第59話 ラスボス戦スタート

 スクールフォースが乗り込んだ山羊の悪魔型ロボットガラドーン。


 緑の巨人エメラルドマン。


 巨大な黒い異形のクライ獣を相手に、ヒーロー達は戦いを始める。


 「目の前の敵に釣られてくれてありがとう♪」


 ナミダ―メはヒーロー達が巨大戦をしている隙を突いて突き進む。


 「ちょ、ナミダ―メが行っちゃったっしょ!」


 アームドタイガーが叫ぶ。


 自分達が操作する円卓がディスプレイとなり外の様子を映し出す。


 自分達がクライ獣と戦う隙を突き、銀行へと進むナミダ―メの動きに気付いた。


 「だが、今はクライ獣を相手にするしかない! ガラドーンパンチ!」


 ヒノカミレッドが円卓を回せばテーブルの面にアイコンで武装が表示される。


 ヒノカミレッドが表示された武装を叩いて選択すれば、自動で作動する。


 機体の外では、操作によりガラドーンが拳を振るい敵を殴り飛ばす。


 「このロボットの操作法、コーヒーカップみたい♪ えい、ホーンスパーク♪」


 プリティボックスが操作すれば、今度はガラドーンが頭部の角から電撃を放つ。


 彼女の言うように、テーブルを回しての操作は何処か遊園地の遊具に似ていた。


 「私は動力源とシステム制御に回りますので、皆さん頑張って下さい」


 ゴートマン先生は、玉座型のシートに手足を固定されながらそう宣言する。


 先生の魔力での制御によりスクールフォースの面々は、魔力を込めながら円卓を回してテーブルの表面にパソコンやスマホの画面のように表示された武器のアイコンをタップするという簡単操作で機体を動かせていた。


 「とにかく、ガンガンこのテーブル回して叩くぞ! ガラドーンシャウト!」


 スノウブリンガーは必死でテーブルを回して、表示された装備名をタップ。


 円卓を回してテーブルの面に映る武装のアイコンをタップする度に、ゲームのようにコストとして魔力を体から吸い取られる。


 だが、どういう仕組みか次の面子が円卓を回せば魔力は戻るので気を失う事なく彼らは戦えていた。


 ガラドーンの胴体部の山羊の頭が口を開け、雄叫びと同時に衝撃波を放つ!


