第五話:マグナデウス対ドラゴンシフター

 「全国大会出場おめでとう、諸君らには無理せず楽しんで欲しい」


 放課後の部活の時間。


 部室にてホワイトボードを背に、飯盛先生が部室で金馬達を前にして告げる。


 「まあ、こうなったら出来る限りがんばります」


 時計回りでカナメから答える。


 「全国大会は夏休みに開催、それまでにトレーニングなどが必要ですわね?」


 メープルが色々と考えながら呟く。


 「部活になった以上は、部費とかの管理もしないと面倒だね」


 マッシュが学校の部活になった事によってできた、必要な事項を挙げる。


 「その辺に関してだが、俺の実家が支援とマネージメントしてくれる」


 金馬が祝勝会で聞いた話を語り出す。


 「おお、スポンサーゲットです♪」


 ドロシーが金馬の発言に喜ぶ。


 「ふむ、黄君は元からロンスター所属でもあるしあそこなら信頼できるな」


 飯盛先生、かつて共に戦った金馬の父からは委員長と呼ばれていた男は微笑んだ。


 「俺達もロンスターにエージェントで登録されてるけどそれとは別?」


 カナメが金馬に尋ねる、マグナデウスのチームメンバーとなった際にカナメ達はひとまずロンスターのヒーロー事業部に登録制のアルバイトとして契約していた。


 「詳しい話は個別に行くと思うが、家のロボファイトチームにも育成枠の選手で所属してくれって感じになるかな? うちの祖母ちゃんが、お前らの事を見て気に入ったみたいでさ?」


