10 進化

 朝がやってきた。俺は使役したルナと地平から昇りゆく朝日を眺めていた。まるで俺とルナとの間に結ばれた絆を祝福するかのように、朝日は神々しく輝いていた。その光を受けながら俺はステータスをにまにまと確認していた。


【名 前】ハンス・ハイルナー

【種 族】ヒト

【性 別】オス

【年 齢】7歳

【職 業】大魔道士

【レベル】37

【体 力】172/189

【魔 力】145/222

【攻撃力】63

【防御力】63

【知 力】63

【精神力】63

【俊敏性】63

【幸 運】63

《スキル》

【サーチ】【見切りⅠ】

《魔法》

【鑑定Ⅰ〜Ⅶ】【隠蔽Ⅰ】・【隠蔽Ⅱ】【ライトニング・スフィア】

《その他》

 ツリーポイント70p

【生命の樹】

【技能の樹】

【知恵の樹】

 使役

 ルナ(ラ・バイゼル)


 いつの間にかレベル37になっていた。ライオットからもらった指輪のおかげもあるのだろうけど、この成長度合いはなかなか気持ちがいい。ツリーポイントも70ポイント溜まっている。これは振りがいがある!


 そう言えば、二度聞こえたあの声は何だったのか? 確か、我は汝と共にありって言っていたような。もしかして、この職業は追い込まれると覚醒モードになったりするのか? まぁ、今気にしても仕方ないし、いずれ分かるときが来るだろう。それより今はステ振りだ! 先ずは使役に関してだ。ツリーポイントはまだあるし、ここは今からでも投資してよいだろう。


 俺は次の送還という魔法も解放する。すると、さらに次の派生が現れた。


 ツリーポイント67p

 2使役

 3送還

 4召喚(未解放︙解放5p)


 送還。試しに使ってみるか。名前的には次に現れた魔法、召喚とセットみたいだが。


「送還」


 唱えた。すると、ルナが消えた。焦った。その勢いで召喚を解放する。俺は間髪入れずに召喚を唱えた。


「召喚!」


 やはりだ。ルナが目の前に現れた。ホッとした。ルナはキョトンとしている。俺はルナの頭を撫でてやる。ルナはくぅんと甘ったるい声で鳴く。かわいい。


 どれどれ。次に解放されたのは強化か。これはわかりやすいな。おそらくはバフだろう。調べてみると、一分間、指定した三つの素質値を二倍にするらしい。しかもその倍化は召喚者である俺にも効果があるみたいだった。8pだし、これも解放することにした。


 ツリーポイント54p

 2使役

 3送還

 4召喚

 5強化

 6体力回復(未解放︙解放13p)

 6進化(未解放︙解放13p)


 お? ここで枝分かれしたな。うーん。進化ってのが気になるけど、体力回復は送還している時に体力回復効果があるみたいだ。だが、これは今はいいか。恐らく自然治癒もするはずだ。それに、今回の夜戦で回復魔法の必要さがわかったので、光魔法も解放しようと持っている。だから今のうちはいいかな。


「だが、進化は気になるよなぁ」


 俺は先程から舌を出してはぁはぁ言ってるルナに向かって呟く。進化って如何せんロマンがある。今のルナはラ・バイゼルって個体らしいけど、さらに上があるのかと、考えたら期待しかない。進化には条件とかありそうだけど、正直興味ありだ。


 よし。今のところはこれで使役派生の解放は最後にするか。進化、解放するぞ。


 ツリーポイント41p

 2使役

 2使役

 3送還

 4召喚

 5強化

 6体力回復(未解放︙解放13p)

 6進化

 7覚醒(未解放︙解放21p)


 覚醒! 覚醒だと……。これは、気になる。気になるが……今は待とう。取り敢えず進化の効果を試そう。


 俺ははやる気持ちを必死に抑えて、ルナに向かって「進化!」と言ってみた。するとルナのステータスの下のところに進化の項目が増えていた。


【名 前】ルナ

【種 族】ラ・バイゼル

【性 別】メス

【年 齢】17

【職 業】なし

【レベル】67

【体 力】292/292

【魔 力】108/108

【攻撃力】109

【防御力】104

【知 力】32

【精神力】27

【俊敏性】88

【幸 運】51

《スキル》

『咆哮』

《魔法》

『シャドウ・ランス』『影喰らい』

《その他》

 なし

 

【進化】

 進化可能(リ・バイゼル)→進化後のステータス

 進化可能(影狼)→進化後のステータス



 リ・バイゼルに影狼。二つの進化先があった。開放条件はそれぞれ、【ラ・バイゼルでありかつレベル50以上】と、【犬型モンスターかつ闇魔法を二つ以上持つことかつレベル50以上】のようだ。


 バイゼルとして進化するか影の派生にいくか、って感じか。進化後のステータスを確認できるみたいだ。見てみるか。


(進化先1リ・バイゼル)

【名 前】ルナ

【種 族】リ・バイゼル

【性 別】メス

【年 齢】17

【職 業】なし

【レベル】67

【体 力】352/352

【魔 力】116/116

【攻撃力】134

【防御力】122

【知 力】37

【精神力】36

【俊敏性】92

【幸 運】53

《スキル》

『咆哮』

《魔法》

『シャドウ・ランス』『影喰らい』

《その他》

 なし


(進化先2影狼)

【名 前】ルナ

【種 族】影狼

【性 別】メス

【年 齢】17

【職 業】なし

【レベル】67

【体 力】253/253

【魔 力】144/144

【攻撃力】122

【防御力】111

【知 力】49

【精神力】42

【俊敏性】102

【幸 運】53

《スキル》

『咆哮』

《魔法》

『シャドウ・ランス』『影喰らい』『影移動』

《その他》

 なし


 リ・バイゼルは全体的にステータスが上がっているが、追加魔法やスキルはなし。だが、一方で影狼は体力が減っている代わりに魔法方面で強化されている。それに『影移動』という夜に活躍しそうな魔法もある。これはもう決まりだな。


 俺は影狼を選んだ。すると、ルナは禍々しい紫と常闇のような黒の混ざった光で包まれていく。そして、その光が一瞬強く光った瞬間、ルナの存在感がより増した。明らかに個として強くなった。これが進化か。


 光が流れていくと、黒の滑らかな毛並みにところどころ美しい紫が混ざる狼がいた。サイズはラ・バイゼルのときよりも小さくなっていたが、依然として美しい。


 ルナは進化が終わると俺のもとまで駆けてきて、体を押し寄せてくる。かわいいやつだ。


 よし。今のところは使役派生はこのくらいにして、次は攻撃魔法と回復魔法を解放していくか。


 俺がそう思い立ったときだった。


「朝飯の時間だ」


 後ろから不意に声がした。ライオットの声だ。俺は振り返ってライオットを見る。するとライオットは物珍しそうにルナのことを見ていた。


「ふむ。この辺りでは影狼は現れないはずだが……。それにお前、使役しているな?」

「はい。なんか、できちゃいまして」


 俺が答えると、ライオットは顎をなでながら興味深そうに語る。


「ほう。使役までできるのか……。帰り際に話を聞かせろ」


 俺はライオットとともに帰ることにした。

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