾合することで、同盟関係にあるクラリスとラインドルに対し優位性を示してみせたのである。


 もちろんクラリスの時の王であった先代のオラド国王とて、この仕組みがキスレチンに明らかに優位となることは理解できていた。しかしながら帝国からの圧力が日増しに増幅する中、彼はキスレチンに対し表立って反抗することを選択肢とし取り得ていない。


 こうして、キスレチンの西方会議支配が盤石なものとなり早十六年。

 参加各国にとって、まさに戦いとも呼ぶべき六度目の暑い夏が訪れた。




「ラインドル王国はこの夏の時期にも関わらず、とてもお涼しいとか。いやぁ、実に羨ましい話ですな」

 やや後頭部が薄く恰幅の良い男性は、カイルに向かい笑みを浮かべながら言葉を発する。


 西方会議の始まりを記念して開かれる前夜祭と称されたパーティー。

 祝うための場という仮初めのお題目に彩られた空間では、既に各国の代表団が笑顔と美辞麗句に紛れさせた言葉の槍で、お互いの腹の中を探り合っていた。


 そしてそれは、ラインドルを率いる立場にあるカイルも同様である。

 この場における最も若い国家代表者であるカイルは、その見た目と違いほんの少しだけ年上のホスヘル公国コルドイン大公に強い興味を抱かれ、真っ先に声をかけられることとなっていた。


「大公殿、いや、そう言っていただけると恐縮です。確かにこの時期は過ごし良いのですが、こと冬となると逆に貴国が羨ましく感じるところですよ。何しろ、雪がひどい日には、外を歩くことさえかなわぬものですから」

「それはそれは。しかし、なかなかうまくいかぬものですな」

 そう口にすると、腹の肉を震わせながらコルドインは体をゆするように笑った。

 一方、そんな目の前の男を計りかねていたカイルは、会話の無難な着地点を模索し、そしてそのまま口を開く。


「まったくですよ。その意味では、南寄りではありますが、このキスレチン共和国がちょうどいい位置なのかもしれませんね。極端に寒すぎず、そこまで暑すぎはしないですから」

「おや、若い方お二人で我が国のお話ですかな?」

 前方から突然発せられた声に、カイルとコルドインはすぐに視線を移す。

 するとそこには、髪を後ろに流した紳士的な壮年が立っていた。


「これはこれは、フェリアム殿。ご無沙汰いたしております」

「こちらこそ、久方ぶりですなコルドイン大公。最後にお会いしたのは、二年前だったでしょうか?」

「ええ、まだフェリアム殿が大統領で……あ……申し訳ありません」

 明らかに失言だとコルドインは感じ、慌てて口をつぐむ。

 しかし、当人であるフェリアムは軽く笑うと、あっさりと首を左右に振った。


「いや、お気になさらずに。我が国では五年ごとに肩書は変わるもの。もちろんそうとは限りませんが、予めそう認識して日々を過ごしております。ですので、元という肩書を持つ者は多いので、特に気にならぬものですよ」

「そういえば、フェリアム様は確か前回の西方会議では内務大臣を務めておられたのですよね?」

 フェリアムは気にしていない素振りを見せていたものの、コルドインの恐縮した表情を目にしたカイルは、敢えて少し話の方向性をずらす。


「ええ、そうです。前々大統領となりますが、プロンサム大統領の下で、当時は内務大臣を務めておりました。確か大公はその頃……」

「はい、大陸中央のトルメニアへと留学に出ておりました。つまり私も、カイラ王と同じく西方会議には初参加というわけでして」

 コルドインは片手で顎をしゃくりながら、苦笑交じりにそう口にする。

 しかしそんな彼の発言は、フェリアムによって否定されることとなった。


「ああ、それは違いますな、コルドイン殿。カイラ王は実は二度目のご参加ですよ」

「おや、しかし八年前となると……」

「ええ、まだ私がこんな小さな頃のことですよ」

 そう口にすると、カイルはわざと腰下くらいの高さに手を置いた。

 当時十四歳であったカイルの身長がその程度のはずもなく、冗談と理解したフェリアムはカイルの意図を理解し笑い声を上げる。


「はは、そんな子供でしたかな。私の目から見れば、アルミム王の将来は明るいと感じる、実に聡明な王子であったことは覚えておりますが」

「それは言いすぎですよ。パーティーで料理にばかり目が移っていた、ただのお腹をすかせた子供でした」

 既にこの地に来てから一度似た会話を行っていたものの、敢えてカイルはなかったものとして、フェリアムの話題に応じる。

 すると、そんな二人の会話を耳にしていたコルドインは、興味深げにカイルへと話しかけてきた。


「ほほう、カイラ王にもそんな時代があったのですな。しかしお父上であられるアルミム様は、まさに賢王であったと伺いますし、その後をとなると気苦労も多いのではありませんか?」

