第17話 晩秋


その日は薄暗くなった黄昏時だった 


僕らは人間からは鑑賞されることもない、ただの葉っぱ


緑をさらに深くして晩秋に耽る風に


なびかせられながら遠くて近い冬を待っている


もう、今の時期なら君は


咲くことはないはずなのに


季節外れの君は迷子になって


僕らが住んでいる世界に現れた


伝承には聞いていたけれど、初めて君の姿を見たとき


僕はつい息をのんで何も言えなかった


褒めることもできず、


美しい言葉で愛でることもできすに


ただ透明な空気の中で小さく


息を吸って君のそばに佇んでいた




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る