第5話 本社訪問とワンダリング忍者

 「日高立磨ひだか・たつま様、黄金麗ファン・ジンリー支社長♪ お待ちしておりました♪」

 「どうも、今回はよろしくお願いします」

 「ありがとうございます、さあまずは社長室へと参りましょうかご主人様♪」

 

 仕事と言う事で学校を休み、中国にある株式会社ロンスターの受付にて挨拶をする立磨とジンリー。


 立磨は服装は、緑のブレザーにグレーのスラックスとヒーロー高専の制服姿。


 ジンリーは上下黒のパンツスーツ。


 立磨は白い制服の受付嬢から白龍のオーラが見え、その正体がわかり若干驚いた。


 ジンリーについて行きエレベーターホールに向かい、十階の社長室へと向かう。


 エレベーターを降りると黒スーツ姿の男性コンシェルジュが出迎えてくれたので二人は一礼する。


 「ようこそ♪ 社長がお待ちです♪」

 「ありがとうございます、それでは失礼いたします」

 「ありがとうございます」


 コンシェルジュさんの操作で、自動的に社長室へのドアが開かれたので入る二人。


 「ようこそ、株式会社ロンスターへ♪」


 社長室で待ていたのは、ジンリーに似た金髪縦ロールの巨乳美女だった。


 着ている服装は、何故か白いファーが付いた金色のセクシーなチャイナドレス。


 「初めまして、日高立磨と申します♪ えっと、ジンリーのお姉さんですか?」

 「はい、姉です♪」

 「社長、ご主人様に嘘をつかないで下さい」

 「初めまして、社長でジンリーの母のジンファです♪ 今日は、気合いを入れてお出迎えさせてもらったわ♪」

 「社長? 金のチャイナドレスは、気合いの入れ所が違うと思いますよ♪」

 「何の気合いかはわからないが、ジンリーのセンスは母親に似たのか!」


 名乗るジンファに対してジンリーが間に割って入り、立磨をガードする。


 「ジンリー? 家族の事を警戒しないで欲しいんだけど?」

 「ご主人様は、ドラゴンたらしな性質なので社長に手を出されないか危険です!」

 「すみません、社長が美人なのはわかりましたがジンリーの事が大事なので勘弁して下さい」

 「娘と一緒になってくれてありがとう、孫は百人位かしら♪」

 「その辺りは、ジンリーと相談して行きます」


 取り敢えず落ち着いたので雑談、その後改めてロンスターがゲーム事業だけでなく民間軍事警備や病院経営をしている企業だと教わった。


 「ヒーロー事業を始めたのは、俺がきっかけですか?」

 「ええ、盟約にしたがい守護して来た人の一族の子が君♪ 妖怪ハンターを廃業した君のご先祖様が、自分の子孫が再び戦う時は守るに加えて共に戦ってくれって♪」

 「えっと、先祖の代からありがとうございます」


 ジンファに礼を言う立磨、先祖にも心の中で礼を言った。


 「ヒーロー事業部はPMSC部門の装備のテスターの役割もあるの、可能な限り黒い仕事はしていないしさせてもいないけれど真っ白な組織じゃないのはごめんなさい」

 「飲み込みます、ヒーローとして頑張って釣り合うもんじゃないけれどそれでも俺も身内の善悪の帳尻合わせをします」


 ジンファに告げる立磨、そんな彼にジンファは頭を下げた。


 「それでは、各部署に挨拶回りと見学ね♪ 通達しておくわ♪」

 「ありがとうございます♪」

 「期待してるわ、婿殿♪ う~ん、やっぱり私もお嫁さんにしない♪」

 「社長、コンプライアンス違反です!」

 「家族関係はクリーンでお願いします!」


 社長室でぐだぐだなやり取りを終えて。立磨とジンリーは退室した。


 「民間軍事警備部の部長のグアンだ、かんさんでも良い♪ 宜しく頼む♪」


 次に訪れた民間軍事警備部で、部長の関さんと会った立磨。


 関さんは、角刈り頭で精悍な感じのスーツ姿の青年男性であった。

 

