第3話 新しきスクールデイズ
「
入学式を終えて一年生の教室にて、立磨が正拳突きの構えを取っての屈辱の自己紹介から彼の新たな学校生活がスタートする。
フロートシティヒーロー高等専門学校に、転校生として来たはずが転校前の成績表から判断された結果。
二年生ではなく、一年生として入学式から参加して実質的に新入生から再スタートとなってしまったのだ。
「はい、宜しくお願いします♪ 大丈夫、この学校は出来たばかりの新設校♪ 教師も生徒も職員も皆一年生だ、皆で学びながら成長して行こう♪」
クリーム色のスーツ、風になびく金髪、顔も声も爽やかなイケメン眼鏡男子なクリストファー先生に肩を叩かれて涙を流す立磨。
そんな彼を、新たなクラスメート達は笑顔と拍手で迎えてくれた。
その新たな学友達の優しさが、嬉しくも複雑な立磨であった。
自己紹介が終わり、学校の施設を見て回る事になった立磨達。
食堂、美術室、理科室、音楽室、技術工作室、職員室や教務課などの本校舎にある物の後は複数ある大型の施設の見学となった。
一つ目は三階建てのコンクリートの四角い建物
「ここは図書館だ、視聴覚室もここにあるので司書の先生の指示に従うように」
クリストファー、クリス先生の言葉に全員が返事をして書架や機材を見学する。
次の場所はこちらも灰色の四角い鉄筋コンクリートの建物であったが図書館よりも大きい五階建で一階の出入り口が開いており中からコートと舞台が見えた。
「体育館も広くて大きい♪」
女子生徒の一人が嬉しそうに声を上げる。
「一階が球技や総合的な運動場と演劇などの舞台だ、各種武道場は地下でプールは屋上にあるので夏場は注意して使用するんだぞ?」
「熱中症とかキツイからな~」
「中学より良い施設だ~♪」
「部活動とかも作ったら楽しそう♪」
体育館に盛り上がる生徒達、立磨も前の学校より良いと感動していた。
次に訪れた施設は、体育館と造りは似ていたが入り口にガーゴイルや狛犬などの魔よけの置物が設置されていた。
「ここは、
クリス先生が解説する、メジャー宗派の礼拝施設やカウンセリングルーム等もここにあるらしい。
更に施設見学は続き、次に訪れたのは巨大なガレージであった。
「近日搬入があるが、ここは実習用のロボットやマシンのガレージだ。 ロボットは特殊重機扱いでヒーロー免許だけでは取り扱えないから、しっかり学科と実技の教習を受けて免許の更新を忘れないように! 保険も忘れずに加入だ!」
クリス先生が厳しい口調で語る、社会の厳しさと世知辛さを立磨達は感じていた。
「後、現在は建設中だが屋外競技場ができる予定だ♪ 工事の業者の邪魔になるので近づかないようにな? それでは教室に戻ったら、解散だ♪」
クリス先生の言葉に従い皆で教室に戻り、明日からの授業などについて説明を受けて解散となった。
「新しい学校は馴染めそうですか?」
「ああ、今の所問題はないぜ? まさか、一年生からやり直しになるとは思わなかったが」
「学業に関しては、幸運はお授けできませんでした」
「いや、良いよ! 自分でどうにかできる所だから努力するよ!」
「ご主人様が楽しそうで何よりです♪」
「……なあ、ジンリーも一緒に通えないのか?」
「それは、私と一緒に学生生活を送りたいと言う事でしょうか♪」
「いや、まあ仕事とかあるだろうしどうだろうとは思うけどな?」
「わかりました、手続きの都合がございますので来月からは私も学校でご一緒させていただきます♪」
「そうか、楽しみだよ♪」
「私も楽しみです♪」
帰宅後、事務所二階の住居スペースで食事をしながら語り合う二人。
この時は、ジンリーが学校に行く件は仕事の都合で無しとなるとは思わなかった。
ジンリーと立磨の仲も、出あってから急速に深まって行った。
次の日、午前の授業中に爆発音と共に事件が起きた。
「先生、事件が起きたので出撃しますドラゴンシフト!」
立磨が変身して窓から飛び出し、召喚したラゴン形態のジンリーに跨り空を行く!
「競技場の建設現場か!」
「オイオイ、マジかよ? 俺、実戦初めてなんだけど?」
「クリス先生、日高君が窓から飛び出しました!」
「ちいっ、免許持ちの生徒のみ出撃許可! 先行した生徒にはレポート提出を命じると伝えてくれ!」
「わっかりました~♪ 学園の平和は、私達で守るよっ♪」
次に窓から飛び出したのは、オレンジ色のショートカットのボーイッシュな少女。
空中で発光し、黄色いフリル付きのドレスに拳が巨大なオレンジ色のボクシンググローブとオレンジ色のブーツと言う姿に変身して空を飛ぶ。
「生徒だけに戦わせはしない、私も出るっ!」
クリス先生も教室の中で、懐から土で出来た黄色い髑髏の仮面を被ると緑色のタイツ状の全身スーツを纏ったマッチョな黄色い髑髏仮面の超人へと変身した!
「キャプテンメキシコ、出る! フォロミ~~ッ!」
変身したクリス先生も窓から空へと飛び出した。。
「クライゾ~~~ン!」
工事中の競技場の中で叫ぶのは、泣き顔を模した白い仮面を被りショベルカーを胴鎧のように纏った怪人が暴れていた。
「クライゾーンのクライ
「工期が遅れるけど、逃げろ~っ!」
「誰か、学校のヒーローに連絡だっ!」
突然の怪人の出現に驚き、逃げながらもヒーローへの連絡などを行なおうとする作業員達。
「連絡不要、ドラゴンシフター参上っ!」
ドラゴンシフターがヒーローらしく名乗る。
「待った~~っ!