 その攻撃を浴びたクライ獣は霧散するが、新たなクライ獣が地面から浮き上がる。


 「シンプルイズベスト、根性勝負だ! ガラドーンキック!」


 プリティジャスティスの操作でガラドーンが走り、飛び蹴りを行う。


 スクールフォースの面々は、徐々にガラドーンの操作に慣れてきた。


 「皆が頑張ってるのがわかる、こっちも負けないエメラルドブラスター!」


 エメラルドマンも胸の前で両手を交差させ、緑色の破壊光線を発射する。


 洪水のように放たれた光の奔流は、クライ獣達を薙ぎ払った。


 だが、その隙を突いたナミダ―メの乗った馬車は中央銀行にぶつかる。


 同時に銀行の建物が、黑い闇のドームに覆われた。


 「頑張ったのに残念ねあなた達♪ もうすぐお父様、恐怖の大王の登場よ♪」


 闇のドーム全体に映るナミダ―メの顔、美人胃が深いな笑顔で嘲笑う。


 「うっわ、きっしょ!」

 「同感だ、不快極まりない!」

 「ふざけんな、まだ負けてねえぞこら?」

 「そうだよ、私達は負けない!」

 「ああ、お前も恐怖の大王も私達が倒して見せる!」


 スクールフォースの面々に諦めはない。


 「クックック♪ 私の生徒達は負けませんよ、ナミダ―メ♪」


 ゴートマン先生も笑う。


 「諦めたりはしない、僕達はヒーローだ!」


 エメラルドマンも身構える。


 「悲しいわ、ゴートマンにそそのかされた愚かな子供達♪」


 ナミダ―メは余裕の笑みを崩さない、闇のドームが激しく揺れて浮き上がる。


 「神様にでもお祈りしてみる? 届かないでしょうけれど♪」


 銀行ごとデーモニウムを取り込み、巨大化したナミダ―メ。


 「神様か、祈らなくても来てくれるさ♪」


 ガラドーンの中でヒノカミレッドが笑う。


 「ああ、お人好しな龍神様がいるなあ♪」


 スノウブリンガーも嬉しそうに呟く。


 「そうだね、日高君は良い人だもんね♪」

 「我が流派の誇る門弟だ♪」


 プリティボックスとジャスティスが語る。


 「たっつんも来れば、俺達は負けないっしょ♪」


 アームドタイガーも笑う。


 「彼がそろそろ来る!」


 立磨と縁が出来たエメラルドマンが何かを感じる。


 「さあ、出番ですよドラゴンシフター君♪」


 ゴートマン先生が意味深に呟く。


 空に金色の輝きが生まれ、光の中から巨大ロボが降って来た!


 激しい音と煙を上げて降って来た龍の頭を持つ巨大ロボ、龍宮大合神。


 「龍宮大合神、参上っ!」

 「美味しい登場ですね、ご主人様♪」

 「んな、芸人じゃないんだから!」

 「さあ、威風堂々と音楽を鳴らしましょう♪」


 太極ドラゴンシフターが名乗りを上げつつ、機内で一人夫婦漫才をする。


 龍宮大合神から京劇のような、鉦の音が鳴り響き最後に銅鑼が鳴る。


 「……忌々しくうるさいわ、これだから神の蛇は嫌い!」


 龍宮大合神の登場に、あからさまな嫌悪感を示すナミダ―メ。


 「何か、中華な城のロボが来たっしょ!」

 「相変わらず派手な登場だな♪」

 「前よりロボが中華っぽくなってね、あいつんとこ?」

 「中華街みたいだな、私達の龍神様は」

 「肉まんとか食べたくなるね♪」


 龍宮大合神を見た仲間達は、口々に思った事を言う。


 「纏めると、凄い中華ですねえ♪」


 ゴートマン先生も纏めた。


 「ドラゴンシフター君達が来た♪」


 エメラルドマンは素直に喜んだ。


 「ご主人様、黒いロボットから映像が直で来ました」

 「ああ、知り合いっぽいと思ったらゴートマン先生達か」


 龍宮大合神の機内にスクリーンが浮かび、ガラドーン内の様子が映し出される。


 「え~っ! 何かあっち,、白と黒になってるよ!」

 「またホイホイ、妙なパワーアップしてるっしょ!」

 

 プリティボックスが驚き、アームドタイガーが呆れる。


 「やかましい、こっちはこっちで苦労してるんだ!」

 「まあ、挨拶は後にして皆で共闘して乗り越えましょう」

 

 ガラドーン達と協力すると決めた太極ドラゴンシフター。


 「エメラルドマンも宜しく」

 「宜しく、一緒に勝とう♪」


 エメラルドマンと龍宮大合神が拳を打ち合わせる。


 「まずは一発、赤龍宝珠爆炎弾せきりゅうほうじゅばくえんだんっ!」

 「宝珠セット、ぶっぱなしましょう♪」


 龍宮大合神が、掌を突き出して巨大な火の玉をナミダ―メに発射する!


