ミス.ブラックの意のままに
ゴキヴリメロン
第1話 企業戦士とプロローグ
お盆を3日後に控えた今日。坂下商事に勤める森下は、夏風邪で倒れた同僚の穴を埋めるべく、上司で変人の田代と二人きりで残業していた。森下と田代は、十年来の付き合いである。
「田代さん、そろそろ休憩しませんか。この調子なら納期にも間に合いそうですし」
「よし...そうだな」
パソコン越しに、返事が返ってくる。
「コーヒーかエナジードリンクか、どちらにします?」
「両方」
この坂下商事でも、近年の流れを受け、かなり労働環境が改善された。以前はサビ残が当たり前だったのが、今では滅多に残業を強制されることはない。それでも、未だに会社の自販機にはエナドリ各種が堂々と連なっているのが、この会社らしいというかなんというか。
「森下、お歯黒べったりって、知ってっか?」
田代が、コーヒー缶を揺らしながら、聞いてきた。
いえ、あんまり、と答えながら、自分もコーヒーを
「歯が黒い妖怪だ、というくらいしか」
「そうだよな...」
少しためらうような間があった。
「いや、俺のダチの話なんだが、そいつも俺らと同じサラリーマンだったんだが」
やけに神妙な面持ちで、続けた。
「あの日も、今日みたいな夜、終電を逃しそうになるまで、残業をしていた夜」
俺は、やつの顔を見ちまったんだ
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