人生観察員

藤間伊織

File.11527……

あ、今日もいる。

人生観察員。


「今日は何してるんですかー?」


答えが返ってこないのは俺の3歳の誕生日で話しかけてから知っている。

それでも謎の存在というのは面白いの一応で声をかけてみる。


「あ、こうくんの人生観察員。久しぶりに見たー」

「ねー、俺のプロポーズ以来だっけ。久しぶりだねー」


俺たちは並木道を歩いていて、人生観察員は木陰から見ている。


「こうくん、人生観察員いるの、ほんと羨ましー」

「あはは、そうかなー?」

「そうだよー、子供のころからでしょ?高ステータスすぎるよ!」

「んー、でももう慣れちゃったよー」

「すごーい!」


人生観察員は重要ステータスだ。俺の生まれる少し前からサービス開始したらしいが、今ではすっかり人生観察員の価値の高さは常識で、サービス料金も段々高くなっており、最近は一流芸能人でも手が届きにくいものになっている。


「でも、人生観察員がいるってことは何が起こるんだろうねー?」

「なんだろ……でもきっとすごいことだろうね!」

なんせ俺はエリートなんだから!


ゴッ!

鈍い衝撃。


「え?え?こうくん?」

彼女の声が薄らいでいき、俺の視界も完全に暗くなった。

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