 金馬が頭を掻きながら、申し訳なさそうに語る。


 「オ~ウ♪ つまり、ロンスターのラボとかファクトリーにフリーパスですか♪」


 目を輝かせて喜んだのがドロシーであった。


 「ああ、規約とか守らないと駄目だが行けるぜ? むしろドロシーは、家のラボのスタッフとしてジンリンおばちゃんに引き抜かれそうで怖いんだが?」


 「私達を見込んでいただけたとは、流石はジンファ総帥ですわね♪」


 メープルも高笑い。


 「何か、恐れ多いんだけど?」

 「うん、僕達普通だし」


 カナメとマッシュは、自分達はそこまでじゃないと言う顔になる。


 「謙遜すんなよ、お前ら全員が能力だけじゃなく魂に良いもん持ってるぜ♪ そうでなかったら、マグナデウスが選ばねえし俺も付き合ってねえお前ら良い奴だ♪」


 金馬がカナメとマッシュだけでなく、仲間達全員を褒める。


 「マッシュさんは、狼男で森林戦やサバイバル能力が高いですわ♪」

 「カナさん、生身で空飛んだり光線出したりできるじゃないですか♪」


 メープルとドロシーが、マッシュとカナメの能力を告げる。


 「あれこれ思う所はあるだろうが、お前らは俺のベストフレンドだ♪」


 金馬が笑顔で告げる。


 「うわ、キラキラした笑顔で言って来るよこの人」

 「うん、眩しい」

 「オ~ッホッホ♪ もっと讃えても宜しくてよ♪」

 「金さん、良い人で~す♪」

 「うむ、皆が輝いている良い友情だ♪」

 「あれだ、互いが互いを輝かせるって奴だ♪」


 部室内の空気が明るくなった。


 「正直、教員が必要な事以外はロンスターに投げた方がよさそうだな」


 飯盛先生が考える。


 「ああ、先生も業務とかあるんだし負担を駆けないようにするぜ」

 「そうそう、普通の学校よりも仕事が多いはずだし」


 金馬とカナメが語る。


 「ならば、学業の方は赤点など取らぬようにな? 出席も大事だぞ?」

 「かしこまりましたわ♪」

 「敵の対応も、スピード解決を目指しま~す♪」

 「がんばります」


 先生の言葉にメープルやドロシー、マッシュが返事をする。


 後日、金馬達は採石場に来ていた。


 「私、レッドですわ♪」


 赤い龍を模したマスクとヒーロースーツを身に纏ったメープルが高笑いを上げる。


 「いや、それだと悪の女幹部のノリじゃね?」


 カナメはピンクのヒーロースーツだ。


 「僕が青か、ドロシーと逆だったかも?」

 「私はグリーンは好きな色で~す♪」


 青はマッシュ、緑はドロシーとヒーローチームのノリであった。


 「俺は、やっぱりまだ完全になれないな?」


 金馬だけは、黄色のスーツを着ているが素顔であった。


 赤ん坊の頃に力の八割をマグナデウスへと移された金馬。


 両親のように、全身にスーツを纏って変身すると言う事が出来なくなっていた。


 「でも、そこまで行けたんならあと一歩だよ金ちゃん!」

 「そうで~す♪ 中学で変身バックルが弾け飛んだ時よりも進歩してま~す♪」

 「金馬君なら行けますわ、私達も力になります♪」

 「僕達、仲間立っていてくれたよね?」

 「お、お前ら? ありがとうな、ちょっとテンション戻ったわ♪」


 実は中学時代からの付き合いである仲間達の励ましに、元気を取り戻す金馬。


 彼らがヒーロースーツを纏っているのは、安全の為である。


 ロボットファイトはエクストリームなモータースポーツだ。


 車のレースのように事故に備えて、ヘルメットや身を守れるスーツは必要になる。


 県大会で平気だったのは、学生服はノーマルスーツ扱いで認められていたから。


 だが金馬達は競技以外にも戦いがある。


 これまでは地元での戦いだけだから良かった。


 だが今後発生するであろうホーム以外の戦闘も想定し、仲間達の命を守るべく金馬が実家に頼んで用意してもらった装備だ。


 ヒーロー変身して纏うスーツは、パイロットスーツや作業服として民間に応用されてきていた。


 「ロンスターのドラゴンスーツ、貰っちゃって良いの?」


 カナメが金馬に尋ねる、自分達が来ているのはファンタジーでも強力素材の代名詞であるドラゴンの力を宿した地球版ドラゴンの鎧。


 金馬の両親が着ていた、ドラゴンシフターのスーツから生まれた第三世代の装備。


 その名はドラゴンスーツ。


 「ああ、祖母ちゃんからのプレゼントだ♪ 子子孫孫まで使えるぜ♪」

 「手厚すぎるサポートで~す♪」


 金案の言葉にドロシーが笑う。


 「マスクは開閉自在ですのね」

 「身体強化機能もあるんだ?」

 

