第2話 電車の中で

 地下鉄の端っこにある、三人掛けの椅子に座っていた時のこと。

 コロナで密にならないように、最近は三人掛けでも二人しか座らないこと、多いです。

 

 私は電車に揺られ、うつらうつらしてました。

 

 そうしたら、左側から遠慮がちに「……あのー……」という声。目を開けて見ると、上品そうなお婆さんが私に言います。


「Aという駅で降りたいんですけど、次がA駅でしょうか……?」


 へっ?


 ……っていうか、私は寝てたし。今、どの駅のどの辺なのかもわからない。

 えーっと、えーっと。


 不安げなお婆さんの圧を左から感じつつ、確か、さっき停車したのがB駅だったから、次は、お婆さんが下りるべき駅のはず。


 念のためにドアの上の乗り換え案内図で確認しました。席まで戻り、


「たぶん、次の駅で合ってると思いますけど」

「そうですか。ありがとうございます」


 などと言ってる間に、地下鉄の次の到着駅のアナウンスが流された。

 やっぱり合ってた。


「ここですよ」


 私のお墨付きを受けたお婆さんは、何度も何度も頭を下げて、降りられました。


 確かにな~。

 携帯持ってなさそうだったし、小柄なお婆さんにはドアの上の案内図なんて見られない。人に聞くしかないよね~。


 でも、あの私。寝てたんですよ? 他にも人がいたはずなのに。

 起こします?

 

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