浮気された聖女は幼馴染との切れない縁をなんとかしたい!

gacchi

第1話 それって浮気?

急に休講って言われても…ついてるのかついてないのか…。


午後の二時限続きの授業が休講と言われても、

待ち合わせの時間まで三時間も空いてしまった。


待ち合わせしている律と一花には一応連絡したものの、既読が付かない。

二人とも授業があるはずだけど、もしかしたら休講になったかもしれないと思い、

連絡だけはしておいたのだった。

どちらも既読がつかないということは授業を受けているのだろう。


さて、どうしようか…。


半年ほど前に入学した大学を今さら見て回る気にもならない。

かといって三十分かけて家に帰っても、

待ち合わせているからもう一度大学まで戻ってこなければいけない。

カフェテリアでお茶して待つにしても、一人で三時間は長すぎる。

売店に行ってお茶を買ったが、まだ十分しか時間は過ぎていなかった。


サークル棟で待たせてもらうか…。

なんとなく入った歴史研究会はサークル棟の奥側に部屋を持っていて、

鍵が壊れているのか誰でもはいれるようになっていた。

その部屋は新入生でも自由に使っていいよと言われていたのを思い出したのだ。


優しそうな先輩たちだったし、

もし誰かいたとしても理由を話せば快く居ていいと言ってくれそうだ。

あの部屋ならたくさんの本や資料が置いてある。

時間つぶしにも困らなさそうだった。


歴史研究会室は六畳ほどの部屋と、本棚が並んだ資料室が奥にある。

部屋には長テーブルとパイプ椅子がいくつか置いてあり、

八人くらいは座れるようになっていた。

おそるおそるドアを開けてみると、中には誰もいなかった。

先輩がいたら事情を話そうと思っていたが、誰もいなかったことにほっとする。

中に入って椅子に座ろうとしたら、テーブルの上に置いてある荷物に目がいく。


なぜ…律と一花の荷物がここにあるの?


見慣れた緑色のデイバッグとピンクのトートバッグ。

トートバッグには一花手作りのぬいぐるみがついていて、間違えるわけはない。

律と一花もこのサークルの一員なので、ここに来ていてもおかしくはない。

私と同じように休講になってここに来た可能性もある。

だけど、荷物だけおいてどこにいったというのだろう?


カタッ


…資料室から音が聞こえる?

奥の資料室から何か聞こえてくるのに気が付いて、資料室の扉を開けようとする。


「やだ…そんな強く揉んだら痛い。

 もっと優しくしなきゃダメ。」


「わかってるけど、難しいな。

 一花の胸が大きいのが悪いんじゃないのか?」


「ええぇ?私は普通の大きさだと思うけど…。

 ねぇ、ここで最後までするのは難しいんじゃない?

 どうする?駅裏のホテルにいく?」


「…うーん。悠里の授業が終わるまで二時間半しかないだろ。

 行って戻ってくるの大変じゃないか?」


「それもそうだね。

 じゃあ、今日は最後までは無しね。」


…何の会話?


音を出さないようにゆっくりと扉を開けたら、艶やかでまっすぐな黒髪が見えた。

いつも見ているその髪を見間違えるわけはない。

その一花と一緒にいるのは、一花よりも三十センチ背が高い律だった。

一花がセーターを脱ぐと、律が一花のブラウスのボタンをはずしている。

手慣れたように外すと、ブラのホックも外して上にずらしている。

そのままブラの下に手を入れて胸を触り、一花へとキスをする。

少し離れたここから見ても、二人が舌を絡み合わせているのがわかる。


どうして…律と一花が…。

これって、そういうことしてるってことだよね?


律と一花とは生まれた時からの幼馴染だった。

両親三組が友人で、同じ分譲住宅地の並び三軒を購入し、

結果として私たち三人は幼稚園から大学までずっと一緒だった。


そして…律は私の彼氏だった。

高校卒業するのと同時に交際を申し込まれ…

つきあってはいたが、キスすらしていなかった。

なのに…今、目の前で律と一花がキスしている。


裏切られていた?いつから?


思わず後ろに下がってしまい、長テーブルの上に置かれていた空き缶が転がる。


カラン…!


「え?」

「誰かいる?」


こちらを見た律と一花と視線があう。


「「…!!」」


気が付いたらサークル棟から飛び出していた。

大学の構内から出て、目についたタクシーを止めて、すぐに出してもらう。

どこに行けばいいかわからなかったが、二つ先の駅へと向かってもらう。

いつも使っている駅とは全く違う駅だ。

少なくとも二人が私を追いかけてきたとしても見つからないはずだ。


どうして…どうして二人が?


そればかりが頭に浮かんでは消えていく。

答えなど自分の中にあるはずもないのに、問いかけることをやめられなかった。




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