ワンコの一生(人間の言葉を理解する犬の物語)

河原ジョー

第1話輪廻転生

小説 『ワンコの一生』



羊水の生ぬるいプールの中プカプカ浮かんでいると、突然異次元の壁を突き抜けて魂が憑依した。

受精卵が始めて意識を持って着床した瞬間である。

輪廻転生と言うが、前世の記憶は総てリセットされた。


しかしたまに前世の記憶を断片的に覚えている場合があるそうだ。


成長のスイッチが入ったらしく胎盤から栄養が供給される。平和な毎日が続いた。

しかし、だんだんと手狭になってきた。

自分と同じ容姿の者が他にもいるようだ。

それも一つや二つでない。十程ありそうだ。

手狭になると蹴ったり体当たりしたりで互いのテリトリーを本能的に護ろうとする。

俺は最後に着床したらしく端っこが居場所みたいだ。

両側に挟まれるとストレスは溜まる。争わない方が良い。大人しくしておこう。

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