「ええ。この歳になって、父の本当の姿がようやくわかった気がしますよ。そう思うと、前回こちらに足を運ばせて頂いた際の私は、忙しい父に遊んでくれと駄々をこねる本当に悪い子供でした」

「はは、しかしお気持はわかりますよ。五年前に急に父が倒れて跡を継いだ折は、私も右も左もわからぬ身でしたからな。その意味では、前王がご健在であることは心強いでしょう。そういえば、先日アルミム前王を狙う不心得者がいらっしゃったとか?」

 そろそろ頃合いかと考えていたコルドインは、ようやくカイルに向かい最初の切り込みを行う。

 だが既にそばに立っている男から一度試問を受け、今回も必ず誰かから問われると予期されていたその質問に対し、カイルは堂々と答える。


「よくご存知ですね。ですが、うちの頼りになる家臣たちが、父たちを無事救出してくれました」

「ほほう、それは良かった。しかし有能な家臣に恵まれるとは実に羨ましいものですな」

「ええ、頼りになる家臣に恵まれて、どうにか日々をこなしております」

 カイラは恥ずかしそうに苦笑を浮かべながら返答する。

 だがそんな彼に向かって、まったく予期せぬ人物が問いを放った。


「頼りになるという家臣とは、そちらの護衛の方もその一員というわけですかな?」

「こ、これは大統領」

 最初にその存在に気がついたのは、コルドインであった。

 途端、彼の声をきっかけとして、一堂の視線はこの会のまさに主役であるトミエルへと注がれた。


「ああ、皆さん楽にしてください。ほら、そこのタヌキおやじのように、堂々としてくださったら結構です」

「違うと思うが、もしやタヌキおやじとは私のことかね?」

 やや不服そうな表情を見せながら、この国の前大統領と現大統領とは視線をぶつけあう。

 一瞬、周囲に緊張が走ったが、先に折れたのはこの会のホストであるトミエルであった。


「さて、どうでしょうかな? ともかく、今日はこの地に来てくださった皆様を労い歓迎することが、この会の趣旨。私を含め、我が国の者達はこの日を楽しみに準備させて頂きました」

「いや、大統領にそう言われると、思わず恐縮してしまいますな」

 コルドインは自国の置かれた立場をわきまえているが故に、すぐに追従を口にする。

 だがトミエルはそんな彼に関心を払うことは無かった。


 トミエルが興味を示し視線を向けた先はカイルの背後。

 そこには一人の仮面姿の男性の姿が存在した。


「それで話は戻るのですが、そちらの仮面を付けられた方も、カイラ王の護衛の方ですか?」

 一度矛先をフェリアムが転じてくれたことで、僅かな油断がカイルの中に存在していた。だがトミエルは、そんな彼の表情の弛緩を見逃すこと無く、再び自らの護衛に話を向ける。

 だからこそ、カイルは一瞬返答が遅れた。


「え、ええ。そうですが、それが何か?」

「いや、今日は仮面舞踏会という趣旨でもなかったのに、どうしても人目を引く格好をしておられましたので、思わず興味を抱きましてね」

 カイルのほんの僅かな動揺を見落とすことがなかったトミエルは、まだ若いなと言いたげな表情を浮かべつつ、更に一歩前へと踏み込む。

 しかしそのタイミングで、横合いから一人の男性の声が挟まれた。


「大統領。まあ、貴方の気持ちはわからんでもない。実は先日も私はおなじ質問を彼にしたところでね」

「……ほう、それで?」

 一度詰めた間合いを引き剥がされたとトミエルは感じる。それ故、彼は今にも舌打ちをしそうになったが、どうにか自制心でそれをこらえた。

 一方、言葉を挟んだフェリアムは、既に彼とカイル達の接触を知られているものとして会話を続ける。


「なんでも風習により、彼は人前では顔を表に出すことができないようだ。私も驚きはしたが、我々キスレチン人は自由の国の民だ。なればこそ、そのような文化や思想を尊重せねばならぬと学ばされた次第でね」

