時空超常奇譚其ノ六. サイレント・シャウト/あの日の忘れもの
銀河自衛隊《ヒロカワマモル》
時空超常奇譚其ノ六. サイレント・シャウト/あの日の忘れもの
携帯電話が鳴った。松岡智哉は、非通知の着信に「間違い電話か」と呟きながら通話ボタンを押した。途端に、挨拶もなしにいきなり「智哉か?」と電話の向こうで声がした。予期せぬ突然の言葉に「誰だよ?」と問い返すと、声の主はモゴモゴした口調で「ボクだ、ガチャ」と親しげに答えた。
何となく聞き覚えのある、ちょっと挑戦的で愛想のないぼそぼそと口籠る声と、『ガチャ』という名前で電話の相手が小学校の同級生である事を理解した。
「おぅガチャ、久し振りだな。何年振りだ?」
「20年振りだ」
「20年か、早いもんだな・」
「あぁ。そんな事よりお前、今年の盆休みはこっちに帰って来るのか?」
相変わらずのぶっきらぼうな質問に「8月13日に帰るつもりだよ」と答えると、「じゃあ、8月14日ウチの寺の隣にある海老屋で、同窓会やるから午後一時にウチの寺に集合してくれよ。会費は一人3000円、キャンセルは不可。それと、参加者は俺とお前とマッチとミミと浩介の5人だからな」と言った。「何で5人?」と訊く松岡の疑問を放っぽって、電話は一方的に切れた。
ガチャは、800年続く由緒正しい寺の息子で、確か親の後を継いで坊主になったと聞いている。寺の隣には海老屋という割烹料理屋があって、小学生の頃に遠い親戚が経営しているのだと本人が言っていたと思う。
電話を切った後で「あれから20年か」と懐かしい思いがした。ガチャは、昔から愛想のないヤツだったから相変わらずちっとも変わっていないなと感じつつも、一つだけどうしても気になる事があった。あの頃クラスメートは確か30人以上はいた筈なのに、何故5人で同窓会なのだろうか、意味がわからない。
唯一付き合いの続いていて、今はスーパーとなった八百屋の倅の田中真彦に電話を入れた。
「おいマッチ、今ガチャから5人で同窓会やるって連絡があったけど、あれはどういう意味なんだ?それに、何で俺の携帯番号知ってんのかな?」
「悪ぃ。昨日の夜ガチャが突然来て、「智哉の携帯番号教えろ、教えないと末代まで呪い殺すぞ」って言われて教えた。同窓会の件はオレも同じ事言われたよ、5人だけで同窓会って何か変だよな」
「5人ってどういう意味だ?」
「わからんけど、「サイレント・シャウトが聞えた」って言ってた。「何だよ、それ」って訊ねたら、「静寂の叫びじゃ」とか言ってたな」
「さっぱり、わからん。わかるように説明してくれよ」
電話の向こう側で困惑する田中真彦の顔が見えるようだ。
「何の事やら全くわからん。寺の坊主をやりながら海老屋の娘と結婚して今はヤツが経営者だから、店の営業じゃねぇかな?」
「海老屋の娘ってヤツの親戚じゃなかったっけ、親戚と結婚なんかしていいのか?」
「かなり遠いらしいから、いいんじゃねぇかな。結婚してから、檀家全員に「毎年盆暮れに寺で御経上げないと先祖が化けて出るぞ」って電話営業して、御経の後で「海老屋で先祖に料理と酒を供えないと祟られるぞ」って言って脅してるらしい。怪しい壺も売ってるって噂だ」
「そんなのどっかのインチキ新興宗教と同じじゃねぇかよ。まぁどうでもいいけど、坊主丸儲けだな」
「いや、本人は経営者としての才覚だって、自慢そうに言ってたな」
「才覚かぁ、物は言いようだ」
結局、何がなにやらさっぱりわからないまま電話を切った。
◇
かつて、田舎の山々の麓には至る所に戦争の名残りの防空壕があった。その暗く怪しい存在感を漂わせる黒い穴は、まるで蟻地獄のように子供達を惹きつけてやまなかった。子供達は、探検ごっこやら秘密基地遊びと称して山を駆け回り、防空壕はその司令部となっていた。そして、そこには忘却の彼方に消えては現れる異世界が存在すると言われていた。
夏休みに、東京世田谷の成城学園から父智哉の田舎である西伊豆町の実家に里帰りした小学三年生の松岡まゆは、帰宅した父に目を輝かせて言った。
「パパ、お帰りなさい。今日ね、おばあちゃんとミカン狩りに裏山に行ったら大きな穴があってね、おばあちゃんが、あの穴はボウクウゴウって教えてくれた」
「防空壕?」
「それでね、ボウクウゴウの前に夢に出てきた頭の大きなオジサンが立っていて、「おいでおいで」って言ってた」
「夢に出て来た頭の大きなオジサン?あれ、どっかで聞いたような話だな」
「でも、頭の大きなオジサンはおばあちゃんには見えなかったんだよ」
「まゆぅ、アソコにいたのはお化けだよぅ。おばあちゃんも子供の頃には見た事があるし、お父さんの智哉は、あの穴の中であのお化けに遭って、怖くなって逃げて帰って来た事があるんだよぅ」
居間から聞こえた祖母の言葉に、小学生の松岡まゆは「ひゃ」と言って父智哉の背中に隠れ、泣きそうな声を出した。
「パパ、ホント?」
「そうだったかな、良く覚えてないなぁ」
「あそこには子供しか入れないお化けの国があって、そこには怖いお化けが住んでいて、10年ごとに子供を穴の奥へ引っ張り込んで喰べてしまうって言われているんだよぅ」
まゆは、「ひゃぁぁ」と悲鳴を上げて再び智哉の背中に隠れた。
「パパ、穴は知ってる?」
「知ってるよ。子供の頃良く遊んだからね。そうだまゆ、明日穴の探検に行こう」
「やったぁ」
一人娘のまゆが目を輝かせた。都会に住む子供にとって、自然の中に潜む「正体不明の何か」程に胸躍らせるものはない。それは、ものによっては子供に限らず、大人にとってもワクワクする対象だったりもする。
「あっ面白そう、ママも行く。私も子供の頃は妖精が見えたのよ」
「えっ、妖精?」
「そう、子供でも見える子と見えない子がいるらしいんだけどね。ママは空飛ぶ妖精と遊んだ事があるのよ」
「わぁ凄い」
まゆは、一層目を輝かせて母を憧憬の眼差しで見ている。
「お義母さん、お義姉さんも行きましょうよ」
「いやいや、おばあちゃんはお留守番してますよ」
防空壕探検に、父の智哉は幼い子供のようにはしゃぎ、祖母と夕飯の支度をしていた世田谷生まれの母奈緒子も嬉々として加わった。市立病院に勤務する智哉の姉である貴恵は、左右の人差し指で✕を描いている。まゆは、明日父母と裏山の探検に行く事になった。
夜も更けた頃、電話が鳴った。貴恵はぶっ切ら棒に智哉に言った。
「智哉、社長から電話だや」
幼馴染みの田中真彦は社長と呼ばれている。
