プロメテウスの騎士 ~ Sランクなのに落ちこぼれの僕はエリートパーティを追放され、騎士団を追放されたもう一人の落ちこぼれと旅をするうちに、いつの間にか世界の命運を託される ~
プロローグ 追放の落ちこぼれ ~ギルドメンバーの場合~
プロメテウスの騎士 ~ Sランクなのに落ちこぼれの僕はエリートパーティを追放され、騎士団を追放されたもう一人の落ちこぼれと旅をするうちに、いつの間にか世界の命運を託される ~
久田 仁
プロローグ
プロローグ 追放の落ちこぼれ ~ギルドメンバーの場合~
「ルトラ、悪いが君はここまでだ」
唐突に、だがパーティの誰もが、いつかはこうなると予想できていた言葉が、リーダーであるクレスの口から発せられた。ルトラ自身も覚悟はしていたつもりだったが、いざ突き付けられた言葉に対して、視線は俯き、肩を落としてしまう。ルトラは、パーティからの追放を宣告されているのだ。
王国内で最高評価であるSランク人材が集まったこのパーティにおいて、リーダーであるクレスの身体能力、それを生かした剣術は王国の中でもトップクラスであることは間違いない。リーダーシップも兼ね備えた彼の考えや発言に対して、メンバーから反対意見が出ることはめったにない。
「クレスさん、ちょっとお話が急すぎる気もするのですが……」
治癒術師であるユリアンナが割って入ってくれた。5人パーティで唯一の女性である彼女は、非常に優秀な治癒能力を有しており、道中で傷ついたパーティを迅速に治癒してくれる。もっとも、このパーティで深手を負うのはルトラくらいだったのだが。
「じゃあ、今回の任務が終わるまででいいんじゃないの? 実際この人の弾幕が役に立つ場面もあるかもだし」
提案をしたのは魔術師のアーデだ。若干十五歳にも関わらず多彩な魔術を使いこなす、ギルド期待の新星である。彼の提案はルトラを庇うものではなく、ルトラの脱退というイベントをさっさと丸く収めたいという感情から来るものだった。それを隠す気もない彼の発言には、一種の呆れが感じ取れた。
「――ルトラ、お前はそれでいいのか?」
しばしの沈黙をおいて、ショーンが優しくルトラに尋ねる。このSランクパーティの中で、もっともルトラのことを気にかけている彼は体術の天才であり、戦闘においてはリーダーのクレストと共に前衛を担っている。これに対し、後衛には魔術の天才であるアーデと、治癒術の天才であるユリアンナが担う。
そんな優秀な人材の中でルトラの役割は、アーデの言うように――『弾幕役』だった。
具体的には、攻撃対象である魔物や人に対して魔力で作った弾を打ち続ける役。わずかにダメージを与えることもできるが、雀の涙程度であり、戦闘においては敵の注意をそらすことしかできない。
ルトラがこの『弾幕役』に徹することになっている原因は、特筆すべき能力が全くないことに起因する。魔術を使用する際に消費するマナの保有量が、一般人と比較して多いくらいであり、それを引き出す魔力もルトラは著しく低く、魔術師には向いていない。地元で習っていた剣術の腕はそこそこだが、基礎的な運動神経や筋力もルトラは低い方だった。
そのため、剣術、体術、魔術、治癒術の天才が揃ったパーティにおいて、ルトラの存在は明らかに浮いていた。
このパーティが編成されてからまだ数回しか任務はこなしていないが、能力の低さから窮地に陥ったルトラを、他のパーティメンバーが陣形を崩して救援するという状況が毎度起こっていた。その度に、ユリアンナは治癒術をかけ、ショーンは慰めの言葉をかけ、アーデは深いため息を吐き、クレスは腕組をして治癒をじっと待ち、ルトラはメンバーに謝罪していた。
明らかに足を引っ張っているのはルトラ自身も十二分に理解していたが、自分の目的のため、何とかこのパーティにしがみつこうとしていた。だが、それももう限界のようである。
「わかりました……。 これ以上迷惑もかけられないので、今回の任務が終わり次第、本部に戻ってギルドマスターに転属願いを出そうと思います……」
心の整理をつけ、ようやく口を開いたルトラの言葉を聞き入れた一行は、今回の任務地である遺跡へ向かって歩き出した。出発の際、ショーンが優しくルトラの肩を叩いてあげていた。
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