異世界転移勇者は悪人から執事にジョブチェン
遊遊
第1話 〜勇者、日本に行く〜
魔界域の最奥の山にお爺さんと勇者が住んでいました。
「なあ、じじい」
「なんじゃ、勇者」
「ヒモトって名前だって言ってるだろ、歳か?」
「うるさいわ、伊達に1000年も前から魔王しとらんわ」
「あれ神の1柱、破壊神だよな」
「大方、魔王が倒されずにいるから殺しに来たのじゃ」
「何で?」
「この世界は魔王が勇者に倒されてまた新たな魔王が生まれて魔力の循環が起こる」
「じゃあじじい殺さないといけなかったのかよ」
勇者ヒモト、魔王のお爺さんがお互いを見る。
「今なら神も魔王を殺せば引き下がるかもしれんぞ」
「やだよ、ジジイの事気に入ったからな」
「まったく悪い勇者じゃの」
「俺は俺の為に生きる、それだけだ…親には捨てられたからな」
「魔王を親代わりにするとは…ヒモト、お前だけは逃げよ」
魔王の言葉にヒモトは驚く。
「二人でやれば何とかなるだろ?」
「…無理じゃよ、勇者の力は神の力…制限されるじゃろ」
「それなら他にもやりようはあるさ」
「……我、今代の魔王なり驚異たる勇者を次元の彼方へと消し去りたまえ」
「なっ!」
「オリジナルの魔法じゃ、やられそうになったら使うつもりだったが…お前は生きよ」
「勇者がころさ」
「残念じゃがあやつには元凶を消し去る事しかない」
魔法陣がヒモトを包む光が溢れている。
「出られない!」
「そこは次元を変えようとしている、別次元から干渉は出来ん」
「さらば、馬鹿な勇者よ…大切な孫よ」
次の瞬間目の前から魔王は消え、ヒモトも光に包まれたのであった。
それからどれくらいの時が経ったか分からないがヒモトは森に目覚めた。
「っう、ここは何処だ?」
どうやら森の中と言う事は分かったが場所の検討もつかない。
「とりあえず、ウィングフロート」
「……はっ、あれはなんだ!?」
そこから見えるのは王都にも帝都にも無かった城より高い建物の数々。
「ここは未来なのか?…町人の服が異空間ポケットにあったはず…情報収集だな」
ヒモトは勇者の鎧姿から町人の服へと着替え建物が多くある場所へと向かった。
「この道…ありえない、ここまで平らなんて」
「建物にあれほどガラスが使われているなんて!城か上級貴族だけの筈…まさか貴族街か!」
そこに不思議な勲章を帽子付けた男がやってくる。
「Do you speak Japanese?」
「はっ?言葉が分からない…我、勇者ヒモトなり全ての言葉を操る」
「日本語を話しますか?」
「ニホンゴとやらわ分からないが話せるぞ」
「!とてもお上手なのですね…私は警察の者ですが、何か困り事ですか?」
「?いや、困ってはいないが」
「そうですか、パスポート…それとビザはありますか?」
「パスポート?ビザ?なんだそれ」
「………」
話しかけてきた男はニッコリと
「少しあちらでお話しを聞けませんか?」
「…!」
ヒモトは直感的に逃げなくてはならないと感じ走りだした。
「やばい、あれは勇者をよく思っていない敵対国の兵士か!」
「まて!怪しい外国人、服装は…身長……方面に」
男が何か一人で話しているのを見ながらさらに走って距離を稼ぐ。
「まさか個人で通信魔導具を持たされているだと!国に数えるほどしか無かったあの巨大な魔導具を個人で持てる大きさに!」
ヒモトは魔導具、魔法、剣技、鍛治、錬金術など様々な知識を有しそれを楽しんでいた。
「くそ、通信魔導具があれなら追跡も…我、勇者ヒモト追う者を惑わせたまえ」
隠蔽魔法により、人通りの多い場所から離れ、古い建物が並ぶ場所に来ていた。
「逃げ切れたようだ…ここは?」
「おう、にいちゃん外国人か?」
「誰だ?」
「いやー、困ってそうだったから声をかけたんだよ」
「困ってはないぞ」
「そうかい?お金は無さそうだったからよ」
「ふむ、これは使えないのか?」
ヒモトは異空間ポケットから金貨を10枚程出した。
「!ほぉ、にいちゃんいっぱい持ってるんだな…だけど今は使えないよ…よかったらこれと交換してやるよ」
「?これは紙か?なんだこの印刷は!凄すぎる」
「どうやら田舎者のようだ…なら」
「こ、これと交換してくれるのか!?」
「おっ、おう!それ10枚とこれ1枚交換してやる」
「こんな高価な物を」
「なぁーに、困った時はお互い様よ」
ヒモトは金貨10枚と千円札と呼ばれる紙のお金と交換する。
「これで何が買えるんだ?」
「そうだなー、ご飯一回だな、安いと2回は食べられるぞ」
「金貨10枚が安めし2回だと」
ヒモトの世界で金貨10枚なら最高級の店でも2回は行ける、安めしでなら半年は余裕で生活出来る程。
「そうかなら仕事を紹介してやろうか?」
「いいのか?」
「勿論さ」
こうして高そうな柄の服を着た人に連れられ、ヒモトは後に続く。
そこは豪商が住む屋敷の様な所だった。
どうやらこの男は豪商にコネを持っているらしい。
「アニキ、丁度いいの見つけました」
「あっ?…名前は?」
「ヒモト」
「そうか、仕事はそいつから教えて貰いな」
「はい」
「おい、丁寧にな」
「へい!」
そして男に連れられ仕事へと向かった。
それから3年、俺を助けた男は山野、豪商の右腕らしい。
色々教えて貰い、ここは日本と言う国の東京と言う大都市らしい。
最初に出会った勲章の帽子の男はやはり敵国の人間なので見つからず、関わるなと言われた。
日本は食べ物が豊かでおいしく、娯楽も多い、しかし物価は高いらしく働いても無駄に使う事は出来なかった。
山野が安い宿を教えてくれたが仕事のお金に対して少し厳しかった。
仕事は娼婦の護衛、連れ込み宿で娼婦が襲われたら脅す役目を貰った。
他にも荷物の護衛、輸送の手伝い、悪徳商人への制裁、商品の配達、商会長の護衛…護衛多いな。
「山野、今日の仕事は?」
「今日もやる気あるなー、娘を一人連れてくるだけだ」
「娘を連れてくる?どういう事だ?」
「怖い顔しないしない、どうやら怖いやつに囲まれてるから助けてやるのさ」
「なんだ、そういう事か」
「…あの建物から出てくる所を助ける、分かったな」
「分かった」
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