「おぅマッチ、ガチャもいるんか、わかった今から行く」
電話を切った智哉は、「マッチの家行って来る」と言って三軒隣へ出掛けた。松岡智哉とマッチこと田中真彦とガチャこと北条良雄は、幼稚園から小学校まで奇跡的にずっと同じクラスの悪ガキ仲間で、マッチは酒屋の二代目社長、ガチャは寺を継いで坊主になっている。どうでも良い事なのだが、その頃三人は学校でマッチ、トシちゃん、ヨッちゃんの「たのきんトリオ」と、本人達だけが言っていた。思い出したくない黒歴史だ。
三人で集まるのは20年振り、小学校の卒業以来だった。そんな状況の中で、何故かガチャから「同窓会をやるから来い」との連絡があったのだった。
田中真彦の家で、智哉は改めてその理由を訊いた。
「おいガチャ、何でいきなり同窓会なんだよ?」
「大した理由はない、お前地元に帰らなくなって何年だ?」
「えぇと、中学から高校まで大学の附属で寮生活していて、10年前に22歳で結婚して、子供が出来て10年だから……」
「グタグタ言うな。この20年間、禄に地元に帰ってないって事だろ?」
「まぁ、そうだな。10年前に一度帰って来たけど。そう言えば、その時はマッチとゴルフやったな」
「あぁ、あれからもう10年経つのか、早いな」
「10年に一度しか地元に帰らん者が、偉そうな事を言うんじゃない」
「ま、まぁ、確かにそうだけど」
「だから、呼んでやったんだ。有り難く思え、この罰当たりめが」
「そんな事言われてもなぁ、東京は遠いんだぜ」
「そうだぞガチャ、東京は遠いんだからな。それより、そもそも何で5人だけの同窓会なんだよ?」
「煩い、マッチ。キサマもだぁ、喝ぁつ・」
そう言って、ガチャは根本的な疑問に答える事なく、イビキをかいて寝に入った。
「おい、寝ちまったぜ」
「忘れてた、ガチャって下戸だった筈だ」
「そうなのか、それにしちゃ「タダ酒は美味い」とか言いいながらしこたま呑んでたけどな」
普段から講釈を生業にしているだけの事はありイビキがやたらとデカいが、結局のところガチャが何を言いたいのか、その内容が智哉とマッチには入って来ない。根本的な疑問が宙を舞っている。
仕方なく、寝ている酔っ払い坊主を他所に、智哉とマッチは一頻り杯を交わし、小学生の頃に皆が好きだったクラスのアイドル的存在の女の子が、既に三人の子持ちのオバさんになっていて隣町の駅前キャバクラで働いている話や、別のクラスの可愛かった女の子が、数年前にTVのロケでこの街に来た芸能人を追い駆けて、今は東京にいるらしいとか。真偽の程などわからない面白ろ可笑しい話を酒の肴に、時間の経つのを忘れて話し合った。帰り際、マッチが「そうだ、忘れてた。明日、俺とケロリとカッパで海山カントリーでゴルフやって、その後宴会やるんだ。同窓会はその後だから、お前もゴルフから参加しろよ。朝5時に車で迎えに行くからな」と言い、智哉は「おぅ」と答えて帰宅した。
深夜、智哉が「10年振りのゴルフだ」と浮かれ気分で独り言を呟きながらゴルフ支度をしていると、寝惚け眼の奈緒子が起き出して来て言った。
「智哉君、明日のまゆとの約束忘れないでね」
「ん?あぁ、大丈夫」
笑いながらそう言ったものの、智哉は「ヤバい、忘れてた」と呟いた。
翌日、智哉は久し振りのゴルフに心を踊らせてコースを周り、その後の宴会に突入した。久々に集うゴルフからの宴会は理屈抜きで楽しかった。智哉は、子供の頃に戻ったように昔の仲間達と時間の経つのも忘れ、満ち足りた時を過ごした。案の定、忘れ序に予定していた娘との約束は思い出せず、赤ら顔の上機嫌で昼過ぎに帰宅した。
◇
扉を開けた玄関先に、奈緒子と姉の貴恵と母が青い顔で待っていた。様子がおかしい。状況の掴めない赤ら顔の酔っ払いに、怒りをぶつける赤鬼と青鬼が言った。
「トモヤ、いつまでも何しとったんだ、バカタレが」
「お前がここまでバカだとは思わなかったで」
「智哉君、まゆが、いないのよ、朝はいたんだけど……」
「えっ、まゆが?あっ、きっと裏山だ」
きっと、そうに違いなかった。子供には持って生まれた特性がある。まゆは、子供とは思えぬ聡明さを持っていたが、理屈の通らない事は決して理解しない子だった。今日は裏山に防空壕探検に行く日なのだ。子供には大人の都合や屁理屈など通用しない、それは智哉も知っていた。
時計は昼12時を回っている。智哉は居ても立ってもいられずに「今から裏山へ行って来る」と言って駆け出した。後ろから「智哉君、私も行く」と心配そうな奈緒子の声がした。
智哉と奈緒子は、必死で裏山の麓にある防空壕3B号坑まで走ったが、そこにまゆの姿はなった。
「いない……」
防空壕の内部は、天井も高くかなり広く掘られているものの奥行きはそれ程ない。内部は外からも容易に確認出来る。穴の奥に、他の防空壕にはない不思議な魚の頭を模した石柱が対で立っている。
「あっ、何となくあの時の事を思い出した」
「あの時?」
奈緒子は不思議そうな顔をした。
「そう。俺さ、前にここに来た事がある」
「ここで遊んだって事?」
「いや違う。ここは、昔何か事件があって立ち入り禁止になったんだ。確か、その前にマッチとガチャとミミと、ここに来た。他にも誰かいたな、コースケと、それでどうしたんだったかな。えぇと……」
智哉が頭を抱え込んだその時、背後で数人の聞いた事のある声がした。
「智哉、大丈夫かぁ?」
Tシャツに短パン姿のマッチ、坊主袈裟姿のガチャ、それに確か同級生だったミニスカート看護婦姿のミミが、背の高い警察官と一緒に立っている。
「おぅ、ミミじゃないか。どうしたんだそのカッコ、どう見てもAVのコスプレにしか見えないぞ」
智哉の言葉に、ミミが涙目で訴えた。
「煩い。今日非番の、病院で一番恐ろしい副看護婦長のお前の姉ちゃんに「子供が行方不明になったから速攻で探せ、見つからなかったら殺すぞ」って脅かされたんだよ。知らないだろうけどな、お前の姉ちゃん、怒るとヤクザより恐ぇんだぞ」
ミミの嘆きに、ガチャが言葉を被せた。
「ボクなんかな、御勤めの最中に呼ばれたんだぞ、バチがあたるぞ」
中学時代に智哉の姉の妹分だった看護婦のミミとパシリだった坊主姿のガチャは、涙目で俊哉に訴えている。その二人の後ろに、苦虫を噛んだような顔をした警察官が立っていた。智哉にはその顔に見覚えがあった。
「あれ、お前は……えっと、ビビリのコースケ、そうだ、ビビコじゃねえか?」
「久し振りだな、アカチン」
