第24話 妹の友達をデートには誘わない
「ツユのお兄さん。お帰りですか?」
学校の帰り道。
後ろから声をかけられたので振り返る。
「シズクちゃん……」
丁度良かったかも知れない。
シズクちゃんには聴いておきたいことがあったのだ。
「今日も部活あるの?」
「今日は休みですけど、どうしました?」
だったら時間あるよな?
よし、誘ってみよう。
「少し話さない? 帰り道途中までは一緒だよね?」
「デートのお誘いですか!? 気が早いですよ!?」
「ち、違う、違う。ちょっとツユのことについて話があって!」
「ツユの話、ですか?」
焦った。
まだこっちは彼女と別れてから日が浅いから、傷が癒えてないっていうのに。
そんなプレイボーイだと思われているのか、俺は?
誰彼構わず女子に手を出すような真似、俺は絶対にしないんだが。
「うん。最近様子がおかしいみたいなんだけど、何か知っているかな?」
「様子、ですか……。最近はお兄さんとの仲良し写真をSNSに上げたことですかね」
「――うっ」
まずい。
誤解が生まれるようなこと、してたな。
「すぐに削除したから逆に怪しいと思ったんですけど、もしかして、お二人はそういう関係なんですか? 私は断然応援しますけど!!」
「ち、違う、違う! あれにはちゃんと事情があってだな!」
「いいですよ。私はちゃんと分かってますから!」
と、全く分かってくれていないような台詞を言われる。
そうか。
あの偽装カップルの為の画像削除したのか。
知らなかったな。
アイとの一件は解決したから、SNSに上げている必要性もなくなった。
それは分かっているけど、やっぱり一緒に写真を撮るのが嫌だったのかと思ってちょっとショックだ。
「私はそこまでツユが変だとは思わないですけどね。……ただ、そうですね。最近、疲れている気がしますね」
「疲れている?」
「はい。授業中に寝ることが多いんですよ。だから、夜中にちゃんと眠れてないんじゃないかって思って」
「そうか……」
やっぱり徹夜でゲームをしていることぐらいしか分からないな。
浮かない顔をしていたのか、俺の顔を伺ったシズクちゃんは、
「SNSで様子を確認するのもアリなんじゃないですか?」
新しい提案をしてくれる。
「SNS?」
「ほら、言いづらい事とか悩みがあったらSNSで呟いちゃうじゃないですか。それを観れば、また新しいことが分かるかも知れないです」
「なるほど……」
それは盲点だった。
早速、ツユのSNSを覗いてみるが、成果は得られない。
普通の学校の生活とか私生活のSNSって感じだ。
「ツユはあんまりSNSするタイプじゃないですからね……」
「そっか。アイなら、結構SNSするから分かるんだけどな」
「結構されるんですか?」
「結構なんてもんじゃなくて、アイはSNSの鬼だな」
毎日、一時間に一回は何かしらのSNSで自己発信をしている気がする。
そこまでして何か他人に伝えたいことでもあるんだろうか。
俺にとってSNSっていうのは凄くハードルが高くて、特に発信することもないから苦手なんだよな。
なんか、オシャレな店にいって、大盛りのパフェみたいなものを撮ればいいんだろうけど、そんな店知らないし、SNSの為にわざわざ店に行くのも何か違う気がする。
でも、他の人のSNSはみんなキラキラしていて、人生を謳歌している。
それを観て比較した自分の人生の何もなさに絶望するから、SNSを開くのも億劫なんだよな。
「アイは俺にもSNSをやるように強要してくるぐらいSNSが好きだったな」
「強要、ですか」
「ああ。もっと俺のこと知りたいって言ってSNSをやれって言われてさ。でも、苦痛だったな。人には向き不向きってものがあると思うんだけどさ」
「それだけ好きったんじゃないんですか? お兄さんのことが」
「どうかな」
監視されているみたいで、俺はSNSをしたくなかった。
――なんで、ここにいたの? この写真は何?
――一人でいった訳じゃないよね? このお店。なんで私と一緒に行かないわけ?
みたいな不満が多かった。
それが嫌でSNSをやらなくなったら、
――なんで最近投稿しないの? やましいことでもあるの?
――浮気? 本当にやっていないって証明する為にも、一日一回は投稿するように!
と言ってきてからな。
元々SNSに苦手意識あったのに、余計に苦手になってしまったな。
「すいません。お役に立てなくて」
「いや、そんなことないよ。参考になった。ありがとう」
「私もツユの様子、見ておきます」
「うん。本当にありがとう、助かるよ」
それからツユの最近の動向の話は終わった。
帰り道が別になるまでは、水泳での大会とか、学校の授業の難しい話など、シズクちゃんの話を聴いた。
俺やライカさんなどの家族、そして、学校でのクラスメイトでのシズクちゃんに聴いても、最近のツユの動向が把握できなかったのだ。
なら、誰にも把握できない。
そう俺は思っていた。
今日の夜までは。
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