想像は現実に(原案)

二階の守人

第1話 月下の都市

※縦読み推奨


【月下の都市】


日本。


2030年6月6日


現在時刻午前0:00。


東京。


高く聳え立ち並ぶ、無数のビル。

その狭間に、大通りから1本外れた道路が在った。

昼間にその道を行き交う人々も、今は誰1人としていない。

夜に漂う冷気が静寂によって際立つ。

満月と街灯がビルと道を薄暗く照らし、空を映す。

時が止まってしまったかの様なその道路に、突如、

“揺らぎ”が生じた。

何が揺らいでいるのだろう。

空気か。あるいは重力か。はたまた空間や時空かもしれない。

人は眼でとらえた光と自分の“想像”とを重ねてモノを見るという。

ならば今、目の前で激しさを増しながら広がってゆく“揺らぎ”は貴方の“想像”が曖昧になって生じている、視界の“バグ”なのではないか。

直径170センチ程で“揺らぎ”は膨張を止めた。

揺れは更に激しさを増し、まるで絵の具を水に溶かしたかの様に“黒”が滲んだ。

そして、段々と穏やかになって縮小し、見えなくなった。


――この世にあってはならない存在を残して。


真夜中の東京に、乾いた足音だけが高く鳴り響いていた。

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