ティヒー・ダウン

菅原道磨

旧い思い出

「きっと何者にもなれないおまえたちに告げる」

 テレビアニメのセリフは、妙に生々しく、僕の心に刺し込んだ。


「何になりたいか」と、僕はむかしからずっと聞かれてきた。

 その問いに答えることは一度もなかった。

 そしてふと気づく。

 答えられない問いには、問い返せばいいんだ。

「何かにならなきゃいけないの?」

 そして、何かにならなくてもいいんだと聞かされた。


 なるほど。

 僕のことを、皆は必要としないんだ。


 しかし、こんな話も聞かされた。

「この世界は選ばれるか選ばれないか、選ばれないことは死ぬこと」

 この言葉こそ、この世最大の理不尽に思えた。

 故に決意した。

 誰かに選ばれなくても生存する戦略を見出すこと。

 そのためならどんな手段も厭わない。

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