智哉は小学五年生の時、ミツバチにチンチンを刺されて赤く腫れ上がり、保健室で赤チンを塗られた事がある。その後暫くの間、智哉は「アカチン」と呼ばれていた。
「お前が警察官、お前もコスプレか?」
「煩えな、違ぇよ。街で一番ヤバいお前の姉ちゃんから、警察署長に直接「子供が行方不明になったから直ぐ探せ、見つからなかったら警察署を爆破するぞ」って、脅しの連絡があったんだよ」
「お前が、本当に、警察官なのか?世も末だ」
「何だと、手前ぇ」
遥かな時間を超えて、小学生時代と同じ喧嘩が今にも始まる様相を見せた。
「智哉君、早くまゆを・」
取っ組み合いになりそうな状況の中で、奈緒子が泣きそうな声で智哉を急かした。
「あっそうだ、そんな事をしてる場合じゃなかった。これが俺の嫁さん」
智哉の隣で奈緒子がちょこんと挨拶した。
「で、子供はいたのか?」
「いや、まだ見つからない」
「やっぱり、アレに迷い込んだのかな?」と不意にガチャが言った。
「アレか?」と智哉が言った。
「アレって、アレ?」とミミが言った。
「そうだよ、アレ」とガチャが返した。
「あっ、あぁ、アレか?」とコースケが言った。
「そうなのかな?」とマッチが言った言葉に、「やっぱり、そうだよな」と俊哉が言葉を被せた。智哉とマッチとガチャとミミとコースケの会話を、奈緒子は首を傾げながら聞いている。ビビコとミミが会話に入った。
「それなら早く、魚の頭と呪文、やらなきゃ」
「あっ、そうか。そうだ、思い出した」
五人の不思議な会話から、記憶の深淵にある忘れかけていた奇妙な過去の行動が導かれていく。
「あっ、オレも思い出した。魚の頭と呪文で、不思議の国のアリスに出て来る懐中時計を担いだ白いウサギが来るんだったっけ?」
智哉達の薄っすらとした記憶と、それぞれの記憶が繋がり、いきなり何かが引き出された。
「こっちのはワタシがやる」
そう言ってからコスプレ看護婦のミミが魚の石柱の頭を撫で、もう一つの魚頭を坊主のガチャが撫でた。
「さぁ、出ろ」
ガチャの言葉に、誰もが予想する当然起こるべき事が……起こらない。
「駄目か」
「そうだよ、確かあの時も散々やったけど、何も起こらなかったんだ」
「そうさ、その後もオレとマッチで何度かやってみたけど、やっぱり何も起こらなかったんだ」
「あぁ、そうだ。何も起こらなかったんだ」
「あれは夢か幻だったのか……」
何も起こる筈はなかった。現実が淡い過去の可能性に容赦なく覆い被さって来る。
忘れ掛けた淡い過去は、身動きが取れないまま現実を受け入れざるを得ない。
「違う、あれは全て現実だ。呪文は確かこうだ」
その時、ガチャは四人の主張を否定し、じっと目を閉じたまま聞いた事のある呪文を唱えた。
「出よ白き兎、我等を異時空間の狭間に誘う為に」
すると、突発的なドン・という音とともに時空間が震え、頬を撫でる風に何かが時の彼方から勢い良く走り来るのを感じた。そして、暗い防空壕の中は灯りが点いたように薄っすらと明るくなリ、奥に靄の掛かった空間が現れた。その向こうには、遥かに続いていく灯篭が見える。
奈緒子は、理解を超えた突然の成り行きに驚嘆の声を上げたが、智哉達五人は少しも驚いた様子を見せず、まるで展開を知っているように、じっと懐中時計を持つ白いウサギの登場を待っている。
沈黙の中で暫くの時が過ぎ、後ろから複数の人の気配がしたが、それは皆が待ち望む白いウサギではなかった。ドヤドヤと無造作な足音を響かせ、見た事のある数人の人、子供が智哉達の横を勢い良く通り過ぎ、奥にある靄の掛かった空間に消えた。
一同は首を傾げた。
「何だ、今のは?」
「あの時と違うぞ」
「あの時は、白いウサギだったよな」
「でも、でも、い、今の中にワタシがいた・」
「多分、オレもいた・」
「俺も・」
五人が互いに顔を見合わせた。次の瞬間、何かに身体が引っ張られ、今までとは違う空間に引きずり込まれるような感覚がして数秒間意識が飛び、気がつくと全員が子供の姿になって走っていた。
「あれ、何で子供の姿なんだ?」と智哉が叫んだ。
「わ、私、若返った」とミミは嬉しそうに言った。
「俺達、子供に戻ったのか」とビビコが言うと、ガチャが意味のない妄想を叫んだ。
「やった、これはボクの超能力に違いない。小学生に戻ってスカートめくりするぞ」
子供の姿に戻った事にはしゃぎながら走り続ける五人は、「じゃあさ、先頭を走ってんの誰?」と言ったガチャの言葉に、声を上げて立ち止まった。五人はその意味を思い出した。
今度は、相変わらず掴めない事態の連続に首を傾げる奈緒子が、変化に気づいた。
「智哉君、さっきの先頭を走ってた髪の長い男の子がいない」
入り口から元気いっぱいに先頭を走っていた男の子がいなかった。それが何を意味するのか、その意味を智哉達五人は知っている。
五人にとっては、20年前のあの夏の日に起こった決して忘れる事の出来ない、だが必死で藻掻きながら意識的に忘れようとしていた記憶、過ぎ去った記憶を、今呼び覚ました。
「そうだ、思い出した、俺達って人殺しなんだよな……」
「あぁ、そうだよな」
子供姿の智哉とマッチが大人びた声で唐突に言った。
「違う、私等はやる事はやったじゃん」
子供姿のミミが智哉とマッチの言う何かを否定した。
「そうだよ。あの時、俺達はやる事はやった」
「親にも学校にも警察にも、知っている事は全て話したよな」
「そうさ、俺達は全部話して警察と現場検証して、やる事はやったさ」
智哉は四人が肯定しようとする全てを否定するかのように自戒を口にした。
「でも、あいつは見つからなかった……」
「そうだ、そしてこのトンネルはあの時以来一度も開く事はなかったんだ」
「あの後、何度も何度も魚の頭を撫でたけど開かなかった。あの時からオレ達の時間は止まったままのような気がする」
智哉とマッチ、ミミ、ビビコの声が悲しそうに告げた。
「だから、だから、ボク達のせいじゃない」「そうだよ。ワタシ達のせいじゃない」
「そうさ。あれは、お前等のせいじゃない。俺だ、全部俺のせいなんだよ」
智哉は何かを一身に背負いつつ、それを消化出来ていない。それはミミやマッチやビビコ、ガチャも同じだった。
マッチは、一人全てを呑み込もうとする俊哉を宥めるように言った。
「違うぞ智哉、確かに俺達は結果的に人殺しかも知れないが、お前のせいでも誰のせいでもない。あれは事故だ」
智哉を擁護するマッチは智哉の言葉を否定したが、それは智哉の自戒を超越出来るものではない。
