第14話マブダチ

反対隣にも犬がいる。

頭の良いボーダコリーだ。

ただこいつはペットショップで直ぐ引き取られたから犬社会の常識を知らんかった。

塀越しに話をするんでいろいろと教えてやった。頭が良いだけあって飲み込みは速い。

歳も近いし同じ中型犬やしいつの間にかマブダチになっていた。

しかし、真面目なやつで俺がキャベツや食パンを盗み食いしたのを聞いてビックリしてた。

いつもはたわいもない話をしてた。

餌や可愛い雌犬の話とか。

まるでサラリーマンみたいやけど、コイツにも苦手があるみたいで聞いてみた。

そこの角曲がった所の雑種の雌犬のことや。

ガレージの奥に犬小屋があるんやけど、チラッと目が合っただけでコッチに向かってきた。

牙見せて吠えてくるし、普通雌犬はそこまでせんやろ。

それ、俺も経験ある。といったら二人とも腹抱えて笑ってしまった。俺ら一応血統書付の由緒正しい犬やろ、嫉妬してるんかな。

その犬、毛並みも悪くてなんか貧相やねん。

餌袋をゴミ袋にしてたから見たら一番安いやつや。俺、いつもの餌が切れてたときその餌食わされたけど不味くて次の日下痢したで。

あの犬何ともないみたいや。

しかもそこらじゅうに糞が転がってる。

飼い主のオバはん、掃除もせんねんな。

ハエがたかってても気にせんみたいや。

近所の人も困ってる見たいやけど我関せず。

犬は飼い主に似ると言うのはほんまやな。

でな、犬仲間から聞いたんやけど野良犬の雄がおってその雌犬と気が合うみたいで脱走したみたいや。人間が言う駆け落ちやな。

あんな飼い主でも一応捜してたけど暫くして戻ってきたよ。出戻りかい。

ノラ男も自分のことがせい一杯で喰わしていかれんみたいで喧嘩別れしたみたいや。 

でその雌犬、飼い主にえらい謝ってたよ。


餌少なくなったみたいや。知らんけど。






処で犬がどうして会話してるかって。

犬は声帯が発達してないから吠えることしかできない。しかしな、言いたいことを念ずれば相手に伝わる。いわゆるテレパシーやな。これは万国共通や、狼にも伝わる。

人間も言葉を使う前はそうしてたけどもう使い方忘れてしもてん。たまにエスパーというのがいて使えるみたいや。


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