 「エメラルドチャクラム!」


 エメラルドマンも、両手を回して円を描けば光の輪が敵へ飛ぶ。


 だが、巨大ナミダ―メは二体の攻撃を受けるもすぐさま損傷を修復させる。


 「避けたり防いだりすると思った♪ 無敵の意味を教えてあげる♪」


 ヒーロー達を嘲笑うと一礼するように右腕を振り、ナミダ―メは衝撃波を放つ。


 黒い斬撃が三日月のように弧を描いて飛んで来る。


 「ファンロンクロー!」


 龍宮大合神が両手の五指を開き金色に輝かせた爪を振るう。


 光の爪と闇の斬撃がぶつかり合い、闇が砕け散る。


 「俺達も行くっしょ!」

 「回せ回せ!」

 「エネルギーを高めるんだ!」

 「ガンガン回すよ~っ♪」


 ガラドーン内でスクールフォース達が、勢いよくテーブルを回転させ続ける。


 回り続けるテーブルが、次第に金色に輝き出した。


 「今だ、ガラドーンアタック!」


 ガラドーンが金色の光の球体に包まれ、砲弾となって飛んで行く。


 「しまったっ! ぎゃ~~っ!」


 調子に乗っていたナミダ―メにガラドーンの一撃が直撃し、光に包まれれる。


 「……もしかして、やったか?」


 エメラルドマンが、言ってはいけない台詞をつい言ってしまう。


 「いや、まだだ!」

 「危ないっ!」


 ナミダ―メとガラドーンがぶつかり合い、金色の光の柱が上がる。


 同時に、ガラドーンが弾き飛ばされて来たのを龍宮大合神が受け止めた。


 「うおっ! 何とか助かったな」

 「うん、ドラゴンシフター君達はありがとう♪」

 「だが、まだ奴の気配は消えてない!」

 「嘘でしょ! 俺達必死こいて攻撃したのに!」

 「敵もボスだから、そう簡単にはくたばらないてか?」


 円卓にしがみつき転倒を防いだ、スクールフォース達。


 「大丈夫です、皆さんなら打ち勝てます♪」


 ゴートマン先生が穏やかに優しく語り掛けつつ、生徒達に回復魔法をかける。


 「ふう、取り敢えずあの山羊ロボに乗ってる皆は大丈夫だろう」

 「明らかに魔界の気配がしますが?」

 「前にも言ったが、ゴートマン先生は今の所味方だから信用してる」

 「裏切ったなら倒せば良い、シンプルで良いですね♪」

 「緑龍宝珠召喚、エメラルドマンも回復だ!」

 

 龍宮大合神の機内で太極ドラゴンシフターが語り合い操作をする。


 巨大な緑色の宝珠が虚空より現れ、龍宮大合神からエメラルドマンに手渡される。


 「え? これはどういう事っ?」


 受け取ったエメラルドマンの体内に、宝珠が吸い込まれて当人が驚く。


 次の瞬間、エメラルドマンの全身が金の輝きに包まれる。


 輝きが消えると、エメラルドマンは龍の頭を模した金の鎧と武具を纏っていた。


 「ご主人様、ここで他者にを分け与えられるようになるとは流石です♪」

 「多分、学園祭の時に彼に俺の力への親和性が出来てたんだよ」


 軽い気持ちで友人をパワーアップさせた太極ドラゴンシフター。


 「ありがとう、大事に使わせてもらうよ♪」


 ドラゴンエメラルドマンとも言うべき姿になった彼が、龍宮大合神へ礼を言う。


 「……悲しいわ、まさかこんな子供達にここまで言いようにされるなんて!」


 巨大ナミダ―メが両目を真っ黒に変色させて、漆黒の涙を流す。


 「でも、あなた達はもうおしまい♪ 私の体からお父様が蘇るわ~っ♪」


 巨大ナミダ―メの全身が風船の如く膨らみ、空へと高く舞い上がる。


 空の上でナミダ―メの膨らんだ体にひびが入り、卵を割るように鋭利な黒い爪で覆われた手足が突き出てナミダ―メが弾けた!


 「ナミダ―メから、大きな怪獣が生まれたっ?」

 「出てくるたびに姿が変わるようですが、怪獣ですか」


 太極ドラゴンシフターが敵の姿を見て呟く。


 この世の空に四度目の顕現した恐怖の大王。


 その姿は、手足に黒き爪を持ち腹には触手が蠢く灰色の巨体。


 背には亀の様な甲羅、そこに映るはナミダ―メ。


 肉食恐竜に似た獰猛な牙を剥く爬虫類の頭部には、水牛の如き真紅の角。


 巨大怪獣として顕現した恐怖の大王と、ヒーロー達の第二ラウンドが幕を開ける。

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