第5話 エピローグ
「落ちてたって……。じゃあなんだ、お前はその落ちてたナイフを拾って、それで
確かに演劇が始まる直前、
「仮に今お前が言ったことが本当だったとして、だったらお前が犯人ってことだろ。お前は知ってたんだろ、落ちていたナイフが本物だって。それを使えば唯人を殺せるって」
「赤城さん、落ち着いてくださいな。固泉さんを犯人とするにはあまりにも不謹慎ですわ。あのとき固泉さんは犯人役でしたのよ。
唯人さん、あのとき中身は
今回の事件の犯人は、固泉さんではなく、犯人役になった固泉さんがそれを拾うだろうと分かって、舞台の上に本物のナイフを置いた人物と考えるのが
桃園の話に暗志木が「確かになの」と頷き、続けて赤城が、
「……そうかもしれねえな。他人の人格をインストールしちまったら、身体を乗っ取られちまったみたいに自由が利かなくなっちまう。すまん、固泉、犯人呼ばわりしちまって」
「いえ、はい、……大丈夫です」
「だけどよ、そうなると、誰が舞台上に本物のナイフを置いたのかって話になるだろ。誰なんだよ、置いた奴は。体育館には俺たちしかいねえし、俺がさっき舞台の上で
桃園は
「撲殺の演劇の後に置いたとなると、それが可能な人物は誰になるかしら」
「舞台に上がった人物なの。唯人と固泉、あとは私も舞台袖に向かうときに舞台の上を通ったの」
「確かに、俺と桃園は二人とも観客席にいたからな。舞台には一度も上がってねえし、ナイフを置くのは無理だ」
赤城は眉根を寄せて難しげな顔を浮かべつつ、続けて、
「唯人が自分でそんなことするとは思えねえし、となると犯人は暗志木か固泉のどっちかってことか?」
「さっきも言ったけど、唯人が自分でって可能性もあるの。唯人が死ぬことを望んでいたかどうかは、唯人以外には誰にも分からないの」
「そりゃそうだけどよ……。俺にはどうしても唯人の奴が自殺なんて、考えられねえんだよ」
今回のは自殺とは少し違うと桃園は思ったが、これ以上は蛇足になると考え、一つずつ可能性を潰していこうと口を開きかけた。
が、事件は思わぬ形で結末を迎える。
「僕です。……僕がやりました」
固泉が自白したのだ。
「前々から彼、樽石君のことを
それを聞いた赤城が荒れに荒れたことは、もはや言うまでもなかった。
殺人を演じることで日頃の
となれば、私の心もまた見えない魔の手に
救急車のサイレンが、近づいてきていた。
殺人逃避劇 まにゅあ @novel_no_bell
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます