第15話 王と復讐の騎士15

 BEEEEE! BEEEEEEE! BEEEEEEEEEE!

 EMERGENCY!EMERGENCY!EMERGENCY!

 駐屯地司令部より通達! 近隣より緊急通報! 近隣より緊急通報!


 夜明け前に駐屯地内に緊急警報が鳴り響いた。一文字達はベッドから飛び起き、駐機所にある戦艦戦車キャスルベースに飛び乗った。発進準備をしているとジュリアルドとグローサリーが乗ったMDⅠ、Ⅱが見えたので、オラジはMDを載せるタラップを出す。一文字は一人いないことに気が付く。


「ロレッタ、マリナはどうしました? 今回同室でしたよね? 」

「音がして起きると、マリナさん、ベッド傍に置いてあった装備一式を装備して外に出ていく所でした・・・」

「なに・・・? 他気が付いたことはありませんか? 」

「んーーー。あ!マリナさんが出て行って、緊急警報エマージェンシーが鳴る前に馬の鳴き声が聞こえました」

「馬・・・何らかの樹種に気が付いた? ならマリナは先行して通報場所に向かっているのか? 」


 一文字が思案している中、駐屯地司令部より新しい情報がもたらされる。


 駐屯地司令部より通達!

 緊急通報場所はドリネット村!緊急通報場所はドリネット村!

 発進可能部隊は速やかに発進せよ!


「ドリネット村・・・だって? まずい! 近すぎる! オラジ、ロレッタ、発進準備は!? 」

「機関問題無しじゃ」

「こちらもシステムオールグリーンです」

「ん!駐屯地司令部、こちらL.M.D所属4638部隊、発進準備完了!これよりドリネット村へ出撃する」

「こちら駐屯地司令部、L.M.D所属4638部隊、出撃許可する!」

戦艦戦車キャスルベース出撃!」


 と駐屯地司令部より出撃許可が下りる。一文字はすかさず戦艦戦車キャスルベースの出撃命令を出す。そして、一文字は少し考えた後、ある相手へ連絡を入れる。


「エルウィン殿、おはようございます。現状の情報はお聞きですか? 」

「一文字様、おはようございます。ええ、ドリネット村が襲撃を受けたとのことですが・・・」

「マリナがそちらに樹種の気配を感じたのか先行した様です。エマージェンシーが鳴る前に馬に乗って駐屯地を出たようです」

「う、馬で、ですか・・・あの子も無茶をする・・・」

「本来なら独断専行となってしまいますがエルウィン殿から司令部へ根回ししてもらえませんか? 」

「ん・・・あぁ・・・わかりました。騎兵のテンプルナイトが先行偵察に出た事にしておきましょう。苦労させますね」

「いえ、今の保護者は僕なので、申し訳ありませんが根回しお願いします。」

「お任せください。他情報が入り次第連絡を入れます」


 それを最後にエルウィンとの通信が途切れた。一文字は一息つくと駐屯地司令部より追加情報が入る。


 先行ドローンよりの情報を解析結果、樹虫、タイプ蟷螂カマキリと断定、数およそ400。繰り返す、樹虫、タイプ蟷螂カマキリと断定、数およそ400。


『はっぁ?! 400!? カウント間違えてねぇか!?』

「400・・・孵化したてか。しかも襲撃場所がドリネット村。どう考えてもまず過ぎる・・・駐屯地と近すぎる」


 艦橋内は襲撃された村、樹虫、数に驚愕し、焦燥がはしる。場所が掴めていないロレッタは何がそれほどに焦燥をもたらしているのかわからず、隣のオラジに小声で話しかける。


「オラジさん。ドリネット村ってどこですか? 駐屯地から近いのはわかるんですが何をそんなに慌てているんですか?」

「む、ドリネット村とはここに来る際、最後に立ち寄って休憩した村じゃ」

「え・・・ホント目と鼻の先じゃないですか!? それで樹虫が400?! わっわ。本当に危ないじゃないですか?! 」


 ロレッタは口元を手で押さえて、樹虫が出現した位置と出現数に改めて驚いた。そこに一文字が焦燥している理由を話す。


「それだけじゃない。そこにいる樹虫はカーライル城駐屯地のロンガンの大樹へ向かう。樹虫又は樹獣がロンガンの大樹に接触したら、ロンガンの大樹にかけている魔術が解ける可能性がある」


