???登場イベント
雑踏が戻ってくる。いつの間にかシロは私の視界から消えていた。
『1年3組新谷薫さん至急職員室まで来てください。繰り返します……』
『ッチ、待ってろよ』
「えっ!まって、私の鞄!!!」
【新谷くんは私の鞄を持ったまま、職員室に向かってしまた】
(いやいや、有り得んでしょっ!!)
人の鞄を物質に取って、目の前から消えた新谷には空いた口が塞がらない。
コレで1人で帰ることが出来なくなった。
(どうするか。とりあえず教室には戻りたくないのだが……)
教室に戻ると、いや戻る途中で起こる“いべんと”なのだが。
天田一星。2年生の天文学部、部長。
ペリドットの瞳と髪をもつ男は人間ではない。厳密に言うと地球の生命体ではない。
天田一星は宇宙人。しかも地球を侵略しようとしている宇宙人。
“天田一星の登場いべんと”は彼が母国と連絡を取っているところを目撃してしまうのだ。
(さてと、ここで大人しく待ってるのも癪だなぁ)
私の視線の先にあるのはT字路のようなもの。
真っ直ぐ進めば教室がある校舎。来た道を戻れば新谷が向かった職員室や生徒会室がある校舎。
教室に近づくのは、天田一星と遭遇する危険があるので避けたい。かと言って来た道を戻るのも新谷を迎えに行くようで嫌だ。
「この先は、図書室とか保健室がある校舎だよね」
そう呟いて、私は保健室にはまだ1度も言ったことが無かった事を思い出す。
この学園で私が怪我をする場合。到底保健室などでは収まらない怪我が多いのも理由だろ。
特に理由はないが、私は好奇心で保健室へ行ってみる事にした。
―――――――――
「失礼します」
一応声をかけて、そっと中を除く。
白を貴重に清潔感が漂うその部屋は、ほんのり消毒の香りがした。
壁には食育のポスターや怪我にまつわるポスター。
人体の構造についてのポスターなど沢山貼られているが、不思議と圧迫感はない。
(思ったよりも、ちゃんとしてる)
“私”が訪れない場所はどうも曖昧に出来てる様な所があるこの世界で以外にもちゃんと、体が悪い者が訪れる場所として成立している。
「おや?どうされました」
入口付近に突っ立ていると、背後から声がした。
振り向くと、白銀の髪と瞳をした白衣の男が立っている。
「シロ??」
先程まで話していた、シロとその姿が重なる。いやシロの服装は白衣の様なのであって。もっと複雑でおかしな服だけど。
「ああ、〈さかずき〉と読むんです」
私の呟きを聞き、その男は首から下げている名札を持ち上げた。そこには、白理人と書いてある。
「難しい読み方でしょう?私、〈さかづき、りひと〉この教室の主人です」
男は少しふざけたように笑った。
その笑顔の破壊力に私は頭がクラクラするのを感じた。
(ッッこの顔面偏差値、そしてこの脳みそを溶かすような声。嫌な予感しかしない!!どういう事よシロ!)
私は今ここにいない、シロに悪態をつく。 こうりゃくキャラは全部で4人だったのでは無いのかと。
(次にセーブが、来たら問い詰めてやる)
「それで、体調が悪いのかな?」
白に顔を覗き込まれて、私は後ろに飛び退いた。こいつがなんなのか分からないけど、この“世界”で顔のいい男にろくな奴はいない。
「いえっ、保健室の中見てみたかっただけなので!さようなら!!」
そう言い残して、私は教室を後にした。
嵐のように去っていったのをて、白がクスクスと笑っていたのに私は気が付かないままだった。
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