「いや、違わないさ。あの日、俺がアイツを誘わなけりゃ、アイツは死ぬ事はなかったんだから……」
ミミは感情と理屈のカオスの中で、どう表現したら良いのかわからない葛藤を口にした。
「違うよ、死んだかどうかだってわからないじゃない。行方不明になって、未だに発見されていないけど、でも、それは智哉一人のせいじゃない……」
そう叫ぶミミは溢れる涙を止められない。
「いいんだよ皆、それもこれも全部オレのせいなんだから」
智哉は、頑なに四人の言葉を否定した。
「智哉君、どういう事なの?」
そこで展開される話についていけない奈緒子は、智哉だけではないそこにいる全員の言葉に不倒翁のように絡みついた「あの日」。糸を引く粘々とした泥のような何かを感じざるを得なかった。
「昔……」
智哉は「あの日」を語り出した。
◇
20年前、智哉達のクラスに東京から浅木タクヤという転校生がやって来た。髪の毛の長い都会的な雰囲気のあるクリクリとした目が印象的な男の子だった。慣れないせいなのか休み時間にはいつも本を読んでいて、智哉が「お前、何読んでんの?」と訊くと「不思議の国のアリス」と答えた。何となく田舎に馴染めていないように感じた智哉は放課後の探検ごっこに誘った。
智哉とマッチの家が三軒隣だった事や田舎の小さな街なので20分も歩けば大概誰の家にも行ける程だった事もあり、その頃の五人はどちらかと言えば仲は良い方だった。ガキ大将の松岡智哉と羽沢浩介の関係も、授業中だろうが朝礼で校長先生が有り難いお話をしている最中だろうが構わずに取っ組み合いのケンカを始める関係ではあったが、不思議と仲が悪い訳ではなかった。羽沢浩介は母親が芸能人らしいと噂されていたが詳しい事は誰も知らなかった。西川美海は、美人で男勝りで弁も立ち、女子だけでなく男子にも一目置かれていた。
「煩ぇ、智哉のアカチン野郎」
「やんのか浩介。手前ぇ、昨日神社の祭りで隣町の中学のチンピラにケンカ売られてビビって逃げたらしいじゃねぇかよ?」
「中学生七人相手に勝てる訳ねぇだろよ」
「手前ぇがビビりやがったのは間違いねぇだろ、ビビリの浩介」
「煩ぇバカ」
「何だと」「上等だ」
今にも取っ組み合いの恒例行事が始まろうとした時、二人の目前をガチャ、ガチャと音を立てて歩く小学生のランドセルから数枚の細く長い木製の板が落ちた。
「おい良雄、ガチャガチャと煩ぇぞ」
「そうだぞ、墓に立てる卒塔婆なんか学校に持って来る小学生がどこにいるんだよ」
「何だと、キサマ等。ボクは家の手伝いで大変なんだ、お前達みたいなバカとは全然次元が違うんだよ」
「何だと、この野郎」
「そうだぞ、手前ぇからぶっ飛ばしてやろうか」
「まぁまぁ、ワタシと違ってお前等は全員がノータリンなんだからさ、ノータリンはノータリン同士仲良くしなさいよ」とミミが仲裁に入ると、「誰がノータリンだ」と三人が同時にツッコミを入れた。
ガチャと呼ばれた北条良雄は、街外れにある800年続く由緒ある寺の一人息子で、小学生にして「将来は寺の坊主になる」という未来設計が確定している。本人もその気十分で、毎日々が修行中なのだと言っていた。しかも自分の事を超能力者だと本気で信じていて、ランドセルには教科書の代わりの経本と超能力入門書、更に卒塔婆が数本入っていて、走るとガチャガチャと煩い。
放課後、智哉はタクヤに言った。
「よぅタクヤ、俺達今日秘密基地で怪獣探検ゴッコやるんだけどさ、お前も一緒に来ねぇか?」
青白くひょろっとした転校生のタクヤは、ちょっと嬉しそうな目をして言葉もなく頷いた。秘密基地での怪獣探検ゴッコは特別何かをする訳ではなく、裏山の防空壕に勝手につくった秘密基地の中で智哉とマッチ、ビビコとガチャの四人で怪獣対戦をした後、2B弾とロケット花火と爆竹とねずみ花火を投げ合って戦争ごっこをするだけの単純な遊びだった。アカチン智哉とビビコ浩介は学校では顔を合わせては殴り合いのケンカをするのだが、それは学校でのストレスの解消なのだと本気で思っていて、本気で殴り合った放課後も何もなかったように一緒に遊ぶ事が多かった。
智哉、マッチ、ビビコ、ガチャの四人が裏山の秘密基地の入り口に着いた時には、もう麦藁帽子を被ったタクヤが自前のゴザを持って立っていた。何故だか誰も誘っていない筈のミミもいる。
「ミミ、なんで女のお前がいるんだよ」
「そうだぞ、女は入っちゃダメなんだぜ」
智哉の文句にマッチが言葉を被せた。
「ノータリン共のくせにグダグダ煩いな。タクヤ君が来るって聞いたから、ワタシが女子代表で来たんだよ。ワタシが来ちゃ悪いのかよ?」
タクヤは女子の間では密かにファンが多く、アイドルのように見られていた。
「誰に聞いたんだよ?」
「ガチャだよ」
「ガチャ、秘密だって言っただろうがよ」
ビビコの怒りに、坊主の息子が反論した。
「煩い、ミミは美人だからいいんだよ。文句あんのか、やんのかコラ。ボクは、超能力者なんだぞ。死んだ人と話が出来るしこの世に呼べるんだぞ、スゴいだろ。お前等なんか死んだってゼッタイに呼んでやんないからな」
ガチャは訳のわからない事を言って、ランドセルから卒塔婆を抜いてチャンバラのように構えた。何と罰当たりな、きっと天罰が下るに違いない。智哉が呆れ顔で話を切った。
「あぁ、もうどうでもいいよ。今から怪獣ゴッコを始めるぞ。俺たちの銀河系から150光年離れたナハハ星から怪獣ガチョンが地球征服にやって来た。俺達は銀河を守る地球防衛軍。今日はガチャ、お前が怪獣役だ」
「何でボクなんだよ?」
不満を垂れるガチャの隣で、空想劇に配役のないミミが鼻で笑い茶化した。
「何が怪獣ガチョンだ、何が地球防衛軍だよ、ノータリンのバカガキ共が」
「あぁあ、やんなっちゃうよな。だから女は嫌なんだよ、夢がなさ過ぎる。想像しろよ、想像をよ」
「バカじゃないの、下っだらない」
「やんのかコノ野郎」
相変わらずガチャが卒塔婆を構えている。ミミと、序のガチャとの言い合いに辟易顔をした智哉の後ろから大きな声がした。
「聞こえる」
タクヤの声だった。防空壕に持ち込んだゴザに静かに座っていたタクヤは、智哉達の掛け合い漫才など聞く耳持たず、いきなり奇妙な事を言い出した。
「この魚に違いない」
タクヤはドラマの主人公のように、防空壕3B号坑の内部に立つ二本の石柱を指差しながら台詞のように言った。