「ほう、風習……ですか」

 前大統領であるフェリアムが自由と尊重を前面に押し出したことで、トミエルは次の一手が打ちづらくなったと感じる。

 すると、そのタイミングを見逃すことなく、カイルが口を開いた。


「ええ、我がラインドルの極一部地域の風習でしてね。そのせいで皆さんの前ではマスクを外すことができず、また大きな声で喋ることも叶いませんこと、先にお詫びさせて頂きます」

 カイルは間を取ってくれたフェリアムに感謝しつつ、予め打合せていた言葉をトミエルへと告げる。


 そうしてほんの僅かに場が停滞した。

 そんな中、最初に会話の口火を切り直したのは、この場にいる最も恰幅の良い男であった。


「しかし風習を尊重されるとは、いや、ラインドルもなかなかに自由な気風を有しておられるのですな」

「コルドイン殿。ご存知かもしれませんが、元々我が国は小さな所領を有する者同士が集まって、一つの国を形成した経緯がございます。ですので、それぞれの文化や思想の自由を尊重するのが、昔からの習いとなっておりまして」

 カイルは自国の歴史を紐解きながら、敢えてキスレチンの愛好する自由という言葉を前面に押し出す。

 すると、そんな彼の言葉を聞き終えたトミエルは、一つの問いを口にした。


「なるほど、なるほど。しかしカイラ王、それだけでは貴方直属の護衛は務まりますまい。きっとこの会に同行されるわけですから、貴国の中でもその腕は有数であるのではないかとお見受けしますが、いかがですかな?」

「え……まあ、そうですね」

 トミエルの問いかけの意図が見えなかったカイルは、曖昧な表情を浮かべながら一度頷く。

 すると、求めていた答えを得たトミエルは、嬉しそうな表情を浮かべた。


「ほう……となりますと、彼にお願いするとしましょうか」

「お願い? 一体何のお話ですか?」

 全く意図のつかめぬ会話の流れに、カイルは困惑を見せる。

 途端、トミエルはわざとらしい笑みを見せながら説明不足を謝罪してみせた。


「これはこれは、急に失礼致しました。いや、毎回西方会議では、ちょうど会議の中日に、我々参加国の良好な関係を市民たちに目にしてもらうため、交流イベントを行わせて頂いております。前々回は各国の各分野の知識人によるディベートを、そして前回は馬術比べを行わせて頂きました。覚えていらっしゃいますか?」

「ええ、父とともに拝見させて頂きましたので」

 トミエルの言葉を受けて、キスレチンの外れにあるコロセアムにて障害馬術などと呼ばれる競技を目にした記憶を、カイルは脳の片隅から引き寄せる。


 残念ながら、土地柄からかラインドルは余り馬術が発展していない。

 それ故、参加しなかったホスヘルを除く四カ国の中で最下位であったこと、そしてキスレチンの軍人とその騎馬が優勝したことを彼は思い出した。


 一方、彼がそんな過去に思いを馳せている間に、トミエルは更なる言葉をカイルに向かって紡ぐ。


「あの時は、ラインドル王国にとっては悔しい結果でした。ですが、安心してください。今年は異なる競技で市民に向けてのデモンストレーションを行おうかと思っております」

「デモンストレーション……ですか」

 カイルはここまでの話を踏まえ、目の前のトミエルは自らの護衛を務める男を、何らかの理由で競技に参加させたいのだと理解した。

 

 西方会議における中日の催し。

 それはもはや恒例になりつつあるイベントであり、指定された競技に各国から選ばれた代表が出場することから、まさに国力を誇示する代理戦争と呼んでも差し支えない性質を帯びていた。


