伝説サポーターは、凡人だけのメンバーで最強パーティーをめざす。

さきはひ

第1話 大丈夫。なろう系の異世界だよ

 最近、なろう系というのが流行っているらしく、僕は、異世界に来たくなかったのに来てしまった。


 正直、あまり興味がなかった。だから西洋ファンタジー風な村や町を歩いても、最初は心躍らなかったのは言うまでもない。もし別な世界に行けるのなら、迷わずそっちを選んだことだろう。


 しかし、異世界に来てしまった以上は、仕方がない。


 はじめは好きではなかった世界だが、何日か過ごしているうちに、だんだん考えが変わっていった。


 青い空の下に広がる、のどかな野原。


 山から風が吹いてきて、海へ抜けていく。


 川のせせらぎ、鳥のこえ。


 そういった自然の力で、風車や水車が回っている。畑では作物を栽培しているものの、稲作も行われているらしく米も食べれた。


 一見ヨーロッパ風に見えても、文化や歴史、自然環境は現実とは異なるらしい。快適な住処があって、美味しい食べ物がある。この上は、無理して帰る必要もなさそうだ。


 この機会に、己自身を見つめてみることにした。


 主人公の役得なのか、ステータス全般が高く、さらに技を習得するためのスキルポイントも大量にあった。

 せっかく能力値が高いのに、何もしないのでは宝の持ち腐れというものだ。


 僕は少年の心を思い出し、自分の欲しいと思った技を、片っ端から揃えていくことにした。


 僕が極めようと思ったのは、戦闘を支援する魔法や特技――いわゆるサポート系の技――だ。


 別段、奇をてらったつもりはない。昔からゲームなどをやる時は、こうすることが多かったというだけである。


 それに、多分だけど、最近の異世界ではそう珍しいことでもないのだろう。


 現実世界で生活していると、よくなろう系の話が耳に入ってくる。それによると大半の主人公たちは、チートと呼ばれるほど強力な攻撃技を持ち、他を圧倒する強さで無双しているそうだ。


 しかし中には、あえて防御力だけ高くしてダメージを受けなくしたり、運だけ良くしていいことが起こるようにした例もあるらしい。アタッカー(攻撃役)でなくても、或る分野を極めれば充分に活躍できるということだろう。


 そこで、僕も聞きかじった知識を参考に、自己育成してみることにした。


 まずは、肉体と魔力の強化。

 次に、HPや状態の回復。


 これで、苛酷な環境下でも、生き残れる確率がぐっと上がる。


 それから、敵を弱体化する技の数々。


 敵の弱体化など、普通は攻撃を助けるだけでオマケ程度だと思うかもしれない。だがなぜかこの異世界、この手の技がとても豊富だった。


 各種の状態異常(麻痺、毒、眠りなど)はもちろん。

 特殊な心理状態(混乱、魅了、狂化など)を引き起こす精神干渉など、その種類は多岐に渉る。


 この領域に、僕は可能性を見いだした。




 使いきったスキルポイントを貯めるため、村の外に出てみた。のだが。


 はじまりの村だけあって、モンスターは弱く、倒した時に得られるポイントも低く、これだと日が暮れてしまう。


 かといって、準備が整う前に先へ進むのも不安だ。


 しばらく考えていたところ。


 村の南に湖があるのだが、水面を渉る移動魔法を使うと、これを越えられることが判明した。


 岸に上がると洞窟があり、

 いかにも『私は序盤では倒せない強いボスです』といったナリの門番が通せんぼをしていた。


 そこで、予めステータス強化をかけておき、


 戦闘開始と同時に、眠り、麻痺、凍結などで動きを止め、


 毒・火傷・呪いをかけて、複合効果でじわじわとダメージを与えていったところ、


 何もさせることなく、完封して退治することに成功した。


 おかげでとんでもない経験値が僕に入り、レベルは一気に3桁を突破。それからはダンジョンの中を、少しずつ探索していった。


 1匹倒しては回復し、ジワジワと進んでいく。

 時間をかけたおかげで、基礎パラメータもずいぶん強くなった。



 そうして修行を重ねてるうちに、見たことのない画面が開かれた。


 どうやらこの異世界、獲得したスキルを極めると、新しい技へ進化&分化していくらしい。

 それらを組み合わせることで、また新たな魔法や特技を習得していく。


 そうしてオリジナルな攻撃技をも会得し、

 気づけば隠れダンジョンの高レベルモンスターたちも難なく倒せるようになっていた。




 これで、冒険の準備は完了だ。

 はじまりの村で充分に修行したので、旅立つことにした。


 普通なら、『そんなに上手く行くものか?』と怪しまれるかもしれない。

 でも、大丈夫。なんとかなるのだ。なぜならば。



 ここは、なろう系異世界だからである。



 ---注意事項---

 ・作者はなろう系作品について、あまり詳しくありません。日常で耳に挟んだ話や、書店で見かけたタイトルなどを参考にイメージで書いているため、実際の内容とは異なる可能性があります。


 ・こちらは電撃大賞に応募予定の原稿の合間に書いた、リハビリです。万が一人気出たら続けますが……まずありえないと思うので、数話で更新止まる可能性高し。

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