 ロレッタは一文字の話に引っ掛かりを感じ、疑問を呈した。


「樹虫がカーライル城駐屯地のロンガンの大樹へ向かう事は確定ですか? 」

「ん、魔術のかかった大樹はどうも樹虫や樹獣にとって異物のようで、近くにその大樹があった場合、接触して魔術を解こうとする様なんだ」

「もし接触したらどうなるんですか? 」

「接触し、魔術が解けた場合、制御もしくは無害化していた反動でその周辺にいる樹虫や樹獣が狂暴化バーサク暴走スタンピードする事が考えられる。また、先日話したけれど、カーライル城駐屯地にあるロンガンの大樹はウェンチェスター城や他のロンガンの大樹と龍脈の流れに繋がっていると。その繋がりも利用して英国全体的に魔術を施行していると。」

「はい・・・ゴク・・・カーライル城駐屯地にあるロンガンの大樹に接触してしまった場合、もしかして他の場所の魔術も・・・」


 ロレッタはドリネット村を襲撃している樹虫が駐屯地へ向かい、ロンガンの大樹に接触してしまった場合に起きる危険な状況がだんだんと想像が浮かんできた。


「そうだよ。地脈で繋がっている各地のロンガンの大樹に掛かっている制御もしくは無害化した大樹の魔術が一斉に解ける可能性がある。そうなった場合、英国全土の樹虫や樹獣が狂暴化バーサク暴走スタンピードする可能性が極めて高い。それでも最悪じゃない。魔術が解けた反動が各地のロンガンの大樹に繋がっている地脈に波及すれば、英国全体を支えている大地自体にもダメージがいく。最悪、英国全体が沈む可能性がある」

『マジデ英国最大のピンチじゃんよ・・・』

「あわわわわわ・・・」

「しかも、場所の近さ、数だけじゃない。場所もさえぎる物がないほぼ平原というのも最悪だ。散られたら手が回らないかも知れない・・・」

『『「「!?」」』』


 一文字が話す最悪の想定の元、最悪の現状況メンバー全員が絶句する。そんな中、駐屯地司令部より新しい情報が流れる。


 先行ドローンより映像解析 樹虫:タイプ蟷螂カマキリの体長は50cm程

 孵化したてと思われる

 村中央部にて先行した神殿騎士テンプルナイトが奮戦中?

 なんだこの映像本当か?


 駐屯地司令部の連絡に一文字が即座に反応する。


「マリナか!? 戦闘に入ったのか?! これでもう少し時間が稼げるか・・・」

「マリナさん!」

「あの嬢ちゃんが少しでも引きつけていてくれれば」

『オラジもう少し速度を上げられないか』

「わかっちょる。これでもめいいっぱいじゃ!?」


 オラジは戦艦戦車キャスルベースのエンジンの最大出力を引き出して、ドリネット村向かっていく。一文字はジュリアルド達にマリナが引き付けられていない樹虫がいないかMDに乗っている二人に指示を出す。


「ジュリアルド、グローサリー、ロレッタ、マリナが引きつけられていない樹虫がいるかもしれない。重火器使用許可します。索敵し、発見次第撃ち落として下さい」

『『「了解!」』』

『っていっても体長50cmに当てるのは厳しいぜ』

「あ、隊長。この間の豹と戦った時のように予測の魔術は使えないんですか?」

「うぐ・・・惑星配列がズレていて使えません。また金曜日なので甲板の儀式魔術も厳しいのです・・・」

「え”・・・」


 一文字の返答にロレッタは絶句する。一文字は有効的な魔術が使えず顔をしかめている。一文字は現在使用でき、かつ有効な魔術の検索に意識を沈める。ジュリアルド、グローサリー、ロレッタは索敵に専念し、オラジは一刻も早くドリネット村に着くべく操縦に集中し、戦艦戦車キャスルベースの最大船速でもって走らせていく。


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