続いて現れた、プリティボックスが名乗る。
「最後は先生だ、キャプテ~~~ン・メキシ~~コッ♪」
キャプテンメキシコが、サイドチェストのポーズで名乗る。
今回は三人のヒーローが、戦いの場にエントリーした。
「カナシ~~~ッ!」
クライゾーンの怪人、ショベルクライ魔が叫ぶとその影から泣き顔の仮面を被った黒タイツの戦闘員達が現れた。
「畜生、悪の組織ってどこも戦闘員を召喚するよな!」
「まったくだよ、面倒くさい!」
「そういう物だ、生徒諸君!」
「いや、先生がキャプテンメキシコだったんですか?」
「はっはっは♪ サインは後だ♪」
ショベルクライ魔がバケット付きの腕を伸ばして地面を殴り、衝撃波を起こす!
「大地は俺の味方だ、ドラゴンクエイクッ!」
ドラゴンシフターが大地に掌を当て、地震を起こして衝撃波を相殺する!
次に襲い掛かるのは敵の戦闘員達。
「良し、戦闘員は先生に任せろ♪」
「私も頑張る、クライ魔はドラゴンシフターお願い!」
「任された♪」
三人は分担を決めて散開、ドラゴンシフターは味方に背中を預けて突っこむ。
「まずは一発、チェスト~~~ッ!」
「カナシ~~~ッ!」
ショベルクライ魔に跳び蹴りを決めて吹き飛ばすドラゴンシフター。
「ほう、あの蹴りは垣花流か♪ メキシコチョップ!」
「むう~っ! 私の春原流も負けてないもん、タイガーパンチ!」
ドラゴンシフターの動きを見たメキシコとボックスも、戦闘員を己の技で倒す。
「ちっ! こいつは何か裏があるのか? それともデーモニウムの所為か?」
「ツライ~~ッ!」
我武者羅に暴れるショベルクライ魔を、一人で抑えて戦いながら考えるドラゴンシフター。
クライゾーンのクライ魔が発生する原因は二種類。
一つは、使徒と呼ばれる幹部がストレスで精神が崩壊しそうな人間に目を付けて魔力を注いで怪人化させる事。
もう一つが、魔界の物質に触れたメンタルが限界の人間が変化するクライ魔。
「どっちにしても、まだ戻せるっ!」
ドラゴンシフターは、原因究明は後だとクライ魔の仮面を殴り破壊する!
すると、クライ魔の体が半分に割れてゲートが開いたのでドラゴンシフターは飛び込んだ。
「ほう、クライ魔から人間を助ける方法を知っているのか♪」
「良かった、助けないでそのままやっつけちゃうかもと思った♪」
戦闘員を倒し終えたメキシコとボックスが、ドラゴンシフターがクライ魔を人間に戻して救う方法を知っていた事に感心する。
「ここが、ゲートの中か?」
ショベルクライ魔の精神世界であるゲートに入った、ドラゴンシフター。
辺り一面が闇の世界の周囲を確認しながら進むと、十字架に磔にされた作業員の男性を目にする。
「見つけた! と言う事はクライ
ドラゴンシフターが構えると、地面が唸り地中から巨大なショベルカーの怪物が出現した。
怪物の名はクライ
クライ獣を倒さねば怪物化した人間は救えない!
「カナシ~~~ッ!」
叫び声を上げながらバケットを振り回すクライ獣、その攻撃を避けるドラゴンシフター。
「……ちっ、負の感情で満ちた場所にいるとこっちまで気持ちが悪くなる!」
自分にも生まれる苛立ちや不快感を自覚し。気持ちを抑えるドラゴンシフター。
敵の図体が大きい分、大振りな攻撃をステップで避けつつドラゴンシフターは呼気を練る。
「行くぜ、来てくれジンリ~~~ッ!」
ドラゴンシフターの叫びに応じて闇が避け、光り輝くメタリックなロボット状の金の龍が現れた!
召喚されたジンリーが、尾を振り敵のバケットと打ち合いドラゴンシフターが気を練る時間を稼ぐ。
「良し、チャージ完了! 決めるぜ、ファンロンクラッシュ!」
ドラゴンシフターが跳躍すると、ジンリーが巨体を縮小させてドラゴンシフターの拳に巨大なガントレットとして接続される!
そして、ジンリーと一つになったドラゴンシフターが拳を黄金に輝かせて突進し、クライ獣を貫いて滅ぼした。
クライ獣が滅ぶと同時に作業員を縛る十字架も消えて、ドラゴンシフターは人間に戻った作業員と現実へ帰還した。
「……ふう、やれやれだぜ」
『お先に帰宅します、ご主人様♪』
ドラゴンシフターに思念で伝え、ドラゴンとなって飛び去り帰って行くジンリー。
「凄い、やったね♪」
「見事だったぞ、日高君♪」
変身を解き、
ドラゴンシフターも変身を解いて、作業員の人をクリス先生に預ける。
「先生、この人を学校の病院へお願いします」
「ああ、任せなさい♪ 春原さんと、日向君はレポートの提出を♪」
「あ~、やっぱり必要ですよね~」
「うん、そっちの方が手強いよね」
事件は、解決した後の方が面倒だと学んだ立磨であった。
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