第24話 前夜

この世界の人族は、人間と亜人、獣人、魔族に大半を分けることが出来る。

ただ、稀に蛇人や神人などの人族が居るが、数は非常に少ない。

イシスの様に、人間と神人を上位種と定義してそれ以外の下位種として差別が蔓延している国もある。

召喚されたての頃は、気にもしなかった。

街中で鉄の鎖に繋がれた人々がただそこに居るだけ。何か罪でも犯して捕まっているのだろう。そうしか思わなかった。あの夜までは…。

だがあの夜、全てが変わった。

血まみれで、今にも死にそうだったあの夜。

宿の部屋で、いきなり扉から部屋に入ってきた騎士団に突然斬りかかられた。誰かに操られていると思い、魔法で眠らせた。襲いかかってきた騎士全員を眠らせ終わった時、セルカが目の前に現れた。事情を聴こうとしたら、セルカに斬りかかられた。「この国に仇なす召喚者は、直ぐに処分する。」と真顔でセルカに言われた。そんなセルカを見て恐怖に包まれた。訳が分からず殺されそうになる程怖いものはない。そう思った。セルカに気を取られていると、後ろから黒いローブを被った誰かが、屋根から降りてきた。それに即座に気付いたカイは、振り返り際に切り掛かった。だが、それは避けられてしまい、黒いローブ姿が持っていた小刀に心臓の少し横を刺されてしまった。そして、それによってカイが怯んだ隙を見て、セルカが後ろから背中を剣で突き刺した。剣はカイの溝内部分を貫通した。セルカは刺した剣を引き抜き、部屋を出ようとした。去り際に「死ね、役に立たない召喚者。」と言い残して、部屋を出ていくセルカを見ている景色が、だんだんと外側が暗くなり始めた。そして、景色が真っ暗になった。

目が覚めると、見慣れたテントの天井とその横にレノアの姿があった。

「大丈夫ですか?かなりうなされていた様ですが…」

「あぁ、大丈夫。ありがとう。」

「なら良いのですが…」

カイは起き上がると、テントの外へ出た。

「今日もあの夢を見た…。」

そう呟き、朝食の準備をする。

カイ達は朝食を終えると、武具と少量の食料をカバンの中に入れた。

「レノア、行ってくる。お前はここで待っていてくれ。日暮には帰る。」

「どちらへ?」

「エレナントに行ってくる。」

カイはそう言い残して、テレポートスキルを使ってテレポートした。


エレナントの上空500m…

「さぁ、始めようか…」

カイの手のひらが青く光出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る