 「我々の仕事は傭兵や警備など多岐に渡る、ダークカルテット関連では互いにサポートを行う事も増えて来るだろうから紹介しておこう」

 「よ、よろしくお願いします!」

 「では、地上のグラウンドに行こう」


 関さんに案内されてグラウンドへと移動した立磨、そこには男女含めて二十人ほどの社員が集まっていた。


 「彼らが民間軍事警備部の社員達、ロンスターガードだ」

 「よろしくお願いします!」


 関さんが全員を纏めて紹介したので挨拶する立磨、ジンリーは後ろで女性社員達を睨んでいた。


 自己紹介を終えた立磨は、ロンスターガードの訓練の体験と言う事で装備を背負ってのランニングを一緒に行い交流したのであった。


 「ジンリーの血で強化されたとはいえ、慣れない事は疲れた」

 「お疲れ様です、午後はゲーム開発部でモーションキャプチャーですね♪」

 「変身後の自分が、ゲームキャラになるとは思わなかったよ」

 「アテレコは、日本語版はご主人様でとの事で声優デビューも頑張りましょう♪」

 「うん、ご迷惑おかけします」


 社員食堂で、チャーハンと餃子とミニラーメンを食べながらジンリーと語る立磨。

 

 疲労はジンリーの血を飲み、回復し次は地下のラボへと向かう。


 「初めまして、開発室長の黄金鈴ファン・ジンリンだよお義兄さん♪」

 「妹です、アメリカの大学を飛び級で卒業しています」


  パソコン以外は用途がわからない機械が多数設置されているラボで紹介されたのは金髪ツインテールに白衣の眼鏡っ娘のジンリンであった。


 「は、初めまして! お姉さんにはお世話になってます」

 「私もお世話してますよ? ファンロンバックルの開発者は私です♪」

 「……誠にありがとうございましたっ!」

 「いや、ちょっとやめて下さい! 姉が怖いです!」

 

 立磨が土下座したのを、ジンリンが慌てて止めた。


 その後はさくさくとジンリンの指示に従い、モーションキャプチャーでアクションポーズを取った立磨であった。


 「お疲れ様です♪ このラボでは、ドラゴンシフターの装備開発もしてますので何か新装備のご要望があればご連絡お待ちしてます♪」

 「ジンリン? ご主人様は、あなたの義兄である事を忘れないように?」

 「あはは、お姉ちゃんを宜しくお願いしますね~♪」


 ジンリンは、怒るジンリーから逃げ出した。


 「ふう、企業の所属の身だから仕方ないけれど学校も休んでばかりは駄目だな」

 「はい、今後は本社とはリモートで済むように調整しますね♪」

 「ああ、お願いします勉強もしたいので」

 「私も、ご主人様と二人の時間を邪魔されたくはないので♪」

 「ジンリーの家族、個性が強すぎるよ?」

 「それは、龍の中でも美しく強い黄龍なのでご容赦下さい♪」

 「……うん、ジンリーも大概だったよ」


 以前訪れた黄家の別荘に滞在する二人、ジンリーの龍の血入りの中華粥を食べながら語り合い寝食を共にするのであった。


 次の日、再び本社に来た立磨は地下にある芸能課の音響スタッフ達の指導を受けてアフレコスタジオで台本と収録に格闘していた。


 「ファンロンアッパ~~~~ッ!」

 「ファンロンバ~~~ストッ!」

 

