添付資料

資料№356


被験者

北川 悠里(17歳) 男子高校生


家族構成

父(52歳 外資系企業勤務)

母(49歳 NPO職員)

共に海外勤務。本プロジェクトは母親によって承認。


自殺方法

鉄道


所見

・重度の抑鬱状態、心的外傷

・自殺未遂時に右足を切断(義足P461型を装着済み)。



備考

・自殺の原因はいじめによるもの。いじめの内容は、集団による肉体的暴力、精神的暴力。詳細は別添(加害児童のヒアリングシートも付属)。


・直接的な自殺のきっかけは、世話をしている野良猫を目の前で殺害されたことと思われる。(正確には被験者が殺害した模様。詳細は別資料)


・遺書はなし。海外で働く両親への連絡もなし。自殺の前兆、いじめの兆候もなしというのが両親談。


・両親ともに帰宅は年に数日のみ。被験者は基本的に独り暮らしと同様の生活状況。


・筋肉量は平均以下。運動能力も同様と考えられるので、配属サイト次第では増強剤の使用が必要か。



基本方針

・轢断箇所がある為、義肢装具に特化したサイトB(通称:レキの村)に配属。


・基礎プログラムによる療養で体力の回復と社会性の獲得


・六か月の基礎プログラムの後、CASE5(通称:転生プログラムB)を適用。


・インターネットの検索履歴から推察される対象の性的指向と、本人の強い希望を考慮し、専属監察官は本庄瑠璃とする。



担当責任者

最高責任者  巖倉 良治(ロール名:マスター 役職:酒場のマスター)


専属監視官  本庄 瑠璃(ロール名:リルリ 役職:村長の孫)


臨床心理士  武田 仁 (ロール名:ジン 役職:村民)


所属施設長  吉岡 楓 (ロール名:カエラ 役職:村長)





経過報告 (作成:本庄瑠璃)


◇第一段階(主目標:心身の回復と自尊心の向上)


・2042年2月1日、対象が覚醒。同時に計画を開始。


・同2月7日、農作業を開始。以後、断続的に従事。


・同4月15日、右義足に搭載されたエンジンを異能として説明。猿型生成獣の撃退。


・同5月1日、猪型生成獣を撃退。以後、2週に1回程度の頻度で生成獣との模擬戦闘を実施。


・同7月18日に各種の数値をクリア。同25日に臨床心理士の武田の指示で終了。



※備考

・自発的に村民とのコミュニケーションを行う様子も確認済み。性的欲求も確認。


・村内における集団行動に消極的な姿勢が見られる。関係性の構築には通常よりも長い時間を要すると思われる。


・猫に対する心的外傷あり。村内で放し飼いのセラピーアニマルとの接触にも注意が必要。


・頻度は低いながらも、フラッシュバックの傾向あり。専属監視官が手首を握ることで対処可。


・向精神薬の投薬頻度は週に一度まで低下。必要時にアルコールと称して投与。



 

◇第二段階(主目的:ストレス耐性のテスト)


・2042年8月5日にサイトE(通称:イシュの街)への移動を提案。


・同日中に移動を決定。心拍及びバイタルデータに大きなブレもなく、論理的思考による自発的決断が可能と判断。


・同6日明朝、サイトB(通称:レキの村)を出発。


・同7日明朝、過度な肉体的接触を実施するも、性交渉には至らず。性衝動の自制を確認。


・同日中、攻撃性の強い狼型生成獣と戦闘。判断力、運動能力、ともに問題なし。


・同8日明朝、2度目の肉体的接触。性衝動の自制は持続性ありと判断。



※備考

・異世界に対する依存的傾向がみられる。今後の動向に注意。別途治療が必要な可能性。


・自発的決断は可能と判断したが、他者からの後押しが必要か。追試が望ましい。


・生成獣との戦闘におけるストレス値は極めて低い。自らの戦闘能力に対する自信からか。


・生成獣の殺害に躊躇いを見せる。本人の心的外傷との関係か。


・性衝動に対する自制心が非常に強い。最終段階の際は多少強引な手法が必要な可能性。




◇第三段階(主目標:協調性の確立)


・2042年8月8日、サイトEへ到着。同日中に村田裕二監視官(ロール名:ユージン)と371号被験者(通称:キョウカ)と接触。以後、371号被験者の協調性テストと同時進行。


・同日中に、村田監察官よりパーティーの結成を提案。提案プランはBにて実施。その場でパーティー結成について同意。


・同9日、一同でサイトEを出発。直後の生成獣との戦闘を共にこなす。


・同日、予定通りに小屋Fで野営。食事の際に一同での会話あり。


・同深夜、被験者と専属監視者(本庄)の二名で対話。その内容から協調性ありと判定。



※備考

・サイトE到着直後、人的ストレスに対する過度な攻撃的反応を観測。要注意。なお、その場に居合わせた村田監察官の判断で、被験者の強制拘束は行わず。


・ストレス要因として、371号被験者と本庄監視官の間で口論を行う。これは356,371両被験者に対するストレス要因として行われたものである。


・パーティー結成提案の際にプランBを用いたのは、被験者が論理的思考を好む傾向が強いことから。論理的思考により利点を重視して結成を承認した可能性もあるので、今後は情緒面の経過観察を重点的に行う予定。


