第3話 城下町

朝の8時くらいだろうか、メイドが起こしに来た。

「おはようございます。朝食の準備が出来ております。お着換えのお手伝いを致しますので、起き上がられましたらわたくしの前にお越しくださいませ。」

「い、いや、一人で着替えられるんで大丈夫ですよ!?」とカイは焦った。

「な、なんか、王城って…すごいね」とリーシアがいうとみんながうなずいた。

「ってかこれが朝食って、なんか想像以上だな…」ジャンが口ずさんだ。

食事が終わって少ししたら、兵士がきて「王がお待ちです。これから玉座の間にご案内いたします。」と王様のもとへ向かうことになった。

玉座の間は、かなり広かった。衛兵が角や壁伝いに均等な距離で配置されており、奥には玉座があり、そこに王様が座っていて、その隣に昨日の大臣がいて、少し空間を開けてその前の方に貴族と思われる人々が20人位並んでいた。

「よくぞ参られた。皆のもの、彼らが召喚に応じた勇者達である。」と王様が話すと、一斉に歓声が上がった。「おお、これで我が国は安泰ですな!!」。「これで一安心ですな!! はっはっは!!」。

「さて、皆に集まってもらったのは、彼らを紹介するとともに、彼らがおぬしら領内のギルドや検問など様々な手続きを勇者殿達には免除してほしいということを話しておきたかったのと、もう一つ。先月起きた魔族によるセルドバ侵攻の時、一般の冒険者達にも協力してもらって何とか住民の全滅だけは避けられたが、あの時もっと連携をしておればもっと被害を押さえられたように思う。そこで、勇者達が救援に駆け付けられるとき、彼ら単独で最前線の守備隊の1分隊として動いてもらいたいと思うのだが、それについて、おぬしらに意見を聞きたいからである。」王様の言葉で、玉座の間が一瞬にして緊張感のある空気に代わった。

「王様、それは確かに妙案ではありますが、勇者達単独での行動になりますと、かなり危険ではないでしょうか?」と貴族の意見に、「最終的には、魔王討伐に赴いてもらうのだ。それくらいはこなせるようになってもらわねば困る。」と王様が返した。

そして、「まぁ、この話はここまでにするとして、勇者達よ。我々はこの後の流れについて話し合う。貴殿たちは、そこにおる騎士団の騎士長のセルカとともに城下町の見学でもしてから、闘技場に赴き、訓練するといい。」と言われた。

「はっ。それでは勇者様方、こちらへ。」と女騎士に言われた。

王城の廊下を歩く中で自己紹介された。「私はセルカ。騎士団の騎士長をやらせてもらっている。」。

セルカは身長175cm程の金髪のポニーテールに青い目で各部に白い鎧を纏っている女騎士だった。

「闘技場に向かうって話だったけどどれくらい歩くの?」とリーシアが聞いた。

「だいたい15分くらいかな」。

結構近いらしい。

王城の門を出ると、そこは、なだらかな下り坂になっていて、城下町もそれに沿って作られていた。町は人族で賑わいを見せている。

王城の門から少し歩くと川にたどり着く。

「ここがガイア川。この川の周りに食べ物の店や宿が集まっている。」セルカが説明した。

大きな橋を渡ると、馬車がこちらの方に向ってきた。布をかけられていたので積んでいるものは分からなかったが、変なにおいがした。

「ここは劇場が集まっている場所。5か6くらいの劇場があるんだったかな。劇場によってやっているものが違うから自分の好みな物が見つかると思うよ。今度空いた時間に覗いてみるといい。」。

「セルカさんもよく来るんですか?」。とカイが聞くと、「私は鍛錬で疲れた後の自分へのご褒美でよく来るかな。」。町を見ながら歩き続けて歩いて行った先に大きなイタリアのコロシアムみたいな建物が姿を現した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る