「聞こえるんだよ。夢に出てきて僕をここに導いた頭の大きなオジサンの声が、この魚頭の石柱から聞こえるんだ。それはきっと僕に何かを告げているに違いないんだ」
「頭の大きなオジサン?」「導いた?」「声?」「?」
何を言っているのか、地球防衛軍の誰一人として理解出来る者はいない。タクヤは続けた。
「その声は、「二つの魚頭をこすると、不思議の国のアリスに出てきた懐中時計を担いだ白いウサギが出てくる」と言っている」
地球防衛軍の隊員達は、突然の状況の変化に首を傾げてた。
「不思議の国のアリス?」
「懐中時計のウサギって何だ?」
「何だ、それ?」
「東京モンの言う事はわからねぇな」
自称地球防衛軍の司令官ガチャと防衛隊員達を放っぽって、タクヤの不思議な呟きが続いた。
「その声は、ボクに宇宙の真理を囁く」
タクヤは確信をもって防空壕の奥にある魚の頭の石柱を触りながら「出よ白き兎・我等を異時空間の狭間に誘う為に」と呪文を唱えた。すると、ドンという音とともに空気が震え、暗い防空壕の中は薄っすらと灯りが点いたように明るくなり、奥に何か違う空間が見えた。更に、入り口空間から現れた懐中時計を担いだ白いウサギが一目散に奥の不思議空間に向かって走って行く。智哉達は驚きに声も出ない。
「ほらやっぱり出ただろ。皆、行くぞ」
タクヤは当然とでも言うように先頭に立ち、驚きを隠せない一同を置いてけ堀にしたまま、薄っすらと明りの灯る奥空間へと向かって駆け出した。
智哉は意外だった。女子に密かな人気者になってはいるものの、毎日々教室で本を読みながらつまらなそうにしている転校生のタクヤが嬉々として先頭を走っている。
きっとタクヤは元々こういうヤツだったんだ、と思うと智哉はちょっと嬉しい気持ちになった。
「行くぞ皆、僕について来い」
タクヤは勇んで懐中時計を担いだ白いウサギを追った。智哉達は驚いて目を白黒させたまま、先導するタクヤの後ろに続いて異空間へ飛び込むしかない。異空間はどこまでも続くトンネルのような形で所々に松明があり、その灯りが遥か遠くまで続いて見える。
「これは夢かな?」「多分な」
智哉の独り言にマッチが相槌をち打った。
「皆、大丈夫か。バラバラじゃなく、固まって歩けよ」
「智哉、暗くて良く見えねぇよ」
「何も見えない」
「あぁん。タクヤ君ぅん、どこにいるの?」
「ヤバい、お化けが出そうだ」
智哉、マッチ、ビビコ、ガチャ、ミミ、それにタクヤの六人が迷い込んだ異空間のトンネルの先方の側面に横穴が見える。穴には趣味の悪いピンク色に光る扉があり、その前にヒトのような、そうでないようなオッサンのような何かが立っている。ヒトのような姿をしたその生き物は、六人に向かって唐突に叫んだ。
「ここは亡ノ国、我が輩は国王である。お前達は何者か?」
「何者って言われてもな・」
智哉が戸惑っていると、その生き物が「控えろ」と声を荒げた。驚いて近づくと、その生き物の姿が黒いタキシードを着た丸ハゲのデカい頭に黒い口髭を蓄えた浅黒い顔色のチビの、正にオッサンである事がわかる。
それまで糾弾でもするかのように騒がしい口調で叫んでいた六年生の地球防衛軍。その面々よりも背の低いハゲのオッサンは、六人の中にタクヤの顔を見つけると、急に掌を返して猫なで声を出した。何やら胡散臭い。
「そうか、そうか、良く来た。ここに来た土産に、特別にグリコのアーモンドチョコレートと森永のキャラメルをやる。その部屋に山程あるから好きなだけ持って行け」
「アーモンドチョコレート?」「キャラメル?」
「タダならもらおうぜ」「ホントにタダなのか?」
「当然タダじゃよ」
チビハゲのオッサンは、そう言って薄ら笑いを浮かべた。本質的にはタダ程高いものはないとわかってはいても、現実的には子供がチョコレートとキャラメルの誘惑に勝つ確率はかなり低い。
「やったぜ」「やったぁ」「やったぁ」
その時、我先にと勇んでその部屋に入ろうとした六人の背後から声がした。
「ダメだ」
聞いた事のない子供の声だった。ちょっと上ずった叫びのようにも聞こえる。
声の方を振り向くと、黒地にオレンジ色のGマークのついた野球帽を被った俊哉達と同じくらいの歳の男の子が立っている。小さな街の小学校だから知らない子供などいない筈なのだが、その子供に見覚えはない。
「絶対にその部屋に入っちゃダメだよ、その部屋に入ったら二度と出られなくなる。チョコレートもキャラメルも全部ウソだ、そいつは子供をその部屋に閉じ込めて喰う悪い化け物なんだよ」
先頭の俊哉が立ち止まり、Gマーク野球帽の男の子に訊いた。
「誰だよ、オマエ。化け物ってどういう意味だ?」
野球帽の男の子が語気を強めた。
「そんな事はどうでもいいから、皆このまま大人しく家に帰れ」
六人は意味がわからず、かと言って先頭の俊哉が閊えていて部屋にも入れず、後ろを振り向いたまま立ち尽くしている。
突然の少年の登場と予定外の成り行きにチビハゲは驚き、そして何故か激怒した。
「邪魔をするなクタバリゾコナイめ、とっとと消えろ」
「確かに、このオッサン悪人顔してるよな」
「そうだよな、確かにタダなんて話がウマすぎる」
「人攫いの悪者って事?」「化け物?」
チビハゲは六人の反応に、慌てて繕った。
「違う、違うのじゃ。その小僧は気が狂っているのじゃよ」
「じゃあさ、何でその子はこの部屋に入らないんだ?」
野球帽の男の子が答えた。
「ボクは、そいつにダマサれそうになったんだ」
俊哉は五人を扇動するように言った。
「皆、やめようぜ。話が変だ、変な話には乗るなって母ちゃんが言ってた」
「俺もやめた」「ワタシも」「そうだな」
「ワシの名はホゲットじゃ、亡ノクニの国王、スゴく偉い国王ホゲットじゃ。ワシが言う事が正しいのじのじゃ。その部屋は安全じゃ、チョコレートとキャラメルだけではない、ケーキもあるぞ」
「やめた」「やめた」「やめた」
「何故じゃ?」
「胡散臭いから」「顔が悪者だから」「チビだから」
「少年よ、良く見ろ。ここは安全じゃろ、皆に安全じゃと言ってくれ」
「やだ」
タクヤに同意を求めたチビハゲのオッサンは玉砕した途端に再び掌を返し、今度は脅しの言葉を叫んだ。一本調子の甲高い嗄れた声が堪に障る。見れば見る程に頭は一際デカく態度は更にデカい。
「ガキ共、許さんぞ、一人たりともここからは帰さん。ワシは亡ノクニの国王、スゴくスゴく偉い国王ホゲットじゃ」
「こいつ、自分でハゲって言ったぞ」「ハゲだ」「チビハゲ」「ハゲ」「ハゲ」
「いやハゲではない、ワシの名はホゲットじゃ。ムカつくヤツ等じゃ、出でよ、我が鉄の軍団」
