仕事中の出来事(微ホラー)

 朝はとっても忙しい! わたしにはとにかく、やることがいっぱい!

「おはようございます! おはようございます!!」

 わたしは元気に挨拶をする。気持ちの良い朝には、まず挨拶が必要不可欠だから、ねっ!

 でもわたしのを通っていく人は、みーんな知らんぷり。……まあ、仕方がないけどね。

 だってわたしは、自動ドア。人の気配を察知して扉を開けるのが仕事! わたしの声は皆には聞こえないし……まあ、本当は挨拶する必要なんてないんだけど……。

 でも、わたしがしたいの。さっきも言ったけど、気持ちの良い朝には、まず挨拶が必要不可欠! それに、みんなこんなに早い時間から、わざわざこうして会社に来て、お仕事をしているのだ。そんなみんなを、労ってあげたい! だから、「扉を開ける」っていう少しの労力を担わせてもらっているのは、本当にありがたい。

 この仕事は、わたしの天職なんじゃないかな、って思う!



 出社時間を過ぎると、出入りをする人はまばらになってきた。ここからは、営業に行く人とか、ちょっと休憩に行く人とか、逆に、ここに来たお客さんが、たまに来るだけ。

 もちろん自分の仕事を怠けるつもりはないよ! でもちょっぴり気は抜けちゃう。わたしにとっては、休憩時間みたいなものなんだ。

「こんにちは」

「……ええ、こんにちは」

 もちろんわたしは、ここに来てくれたお客さんにも声をかける。わざわざここに来てくれてありがとう! ……っていう気持ちを込めて……。

 ……えっ、ええっ!?

 わたしは心の中で大きな声を出した。だ、だって、だってだって! わたしの挨拶に答えた人が!! いた!!

 慌ててその声の人を探す。でもその人はもう私の下を通って行っちゃったらしい。受付の人以外に、ここに人はいなかった。

 え、ええ……そんなぁ……話せるってことは、お友達になれたかもしれないのに……。

 しょぼん、としていると、まさにその受付の人が、ふと小さく呟いた。

「……今、自動ドア……誰も通らなかったのに、開いた……? 故障かな……管理会社に相談しよ……」

 え、ええっ……。

 誰も通らなかった!? そんなはずはない。確かに、ちょっとボーッとはしてたけど、でも、長年やってきたこの仕事を、わたしがミスするわけがない!

 でも今、誰も通らなかった……。

 え、ええっ、もしかして、ユーレイってやつ!? わたし、ユーレイとお話しちゃった……ってこと!?


 も、もー!? 何なの!?

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