第6話  里山暮らし

翌朝パパはトラックを返却して、自分の車で帰ってくるため東京へ向かって出発した。


「さあ志音ちゃん、ダンボール箱を開けて整理しましょう。住みやすい素敵なお家にしましょうね」


「うん、志音頑張るよ」ニッコリ頷いた。


木の香りと明るい光の中で二人は荷物の箱を開け、あちこちへ収納したり飾り付けたりしている。


『ピンポーン』玄関のチャイムが鳴る。


志音がドアを開けるとビニール袋を下げた真人くんがニッコリと立っている。


「あっモヒくんが来たよ」志音は嬉しそうにこちらを見た。


「おはようモヒくん」志音は笑顔で迎える。


「おはようございます」真人くんはペコリと頭を下げた。


「あら真人くんおはよう、昨日はありがとうね、珈琲でもいかが?」


「ありがとうございます、でも今日は今から出かけないといけないんです。これは母が野菜がたくさん出来たので持って行くようにと…………」真人くんはビニール袋を差し出す。中にはたくさんの新鮮な野菜が入っている。


「え〜!こんなにたくさん頂いていいいのかしら」私は少し驚いた。


「大丈夫です、食べきれなくて余ってるんで是非食べてください」袋を渡すとそそくさと帰って行く。


「モヒくん忙しいんだね…………」志音は少し寂しそうな顔をして見送る。


二人はまた荷物を広げ部屋の整理作業に戻った。


「ねえママ…………志音は今夜から一人で寝るの?」不安そうに聞いてくる。


「まだここに来たばっかりで色々と慣れてないから、しばらくは一緒に寝ましょうね」


「やったあ!」志音は嬉しそうに微笑んだ。


窓を開け部屋の換気をした。里山の空気はとても優しく新鮮な緑の香りがする。


「志音ちゃん、咳が出ないね、体調はどう?」


「うん、なんか少し楽な気がする」


「そう、このまま喘息が治るといいね」


「きっと治るよ」志音はニッコリ頷いた。


二人は少し休憩しようとテラスへ出る。そこへ黒いミニバンが坂を登り駐車場へ入って来た。


「あっ、とーたんが帰って来たよ」


「ただいま〜!」


「お帰りなさいパパ」私は手を振って迎えた。


「遅いよとーたん!買い物に行けないじゃん」志音は口を尖らせる。


「ごめんごめん、これを買って来たから遅くなっちゃった」そういうとミニバンの後ろを開けて白いテーブルと椅子を引っ張り出す。


「あら、良いのがあったのね」私はテーブルセットを確認する。


「これでテラスが楽しくなるよ」そう言うとテラスにテーブルと椅子を並べる。


「ふ〜ん、なかなか良いじゃん」志音は早速座ってテーブルに肘をついた。


「じゃあ早速珈琲でもいれるわね」私はキッチンへ向かった。

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