激怒するチビハゲのオッサンが躊躇なく何かを呼んだ。オッサンが呪文を唱えると、同時に奇妙な事が起きた。天井付近に輝く輪が出現し、輪の縁は黄緑色で中央部は漆黒に輝き、輪の中から妙な調子の音楽と何者かの声が聞こえた。
「我等ホゲット戦闘軍、最強軍団ここにあり」
次に、声とともに輪の中から白い猿の群れが我先にと出て来た。猿の軍団は傍らに携える機関銃らしきものを智哉達に向けている。
「おい、ヤバくねぇか?」
「オレ知ってる。あれマシンガンって言うテッポウだぜ」「戦争で使う武器だろ?」
「ニセモノに決まってんだろがよ」「でもヤバい、逃げろ」
「ヤバい」「ヤバい」「ヤバい」
逃げ腰の六人は、何故こんな所で撃たれなければならないのか、それが何の為なのかを知る術もなく、唯々恐怖に慄くしかない。
「撃て、撃て、撃て、撃て、撃って、撃って、撃ち捲れ」
チビハゲの号令とともに白い猿軍団の機関銃が火を吹いた。異空間トンネルに爆裂音と火花が舞い、弾の跳ねる音がした。火薬の臭いが鼻を突いた。
「わぁホンモノだぁ」「ぎゃあ」「うあぁ」「きゃあ」「皆解散だ、解散」
状況を把握出来ないまま、地球防衛軍の隊員達は持っていたありったけの2B弾とロケット花火と爆竹とねずみ花火を投げつけ、強制的に撤退を余儀なくされた。予想もしない展開に慌てふためいて、散り散りバラバラに必死で来た道の方向に走り家に逃げ帰った。尤も、防空壕ではそんな事は特に珍しくなく、防空壕の中にいた浮浪者に追い掛けられたり、誰だかわからない老婆が彷徨いていたり、見た事もない老人がいきなり奇声を上げる事など日常茶飯事だった。何はともあれ、その日の怪獣ごっこはそれで終わり、地球の平和は無事に保たれた筈だった。
◇
事件が起こったのを知ったのは次の朝だった。学校に行くなり五人は校長室に呼ばれて、昨日の事件の一部始終を聞かれた。その中に転校生のタクヤがいないのが不思議だった。
「何かあったのかな?」「さぁね」
「俺達だけ呼ばれたのか、昨日の防空壕の事かな?」
「じゃぁ、タクヤは何で呼ばれないんだよ?」
「さぁ」「タクヤ君、今日来てないよ」
校庭に裏山大捜索の為の警察官やら消防団、青年団が集まり、既に一大捜索隊が結成されている様子が窓から見えた。それから担任と校長から説明があり、智哉達は初めてタクヤが家に帰っていない事を知った。防空壕でのおかしな事件の後タクヤの姿を見た者も行方を知る者もいなかった。その後隣町から応援を得て、周辺山々の大捜索が実施されたにも拘らずタクヤが見つかる事はなかった。
確かに前日、防空壕3B号坑でその事件は起こったのだが、異空間やら化け物の話を信じる大人達は誰一人としている筈もなかった。智哉達は、異空間に迷い込み化け物に撃たれた昨日の不思議な出来事の一部始終を、大人達に正直に何度も何度も繰り返し話した。
「防空壕に不審者がいたんだな?」
「違うよ父ちゃん、あの防空壕3Bの奥に化け物がいて、そいつ等が・」
必死にそう説明したが、父親は「黙れ」と言って智哉の頭を殴った。その時の痛みが今でも記憶に残っている。その時の父親の気持ちが今は何となく理解出来る。それっきりタクヤが見つかる事はなく、風の噂に両親は山梨に引っ越したと聞いた。
◇
智哉は思い出した。いやマッチもビビコもガチャもミミも、あの時の事を全て思い出した。俊哉が小さく呟いた。
「そうだ、そうなんだ。俺達は皆同じように、あの時の言葉に出来ない罪悪感という心の痛みを背負って生きてきたんだ」
「あぁ、多分そうだよな」
マッチとコースケが、ガチャ、ミミが頷いた。その時以来今日まで、五人は意味もなく必要以上に会う事を避けていた。それは、「あの日あいつを誘わなければ」そんな罪の意識の表れだったのかも知れない。
「智哉君、あれは何?」
憂苦に苛まれる五人の隣で奈緒子が首を傾げた。不思議空間の左前方に一本だけ樹木があり、枝に何かがぶら下がっている。懐中時計を担いだ白いウサギかと思ったが、違う事は明白だった。長い耳を見ればウサギには違いなさそうだが、全身オレンジ色の毛に覆われたチェシャ猫のようでもある。
樹木に逆さに乗るオレンジ色のウサギのような猫は、智哉に徐に近づき語り掛けた。
「ボクの名前はオレンジウサギ猫だニャァ、君達はどこへ行くのかニャァ?」
「子供を、白いTシャツに赤いギンガムチェックスカートでポニーテールの女の子を捜してるんだ。ここを通らなかったか?」
「子供か?」
「そうだ」
「それなら、30年前に亡ノ国の王様がこの無限空間への入力の呪文を夢で教えて引きずり込んで、ここから出られなくなった野球帽の子供がいた。その子供かニャ?」
「いや違う」
「それなら、20年前に亡ノ国の王様がこの無限空間への入力の呪文を夢で教えて引きずり込んで、出られなくなった麦藁帽子の子供がいたニャァ。その時の子供か?」
「違う。黄色いチェックスカートの可愛い女の子だ」
「むふむふ、むむむ」
オレンジウサギ猫は、時計の振り子のように左右に首を振りながら記憶を辿った。
「えぇぇとっと、その子なら麦藁帽子の子供と一緒に3時間3分21秒前ここを通ったニャァ。亡ノ国の王様が追いかけていたけど、麦藁帽子の子供と一緒なら大丈夫だニャァ。ここを真っ直ぐ行けば、今ならまだ追いつけるニャァ」
「そうか、有り難う」「有り難う、ウサギさん」
礼を告げた智哉と奈緒子に、ネコのような喋りのオレンジウサギ猫はニタニタと笑って、嬉しそうに身震いした。
「「アリガトウ」だって?何て快い響きの言葉、百年振りに聞いたニャァ。凄く々気持ちがいいからお前にこれをやるニャァ」
オレンジウサギ猫の言葉に連動して、猫の頭辺りに赤と白二つの玉が現れた。玉は一瞬で智哉の鼻先に移動した。
「何だ、これは?」
「これは昔、ボクがまだ白くて元気に懐中時計を担いで走っていた頃、亡ノ国の王様をぶっ飛ばして掻払った爆弾だニャァ。亡ノ国の王様と猿軍団のヤツ等は気が狂った乱暴者だから、もし戦争する事になったら、「この赤色玉の白いボタンと白色玉の赤いボタンを同時に押して投げる」ニャァ。それで全部上手くいく。但し、この穴のその先には輪廻の崖と河があるから絶対に気をつけるニャァ」
「輪廻の崖と河?」
「そう。それから一つ頼みがある、輪廻の河の前で転んでどこへも行けなくなってしまった子供の魂が二つあるニャァ。だから、輪廻の河に流してやってほしいニャァ」