 アクションゲームの収録と言う事で、中には立磨自身が知らない技の台詞などがあり驚くという体験をした。


 「出せない技は載せてないですから、安心して台詞を収録して下さい♪」

 「オッス、わかりました!」


 本社の役職者でもある、クライアント側のジンリンの言葉に従う立磨。


 駄目出しにもめげず、何とか収録を勤め上げたのであった。


 「お疲れ様でした、ボイストレーニングも日本での自主練メニューに加えてもらいますね♪ ヒーローは今の時代、半分芸能人とも言える存在ですから♪」

 「……うん、頑張ります」


 ジンリンの言葉に頷く立磨であった。


 午後は、ドラゴンシフターに変身して山林でのロンスターガードとの合同訓練に向かった。


 ロンスターガードの隊員達も、ドラゴンシフターに似た黒のパワードスーツを全身に身に纏っていた。


 彼らから森林ではどう動くかなどを学んでいたドラゴンシフターであったが、事態は変わった。


 虚空に異次元のゲートが開き、その中から全身灰色に巨大な頭とリトルグレイに似た武装集団が出現したのだ!


 「むっ! あれは凶星忍軍きょうせいにんぐんかっ! 総員、実戦に移行!」


 黒い龍のスーツを纏ったヘイロン1こと関さんが叫ぶ!


 「出たなダークカルテット! 勝負だ!」

 「頼むぞ、ドラゴンシフター♪」

 

 ヘイロン1と拳を合わせて、敵の戦闘員と交戦状態になるドラゴンシフター達。


 味方であるロンスターガード達と協力して、近距離の相手には格闘で遠距離には気弾や銃弾と言った飛び道具っで応戦して行き数を減らして行く。


 「良し、状況終了だな」

 「待った! まだゲートが開いてます!」


  ドラゴンシフターが、まだ目の前に開いている黒い穴を警戒する。


 そして、穴の中から男性の笑い声が聞こえた。


 「流石はヒーロー♪ 下忍共では相手にならぬか♪」


 凶星忍軍達のゲートから新たに出て来たのは、緑色の忍者だった。


 「凶星忍軍中忍きょうせいにんぐん・ちゅうにん、ガマード参上っ!」


 ガマードと名乗った忍者は、緑色のガマガエルの怪人へと変身した。

 

 「危ない!」


 ドラゴンシフターがヘイロン1を突き飛ばし、彼を狙っていたガマードの舌を伸ばす攻撃を手の甲の爪を振るって弾く!


 「助かった!」

 「身内ですから♪ 俺が突っ込むんで、援護をお願いします!」

 「任せろ♪ 総員、ドラゴンシフターを援護だ!」


 ヘイロン1と敵に突っ込むドラゴンシフター、追加で出て来た戦闘員達は他のロンスターガードの援護射撃で倒される!


 「何だとっ! これならどうだ!」

 「悪いが、俺達に毒は効かないんだよ!」

 「そう言う事だ!」


 ガマードの毒ガス攻撃をものともせず、ドラゴンシフターとヘイロン1のダブルキックが敵の腹へと炸裂する!


 「ゲコ~~ッ!」

 

 吹き飛ばされ敵にぶつかるガマード!


 「良し、止めは頼むぞドラゴンシフター♪」

 「任されました、行くぜ新技のファンロンバ~~~ストッ!」


 ドラゴンシフターが、腰を落として敵に向けて両掌を突き出す。


 すると、格闘ゲームの飛び道具のように金色の龍の形をしたエネルギーが掌から放たれて敵を飲み込み消し去った!


 敵の消滅と、ゲートの消失を確認するとヘイロン1が改めて状況終了を宣言した。


 「さて、君もわかっているとは思うが帰ったら書類の提出だな」

 「ええ、書く量は段違いだと思いますが?」

 「まあな、書類を書くのも確認するのも多いのが俺みたいな管理職の役目だ」

 「ご指導、ありがとうございました」

 「まあ、人材育成も仕事の内だからな♪」


 訓練で赴いた山林を出て、変身を解いた立磨と関さんが語り合う。


 予想外の場所で、ダークカルテットの四つ目の組織との戦闘を経験する事となったドラゴンシフター。


 だが、新たな味方との出会いと交流と仕事の経験は少しづつではあるが立磨の血肉になっていった。


 ヒーローと社会のすり合わせとは何かと言う物を、ロンスターの本社で少しだけ感じ取り立磨とジンリーは日本へと帰国したのであった。

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