 メープルとマッシュが、あれこれ動かしたり動作チェックを行う。


 「ワオ♪ 腕を振るったら緑のドラゴンさんに覆われました♪」


 ドロシーが手の甲が龍の頭になっている追加装甲を見て喜ぶ。


 「そりゃアシストドラゴンって、追加装甲兼武器だ」


 金馬が解説する。


 「俺達、下手したら装甲科の連中より恵まれてる気がする」


 カナメも、脚部にアシストドラゴンを顕現させたりして見る。


 「装甲科だと、夏美おばちゃんが同じの使ってる」


 金馬が装甲科に通う叔母、日高夏美の名を挙げる。


 「でも、僕達の事さちょっと信用し過ぎじゃない?」

 「マッシュ、そう言えるお前だからこそ渡したんだ他の皆も♪」

 「私達の中で誰かが過ちを犯しそうなら、誰かが止めますわ♪」

 「力の分配は、暴走を防ぐ意味もありま~す♪」

 「うん、分かち合う事って大事だね♪」


 スーツ姿で輪になって話し合う五人、得た力は悪用しないようにと誓う。


 ドラゴンスーツはあくまでも防具、そして修理や救助などの作業道具。


 ロボに乗っていない時の敵襲にも対応できるが、ドラゴンスーツの力で戦いに行くのがメインではないと決める。


 「金馬君も変身できるようになれば、皆で撮影ですわ♪」

 「良いね、絶対やろう♪」

 「立ち位置どうする?」

 「やっぱり、その時はドラゴンジャーとか名乗るですか♪」

 「いや、既存のと被りそうなのは止めような?」


 仲間達と駄弁る金馬。


 「金さん、もしかして技のバリエーションが増えたりするとかですか?」


 ドロシーが疑問を口にす。


 「おう、ドラゴンスーツはマグナデウスとも連動してるから新技とか試そうぜ♪」


 金馬が笑顔で答ると、全員が機体を出してフィギュアサイズから巨大サイズにシフトさせてマグナデウスへと合体させる。


 「それでは皆様、元気良くご唱和くださいませ♪」


 レッドになったメープルが音頭を取る。


 「「マグナデウス、コンバットゴ~~~ッ♪」」


 全員で叫び、マグナデウスがポーズを取る。


 「金馬♪ お友達と上手く付き合えているようで、母は誇らしいですよ~♪」

 「うん、俺も嬉しいぜ♪」


 空から声が響き、ゆっくりと金の龍の兜を纏た武将風のロボが降臨した。


 「うお! 父ちゃん達かよ!」


 コーチがまさか両親とは思わなかった金馬。


 「ワ~オ♪ ドラゴンシフターさん達の金龍合神で~す♪」


 ヒーロー業界に詳しいドロシーは喜ぶ。


 「あらあら♪ 現役ヒーローのコーチングとはお得ですわ♪」


 メープルも金馬の両親の事は知っているので微笑む。


 「別宇宙だとか、増えた分の子育てとか大丈夫なのか?」


 マッシュは、大丈夫かなと不安顔。


 「立磨さん達か、宜しくお願いします」


 カナメは普通に挨拶する。


 「後進の育成は先輩の務めだからな、稽古で受け継いでくれ♪」

 「まだまだ簡単には負けませんよ♪」

 「いや、お前は安静にしろよ!」


 金龍合神内部では、ドラゴンシフター夫婦が漫才をする。


 「……そっちの会話、こっちにも聞こえてるんだがあん」

 「あら、仲の良いご夫婦は素敵ですわよ♪」

 「そうで~す♪ 家族仲や夫婦仲はだいじで~す♪」

 「円満なのは良い事だよな」

 「適度に喧嘩する事も必要だけどね」


 金龍合神側の会話を聞きながら談笑する、マグナデウスチーム。


 「あら♪ こちらの会話があちらに♪」

 「マジか? いや、知ってる面子だから良かった」

 「あなた♪ 恥ずかしがる必要などないのですよ♪」

 「ともかく金馬、まずは結界展開だ!」


 ドラゴンシフターが金馬に通信を入れる。


 「わかったぜ、太極フィールド展開っ!」


 金馬が叫びレバーを押し込む。


 マグナデウスの足元から緑色に輝くエネルギーが広がり、採石場を覆う。


 被害を出さぬように戦う為の、特殊空間が展開されたのだ。


 「良し、行くぞ金馬! 龍頭鉄拳弾っ!」


 金龍合神がマグナデウスへと拳を飛ばす!


 「突き返して差し上げますわ、ロコモバーニングピストン!」


 右腕パート担当のメープルが叫びレバーのスイッチを押す。


 マグナデウスの右腕部分のドリル付きの機関車。


 マグナロコモが連続ピストンパンチを繰り出し、迫りくる相手のロケットパンチを殴り返した。


 殴り返され弾かれて戻って来る金龍合神の拳。


 「やりますね我が息子♪ ならばファンロンブラスターです♪」


 金龍合神が胸から金色のビームを放つ!


 「散開っ! からのファンロンダッシュだ!」

 「「了解っ!」」


 マグナデウスは県大会でも見せた機体の分離からの、再合体攻撃。


 マグナファンロンを先頭に列車のように各機が一列に繋がり突進する!


 「良し、かかって来い金馬!」

 「受け止めて見せましょう!」


 金龍合神が突進を受け止めようと構える。


 「俺は囮だよ二人共♪」


 だが、実際に突っ込んで来たのは金馬機であるマグナファンロンのみ。


 「タートルアクアジェットスピンで~す♪」

 「フェニックスファイヤーダイブ!」


 ドロシーが操るマグナタートルが、水流を出して空から回転アタック。


 カナメのマグナフェニックスは、空から炎のエネルギーを纏っての体当たり。


 「ウルフアンブッシュ!」


 更にはマッシュが操作するマグナウルフが、金龍合神を背後から強襲した!


 マグナデウスチームの機体三体による三方からの攻撃を受けた金龍合神。


 ダメージを受け、機体が爆炎に包まれる。


 爆炎の中から、ロコモに牽引されたファンロンとウルフ。


 タートルとフェニックスも飛び出し、全機揃ってマグナデウスに再合体。


 炎が消えると、機体の表面に焦げや傷を作りつつも立っている金龍合神が現れた。


 「ふふふ、見事ですよ金馬♪」

 「流石だな、結構来てるがまだ行ける」


 息子達を認めつつまだ動く金龍合神。


 「流石は同じ製造元、向こうも頑丈だね」


 カナメが呟く。


 「う~ん、向こうのフィールドも丈夫で~す!」


 ドロシーは残念がる。


 「いや、相手も現役のプロだからダメージコントロールできるでしょ」


 マッシュがドロシーへとツッコむ。


 「皆様、相手もまた動き出しますわ!」


 メープルが注意を呼び掛ける。


 「よっし、今度は真っ向で行くぜエネルギー集中だ!」


 マグナデウスが全身から金色のオーラを噴出させる。


 「全力で行くぜ父ちゃん達っ! マグナナックルだっ!」


 金馬が叫ぶと同時に、彼の頭部をマスクが覆う!


 「俺達も行くぞ、霹靂鉄山靠だっ!」

 「ええ、行きますっ!」


 光の拳と電撃の体当たりがぶつかり合い、双方のエネルギーが相手を包む。


 親子対決の結果、両者の機体がダブルノックダウンと言う結末を迎えた。


 双方の機体をロンスターの工場へと送還し、採石場から撤収した一行。


 「「いただきま~す♪」」


 金馬達マグナデウスチームは日高邸に集合し、立磨やジンリーも含めた皆で巨大な鍋を囲みお互いを労い合ったのであった。


 「まさか相打ちになるとは、俺達もまだまだだな♪」

 「ええ、次はキッチリ完勝してみせましょうね♪」

 「いや、大人気ってもんを見せてくれよ二人とも?」


 母親の言動に呆れる金馬、親子のやり取りを仲間達は笑って見守るのであった。

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