「何だか良くわからねぇけど、わかった」
「あれれれれ、気が狂った臭いニオイがしてきたニャア、ボクは逃げるニャア」
その言葉を残して、オレンジウサギ猫は相変わらず樹木にぶら下がったままで器用に遠ざかっていった。
「気の狂ったニオイって何だ?」
その意味は直ぐにわかった。
「おぅい智哉、早く来い。こっちに誰かいる」
穴の奥、先を行くマッチが叫んでいる。前方に再び何かが見えた。またウサギ猫かと思ったが違う生き物のようだ。
「キサマ達は何者か?」
どこかで聞いた事のある嗄れた声、威丈高な物言い、見た事のある風貌の頭の異様にデカいチビでハゲのオッサンだった。オレンジウサギ猫の言っていた「気の狂ったニオイ」の元に違いない。
「あっ、思い出した」
「そうだ、あの時もこのオッサンが出て来たんだ」
智哉、マッチ、ビビコ、ガチャ、ミミの五人の脳裏に「あの時」が蘇った。頭だけ特にデカく黒いタキシードを着た丸ハゲに黒い口髭を蓄えた浅黒い顔色のオッサン、子供に戻った智哉達よりも一際背の低いハゲのオッサンは間違いなく見覚えのある姿だった。
「お前は、あの時の亡ノ国の王チビハゲ」
「いかにも我が輩は亡ノ国の偉い王様だがハゲではない、ワシの名は国王ホゲット。
凄く偉い王様のホゲットじゃ。何者じゃお前達は、ん、ん、ん?」
あの時と寸分も変わらない、顔も声も異常にデカく、厚かましい。
「ワシも思い出したぞ、お前達は20年前のあの時のクソガキ共じゃな。お前達のせいでこの世界は時が止まったままじゃ」
チビハゲの黒い口髭を蓄えた浅黒い顔色が赤黒く変わっていく。わかり難いが激怒しているに違いない。オッサンは捲し立てた。
「本来この世界は、10年に一度人間の世界と繋がる事になっておるから、10年ごとにワシが感受性の強い子供の夢に出て、その子供と一緒に来た子供諸共に亡ノ国に引きずり込んで喰ってしまう事になっておったのじゃ。ところが20年前、お前達が逃げる時に投げた2B弾とロケット花火と爆竹とねずみ花火は我が亡ノ国の入り口の扉を吹き飛ばし、この国の時を止めてしまったのじゃ。お前達のせいでこの20年間に引きずり込んだ子供はゼロじゃよ、ゼロ。その責任はきっちりとってもらうからな、覚悟しろ」
話がやたらと長く、言っている事も相変わらず何やら訳がわからない。既に六人の誰もオッサンの言う事など聞いていない。
「そんなのは俺達のせいじゃないだろ?」
「25時間15分前に、やっと修理が完了し再びこの世界の時は動き始めた。こうなれば、ワシの思い通りに事は進む。3時間3分前に引きずり込んだガキとお前達を全て消滅させてやる」
聞き覚えのある一本調子の甲高い嗄れた声が、あの時と同じように堪に障る。他の四人もかつての事件の記憶が蘇った。
「あっ、俺も思い出した、あの時のハゲだ」「そうだハゲだ」「そうだハゲ」
「いや、違う。ハゲではないと言っておるだろう。ワシはホゲットじゃ」
マッチが青い顔で叫んだ。
「おい皆、オッサンをおちょくってる場合じゃないぞ。確かコイツが何かを言うと、白い何かが出てきてアレが始まるんじゃなかったか?」
「智哉君、アレって何?」
「確か、猿の兵隊が出てきてマシンガンをぶっ放すんだ。だから20年前怖くなって逃げたんだ」
「あぁ確かにそうだわ、私も思い出した」
「おい皆、そんな事を言ってないで、早く逃げよう」
「智哉、どうする?」
「皆、あの時と同じように逃げてくれ。俺は子供を、まゆを探す」
オッサンが何かを言った。
「ムカつくヤツ等じゃな。出でよ、我が鉄の軍団」
あの時と同じように照らされた天井から黄緑色に光る輪が出現し漆黒に輝くと、妙な調子の音楽と何者かの声がした。
「我等ホゲット戦闘軍、最強軍団ここにあり」
20年前と変わらず、白い猿の群れは機関銃を携えている。
「智哉、ヤバいぞ、何か武器はないのか?」
「さすがに、2B弾もロケット花火も爆竹もねずみ花火もないよな」
奈緒子が気づいた。
「智哉君、入り口で変なウサギ猫にもらったあれは?」
「ん、そうか、あれをぶん投げればいいのか?」
半信半疑で、オレンジ色のウサギ猫にもらった赤玉を取り出し、白いボタンと白玉の赤いボタンを押した。瞬時に赤い玉が光り出した。
「そ、それはワシがオレンジウサギ猫に奪い取られた大爆裂玉ではないか。何故お前がそんな危ないものを持っているのだ、それを破裂させたらこの亡ノ国全体が吹き飛んでしまうぞ、ぞ、ぞ」
チビハゲがビビっている間に、赤い玉を見た猿軍団のリーダーが一目散に逃げ出した。猿が蜘蛛の子を散らすように散り散りに逃げていく。
智哉は、躊躇する事もなく、花火のように激しく輝き出した赤玉と白玉を投げた。
ピンク色に怪しく光る空間にある亡ノ国の中で赤玉が轟音とともに破裂した。爆裂音と巨大な光輪が空間を木っ端微塵に破壊し、チビハゲも白い猿軍団もいない空間に変わった。爆裂と同時に出現した白玉はドーム状の空間に変化し智哉達を包み込んでいる。
「パパ?ママ?」
爆裂の収まった漆黒の空間の天井から娘、まゆの声がした。崩れた天井の一部が開き、縦空間に繋がる横空間からまゆが現れた。智哉と奈緒子が安堵の声を出した。
「まゆ、無事で良かった」
「麦藁帽子の髪の毛の長い男の子が救けてくれたんだよ」
「麦藁帽子の髪の長い男の子?」
「そう。でもどうしたの?パパもママも子供みたいだよ」
まゆが不思議そうな目で見ている。
「これはパパとママの子供の頃の姿だ、あれはパパの友達だよ」
マッチとビビコ、ガチャとミミが手を挙げて挨拶した。
「面白い、パパもママもまゆと同じ子供だ。でも匂いは変わらない」
「さぁまゆ、帰ろう」
智哉はほっとした顔で言ったが、まゆは智哉の手を握り返し、異空間トンネルの再奥を指差した。
「ダメだよパパ、呼んでいるの。さっきの男の子が奥で呼んでいるから、行かなくちゃダメなの」
「まゆ、さっきの男の子の名前を知っているかい?」
「タクヤ君って言ってた。奥で泣いてる声がする」
「タクヤ?」
「泣いている声?ひゃぁ、怖い」
ガチャが震えている。
「何が怖いだよ。お前、寺の住職だろ?」
「そうだぞ。ボウズのくせに何が怖いだよ」
「煩いな、怖いものは怖いんだよ」
まゆが歩き出した。六人は周囲の様子を窺いながら後について行く。暫く歩いた穴の再奥に崖が見える。まゆは、泣き声のする崖の向こう側に降りた。
「パパあっちだよ」
崖の先には河が流れていた。水面が金色にキラキラと輝いている。