 参加者には名誉と、そして著名な結果を示した者には更に開催国であるキスレチンから褒美が与えられる。

 このどう考えても政治的な要素を帯びた催しであるが、キスレチンはあくまで親睦を兼ねたものであると主張していた。


 しかし催しの内容が公表されるのは、これまで西方会議の初日である。

 その為、キスレチン以外の国は西方会議に帯同した限られた人員から代表を選ばねばならぬ、著しく不利な条件であることは否めなかった。


 そしてそんな性質を帯びた代理戦争に、彼の背後の護衛をと求めてくる事実。

 その意図が読めなかったこともあり、カイルは警戒するとともに、自然とその口数は少なくなる。


 一方、彼のそんな緊張を感じ取ったのか、トミエルは敢えてさわやかな笑みを浮かべてみせた。


「ええ。いくつかの催しをさせて頂いたあと、最後にデモンストレーションとして、ちょっとした模擬戦を二試合ほどさせていただこうかと思っております。古来より我が国のコロセアムは武を志すものの殿堂であり、丁度良いと思っておりましてね。まあホスヘルは我が国から軍を出しておりますので、やむなく参加できませんが、それ以外の四カ国に参加頂く形で」

「模擬戦か。それで我が国は誰を出すつもりなのだね、大統領?」

 間を取らせるために、横から声を挟んだのはフェリアムであった。

 トミエルは苛立ちこそ表には出さなかったものの、明らかに先程より愛想少なく回答する。


「我が国からは、私の護衛を任せているウフェナを出させていただくつもりだ」

 そう口にすると、トミエルは一度後方へ顔を向け、皆に向かって彼を護衛する巨漢の男を示してみせる。そして逆にトミエルは、フェリアムへと問いかけてみせた。


「あくまでデモンストレーション故、順位をつけるものではない。だがどうせならば、私が最も信頼を置き護衛を任せている男を選出しようと思ってね。で、君には異論があるかな?」

「……いや、別に。この国の大統領は君だ。私には発言する権利がない」

 そう言うなり、フェリアムは苦い表情を浮かべつつ口を閉じる。それはトミエルの指定した男が、文句のつけようのない人物であった為であった。


 大統領官邸の警備主任であり護衛隊長も務めるウフェナ・バルデス。

 それは彼の国に於いて、最も勇猛果敢であり、そして獰猛と言って良い軍人であった。


 もともとキスレチンの国境警備隊は、民主改革運動との関係性が近いとされている。それは国境近く出身の党員によって、同党の大半が占められていることにその理由があったが、中でもウフェナがかつて所属していた帝国との国境警備隊は特にその色彩が強い。


 ウフェナはそんな帝国との国境警備隊に所属する中で、その圧倒的巨体を駆使した武勇から、とある朱い死神を除けば帝国軍に最も恐れられる男の一人であった。


「フェリアム君、そんな卑屈にならなくてもいいじゃないか。君が言ったばかりだろ。我が国は自由の国だ。誰しもに発言の自由がある。まあいい、それよりもだ。カイラ王、先ほどの件ですが、私も最も信頼の置く護衛のウフェナを出しますので、是非貴国からは貴方の信頼が厚いそちらの護衛の方を出してもらえますかな」

 フェリアムに対し皮肉を向けた後、そのままトミエルはカイルに向かい搦め手なしに直接的に一つの依頼を口にする。

 途端、カイルはやや困った表情を浮かべた。


「え……ですが」

「いや、先程も申しましたとおり、これはあくまで場を盛り上げるための模擬戦。そこに若きカイラ王が自らの護衛として強く信頼されている仮面の貴公子を出場させるとなりましたら、観衆の期待も膨らむというものですよ」

 主催者であるキスレチンの大統領自らの依頼。

 それが告げられた瞬間、明らかに場の空気は、カイルに対し一つの回答を促す流れとなりかけていた。


 だが当然のことながらカイルは即答できず、後方へと向き直りマスクの男に向かい確認を行おうとしかける。

 見方によっては、国家元首として違和感を覚えられかねない彼のそんな行為は、騒ぎを聞きつけたとある一人の青年の声によって、未然に防がれることとなった。


「おやおや、いつの間にか各国の代表がお揃いで。何か面白い催しもののお話ですか? ぜひ我が国も仲間に入れていただきたいものですね」

 爽やかでありながら、明らかに華のあるその声。

 それを耳にした一同は、一斉にその声の主を追った。


 すると彼らの視線の先には、赤い髪の護衛を連れた一人の金髪の美青年の姿が存在していた。


 西方会議のおけるクラリス王国の代表。

 そう、先年クラリスの四大大公の一人となったエインス・フォン・ラインその人であった。

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