5EX
エリー.ファー
5EX
すべてが終わった。
何もかも終わった。
卒業をしてしまったのだ。
あっけなかった。
寂しい気分になったのは何故だろう。
別に何も変わっていないのだ。
ただ、背負っていたものが消えているという事実だけがある。
何か間違えたような気もする。
何も間違えていないような気もする。
皆、通った道でもある。
だから、僕は通ったのだ。
何の後悔もない。
「ラーメン、食べに行こうぜ」
「あぁ、いいよ。どこ」
「駅の近くのところ」
「クーポン、あったような気がする」
「俺、持ってるから使えよ」
「あぁ、ありがと」
「で、どうなんだよ」
「何がだよ」
「上手くいったのかよ」
「まぁまぁ、かな」
「まぁまぁって」
「なぁ、死体が見つかったらしいぜ」
「どこで」
「ホテルだとよ」
「へぇ」
「首の骨が折れてたんだと」
「まぁ、他殺だよな」
「そうだな」
「前にもあったよな」
「あぁ、その通り。だから怖いなって話になったんだよ」
「連続殺人か」
「犯人が同じかは分からないけどな」
「この街って、そんなに治安悪くないよな」
「そうなんだよ。急に増えてるんだ、殺人とか」
「集団自殺もあったよな」
「そう、とにかく多いんだ」
「どうするんだよ」
「どうするって」
「この街から出るのかよ」
「まぁ、そうだなぁ」
「もう、この街に用はないだろ」
「できることは終わったな」
「じゃあ、出ようぜ」
「出られるとは思えないけどな」
僕は、自分が幸せなのだと思っている。
僕の知る限り、すべてが揃っていると思っている。
諦めてはいけないと言い聞かせて来た。
でも、限界だ。
殺してしまった。
二人ではない。
三人ではない。
二十九人。
僕の人生は崩壊している。
でも、悪いのは僕じゃない。
この街だ。
この街が僕を狂わせたのだ。僕のことを狙っているのだ。
この街のどこでもいいから、僕のための空間を作って欲しい。
そして。
僕を一人にしてくれ。
孤独を喉に詰まらせて死にたい。
「殺人が続いておりますが、その多くが絞殺の種体によるものであります。そのため、自警団による解決が望まれるところではありますが、春貝の訪問も近く時間が余りないというのが実情です。以上のことから、応援の要請をお願いいたします」
僕の大学生活は壊れてしまった。
二度と戻らないだろう。
何を間違えてしまったのだろうか。
思い返しても分からない。
時間が戻らない。
当たり前か。
僕は。
僕は何を求めていたというのか。
「ジャズが聞こえてくる」
「この街には溢れてるのさ」
「良い雰囲気」
「そう、この街にはジャズが溢れていて、お洒落だ」
「で、誰を殺すの」
「大学生らしい」
「まだ、子どもじゃない」
「そう、だからさ。子どもだから、今のうちに俺たちで殺しておかなきゃいけない。立派に育つ前に、刈り取るべきだ。そうだろう」
「確かに」
「じゃあ、行こう」
「どんな殺し方でもいいんでしょ」
「派手な方がいい」
「そう、安心した」
僕は大学を卒業するために単位を集めている。
勉強をしている。
不思議な気分になる。
何のための大学なのだろう。
僕は、どうして大学生を名乗っているのだろう。
意味が分からない。
気持ち悪い。
「殺し屋を雇いたいんですが」
「誰を殺したいのか教えてほしい」
「殺し屋」
「殺し屋を殺すために殺し屋を雇うのか」
「駄目ですか」
「いや、この街らしい考え方だと思う」
5EX エリー.ファー @eri-far-
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