「これが、オレンジウサギ猫が言っていた輪廻の河なのかな?」
「智哉君、まゆ、気を付けて。落ちたら戻れないってオレンジウサギ猫が言ってたからね」
その言葉にまゆが奈緒子の手にしがみつくと、ガチャの悲鳴が聞こえた。
「ひゃぁぁ、わわわわ・」
ガチャの声が煩い。
「ガチャ、どうした?」
「あ、あれ・」
ガチャが指差した場所に、白い小枝と丸い石のようなものが散らばっている。六人は恐る恐る近づいたが、ガチャはその白い物体の正体を知っている。
「それはな、それは・」
「何だよガチャ、何が言いたいんだ?」
「それは・仏様だ」
「仏様って、死体?」「骨?」
「ぎゃあ、あっちにもある・」
智哉は、屈んで白く丸い石のようなものを手に取り、子供の頭蓋骨である事を確認した。その近くに麦藁帽子らしきものが落ちている。更にはその先にも白い小枝のような骨と子供の頭蓋骨が散らばり、その横に朽ち果て原形を留めない黒地にオレンジ色のGマークのついた野球帽らしきものが落ちていた。大きさからすると、二つとも子供のものだ。
智哉にはどちらにも見覚えがあった。麦藁帽子はタクヤのものだったような気がする。そしてもう一人は、20年前に亡の国のチビハゲの化け物から救ってくれたあの野球帽の男の子に違いない。
これがオレンジ色のウサギ猫が言っていた「輪廻の河の前で転んでどこへも行けなくなってしまった二つの子供の魂」なのだろう。
「パパ、その麦藁帽子の子が助けてくれたんだよ」
智哉は頷き、オレンジ色のウサギ猫に言われた通りにゆっくりと二つの白骨を河に流した。五人とまゆ、奈緒子は手を合わせた。
「骨を弔おう」と言う智哉に反対する者はいなかった。神妙な空気の中、ガチャが小声で言った。
「葬式代、一人分10万、二人分で計20万だからな、お前等が払えよ」
「えっ、金取るのかよ?」
「当ったり前だろ」
「この、クソ坊主」「金の亡者」「クソ坊主、お前が死ね」
「お前等全員、天罰が下るぞ」
翌日、煩悩寺で葬儀がしめやか執り行われた。外は朝からシトシトと雨が降っている。絶好の葬式日和だ。葬式代計20万円は、結局2万引きの18万になり、俊哉とマッチとビビコとミミの四人の割り勘となった。
子供姿からオッサンに戻ったガチャは真面目に御経を読み、四人と奈緒子とまゆが厳かに列席している。読経が中盤に差し掛かった頃、葬儀場に一人の若い男が訪れた。男は参列する五人に親しげに話し掛けた。
「よう皆・元気そうじゃないか・」
「誰だ、お前?」
ガチャの読経が中断した。それが誰なのか知る者は誰もいないのだが、何となく面影のあるその顔に、ミミは乙女のような態とらしい声で訊いた。
「えっ、もしかしてタクヤ君?」
「タクヤ?」
「おぅ・」
麦藁帽子を手に持ち、半袖白シャツに短パンという大人にしてはアンバランスな姿の青白い顔の男は応えた。30歳前後に見える。
「タクヤ。お前、生きてたのか?」「生きてたのかよ?」
「何がどうなっているの?」
「タクヤ。これはお前の葬式なんだぞ。それにな、俺達は皆そこのクソ坊主にボラれてんだからな」
葬儀場に当の本人が現れるなどという、唯只管驚くしかない状況に、智哉達は言葉を失している。
「ボってねぇぞ。大体だな、神聖な仏様の使いのボクにクソ坊主とは何だ、地獄に堕としてやろうか罰当たりの莫迦者共」
「ぼ・僕の葬式?・ははは・随分間抜けな話だな・」
麦藁帽子の男は微笑んだ。
「じゃぁ、あの骨は誰なの?」
「そうだぞビビコ。手前ぇ警察官だろうがよ、何でわからねぇんだよ?」
「4万5000円だぞ、オレの今月の小遣いがパーなんだぞ」
ミミと俊哉の疑問に俊哉が言葉を被せた。ビビコが即座に反論する。
「警察官だって、そんな事わかる訳ないだろよ?大体な、俺だって4万5000円払ったんだぞ。返せよクソ坊主」
「何でボクが返さなけりゃならないんだ、しかも20万を2万引きの18万にしてやった恩も忘れて返せよクソ坊主とは何事だ、罰当たり共め」
「ビビコ、やっぱり警察官の手前ぇが悪ぃんだよ。税金泥棒じゃねぇかよ?」
「何だと、この野郎」
20年振りの二人の取っ組み合いが勃発し、呆れ顔のミミが場を仕切るルーティンが復活した。しかし実は、智哉も浩介もミミもマッチも皆この状況をどう理解し消化すれば良いのか途方に暮れている。智哉は、きっと思考停止とはこういう事を言うのだろうと思った。
「ノータリン同士のケンカやめ。何だか良くわからないけど、もう葬式終わり。隣の居酒屋で同窓会スタート」
「そうだ、葬式中止だ。お前等、全員隣の居酒屋に来い。タクヤ、お前もだ」
「そうだ、明日の朝まで宴会だぁ。今日は死ぬ程飲むぞ」
「ガチャ、その仏様が誰だか知らねぇけどちゃんと弔えよ。俺等18万払ってんだからな」
「煩い、言われなくてもやる」
五人は喪服を脱ぎ、雨の中を愚痴を叫びながら隣の居酒屋へ向かった。葬儀場に残るタクヤにまゆが小さな声で言った。
「あ、あの時、救けくれてありがとう」
まゆの小さな声に、タクヤは親指を立てて微笑んだ。ガチャは智哉達一同がいなくなったのを確認すると、タクヤに申し訳なさそうに声を掛けた。
「タクヤ、ワリいな。そんなカッコさせて」
タクヤは首を振った。
「ガチャ君・ボクの声を聞いてくれて・呼んでくれてありがと・」
「いや、これでオレ等全部ケリがつくから」
「それは・ボクも同じ・あのままだと・ずっとあそこから出られないから・」
ガチャの言葉にタクヤは嬉しそうに笑った。
「そろそろ・」
「あぁ」
「じゃ・」と言って背を向けたタクヤの身体は子供に戻り、入り口に向かって歩き出した。そして、そのまま外へ出て行った。入り口には野球帽の男の子が待っていた。
「あっ、忘れ物」
葬儀場にタクヤの麦藁帽子が置かれたままだった。気づいたまゆと奈緒子とガチャが外に出ると、寺の入り口にはもう誰の姿も見えなかった。まゆの持っていた麦藁帽子が静かに風の中に溶けて消えていった。
「お前、わかるのか?」
ガチャの問いに、まゆは奈緒子の手を握り締めながら頷いた。三人がタクヤの消えた方角に手を合わせると、生暖かい小雨のぱらつく夏の夕空に一陣の風が吹き抜けて行った。
完
時空超常奇譚其ノ六. サイレント・シャウト/あの日の忘れもの 銀河自衛隊《ヒロカワマモル》 @m195603100
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