22.賢者様、ライカの奇行の原因をすぐに解明しちゃうよ!
「ライカ、どうしたの? お腹すいた?」
武器屋でライカが突然、暴れだした。
普段なら、お腹すいたって聞くと、間髪入れずに「はい!」って元気よく返事をするのに。
たとえ、食後であっても返事をするのに……。
「ぐるるるるっるるうううですぅうう!!」
話し合おうとするも、ライカには言葉が通じないようだ。
狂犬じみた唸り声をあげて、こちらを睨みつけている。
せっかくの可愛い顔が台無しである。
あれ、この表情、ひょっとして……。
私は全てを見通す鑑定魔法【真実の目】を発動させる。
すると、ライカの杖が怪しく光り、『呪い』のマークが現れる。
なんてこったい。
あの子、偶然、呪われた武器を手に取っちゃったらしい。
「風の精霊よ、我に手を貸せ! うぃいいんどぉおおぶらすとぉぉおおお!」
錯乱しているのか、魔法らしきものを叫び始めるライカ。
その動きは普段と全く同じであり、もちろん、何も発動しない。
ふぅ、よかった。
もしも魔法が使えたら、大惨事が起こるところだった。
ライカが魔法が使えなくて本当に良かった。
「うがががが! ナゼナンデスカァあああ!?」
呪われたライカは地団駄を踏んでなんだか悔しがっている。
しかし、まずいぞ。
この子は剣聖の孫。身体能力は半端じゃない。
暴れたら、いろんなものが破壊されちゃうよ。
その証拠に彼女の足元にあった小石か何かが粉々になっている。
ひぃいい、地団太で石ころを粉砕するってどうなってんのよ。
「ワタシ、ガクインデマホウナラッタ、デモツカエナイ、ナゼ?」
ライカは白目をむいた状態で、ぶつぶつうわ言を言い始めている。
見るからに危ない人である。
追い出されるどころか、捕まるかもしれない。
駆け出し冒険者が武器屋さんから出禁になるのは非常にまずい。
へっぽこ武器をたしなむという楽しみが減ってしまう!
彼女の呪いを解呪しなくっちゃ!
それも、一刻も早く!
「聖なる猫よ、我に呪いを解く力を!」
私は猫魔法【
これは何を隠そう、私専用の解呪魔法!
実家の猫が再会のたびに頭突きしてくるのをヒントに開発した魔法なのである。
前にいた勇者パーティーには聖女がいたから、使う機会はあんまりなかったけど。
しゃきゃああああああ
詠唱を終えると、変な音をたてながら私のおでこが光り始めるッ!
「えいっ!」
私はライカの背後から近づくと、腰のあたりをどすんと頭突きする。
うむ、良い感触。手応えあり。
良い子は頭突きなんてマネしちゃダメだよ。危ないからね。
「ひきゃん!?」
ライカはまるで犬が尻尾を踏まれたときみたいな声を出すと、そのまま床にぶっ倒れる。
ぴくぴくぴく、しばし痙攣。
「……あれ? お師匠様、私、なにかやっちゃいました?」
目をさましたライカは腹立つことを言いながら立ち上がる。
顔色はすっかり戻っていて、文字通り憑き物が落ちた様子。
どうやら自分が呪われていた自覚はないらしい。
やっちゃいましたじゃないよ、まったく。
「でぇええ、私、呪われてたんですかぁ!? うそぉ、信じられません! お師匠様の『壊セ壊セ、全てを破壊スルノダ』って声が聞こえてきただけなんですよっ!? いかにもお師匠様が言いそうじゃないですか!」
「言うか、そんなことっ!!? 君は私を何だと思ってるんだね!?」
なんとか呪いが解呪できたようで一安心……などと思っていたら、ライカがとんでもないことをぶちこんでくる。
「……破壊魔ですかね?」
「んなわけ、あるか!」
私のことを危険思想の持ち主だとでも言いたいのかね。
私はただ冒険者ギルドの水晶玉をグレーゾーンから攻めただけだよ。
人聞きが悪いなぁ、全く。
「ふぅむ、この杖が全ての元凶みたいだね……」
とはいえ、一番悪いのはこの杖なのである。
私は呪いに耐性があるので、それを試しに素手で触ってみることにした。
見た感じは普通の杖なんだけどなぁ。
すると、どうだろう。
私の頭の中にも、かすかに『魔法は爆発だぁあああ』などという不謹慎な声が聞こえてくるではないか。
しかも、うちのおばあちゃんの声で。
ちなみに『魔法は爆発だ』はうちのおばあちゃんの口癖である。
この呪いは精神干渉系の類いらしい。
その人の信頼している人物の声で破壊行為を促してくるという悪辣な呪いがかけられている。
もしも私に呪い耐性がなかったなら、騙されちゃうかもしれない。
これってかなり性格の悪い嫌がらせである。
ふぅむ、どうしてくれようか。
【賢者様の猫魔法】
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