・心拍データのわずかな変動から、パーティー結成に対する消極性が確認される。結成後の言動より、それを理性的に抑えることが可能だと判断。


・371号被験者に対する性的興味を観測。被験者同士の性的接触を回避するため、必要であれば、予定を繰り上げて専属監視者より性的接触を図る可能性有。





◇第四段階(主目的:ストレス耐性と自発的決断の可否のテスト)


・2042年8月10日大型生成獣(通称:火竜)と対峙。生命の危険を感じさせる。


・同日中、小屋Fにて一同で会話。村田監視官による状況説明と、本庄監視官のストレス反応によって、被験者へ軽度の心的負荷をかける。被験者は冷静に判断を下している様子。


・同日夜、村田監視官と被験者の対話。村田監視官は現行プロジェクトの続行が可能と判断。


・同11日、サイトEにてサイトEの最高監視官(通称:ギルドマスター)より状況説明。火竜を討伐することのメリットとデメリットを提示することにより、葛藤状況を創出。


・同日夜、対象の食事に多量のカフェインを混入。心的ストレス反応を誘引しやすい状態の対象を独房に入れ、仲間との接触を断つ(本庄監察官は別室にてモニター)。

心拍データより極度のストレス状態にあることが確認されたものの、自主的に独房を脱出する選択をとる。この事実に基づき、自発的決断が可能と判断。最終段階への移行を承認。


・同12日、火竜と戦闘。損耗した火竜は生態研究棟へ移送。被験者が全治一か月の負傷。



※備考

・371号被験者より、実験環境下(異世界)を軽視する発言あり。要経過観察。


・被験者へのストレス要因として、本庄監視官がロールするリルリの恐怖感情を利用。これは対象が本庄監察官(リルリ)に抱いている感情を活用したものであり、効果は覿面。


・対象と村田監視官の対話内容は、村田監視官による別資料を参照。重要事項につき、必ず参照されたし。


・葛藤条件は概ねCASE5に規定されているものを採用。被験者の性質を考慮し、情緒面ではなく論理的に訴える方法を採択。


・火竜との戦闘の際に、被験者が負傷。負傷させることはリアリティ追求の上でやむを得ないとしても、その程度に問題があると考えられる。早急に検討し、改善を求む。




◇最終段階(主目的:情緒的支柱の獲得と、プログラムの終了)


・2042年8月28日、精神的、肉体的に問題なしと判断、被験者を覚醒させる。


・同9月20日、被験者の骨折が完治。


・同日夜、被験者からアプローチ、本庄監視官(リルリ)へプロポーズと同義の告白。本庄監視官はそれを受け入れ、性交渉に成功。


・翌21日より、情緒的支柱の獲得を目的とした同棲生活を開始。経口避妊薬を服用した本庄監視官が、連日にわたって性交渉業務を行う。(計28回)


・同10月12日、専属監視官である本庄がプログラムの終了を決定。



※備考

・データ収集と治療の為、十六日間の休眠措置を行う。その間に、371号被験者は村田監視官の決定によりプログラムを終了。


・性交渉を経て、対象の情緒的支柱の獲得に成功。成否の判定は本庄監視官の他、巖倉、武田両名の個人面談にて決定されたものである。















資料№492


被験者

本庄 瑠璃(27歳) 厚生労働省職員(特別医療研究会所属)


家族構成

父母:ともに被験者が6歳の頃に事故で死亡。

弟(本庄孝幸):被験者が19歳の時に自殺。


自殺方法

拳銃(当時21歳)


所見

・銃弾による脳の損傷

・箱庭プロジェクト参加時における過度なストレス(資料№356を参照)


備考

・脳の損傷が激しく、一時は脳死状態に。箱庭プロジェクトにおいて臨床試験中だった細胞再生医療の試験適用により、自殺未遂から2372日後に意識を取り戻す。


・自殺の原因は、専属監視官として参加していた箱庭プロジェクト№356の被験者に過度な感情移入(転移)を起こしたことと思われる。


・本被験者は、幼少期に両親を事故で亡くし、肉親は弟のみ。その弟も被験者が19歳の時に自殺しており、被験者は身元引受人も居ない状況。


・弟の自殺の直接的要因は、彼が世話をしていた兎(高校の飼育小屋で飼育されていたもの)を目の前で殺害されたことであった。これは被験者№356の自殺状況に酷似しているため、転移が促進されたと考えられる。


・弟の自殺をきっかけに、箱庭プロジェクトへの参加を希望。情緒面に課題は残るものの、適性検査の結果を重視し、採用。被験者№356の前に№284の専属監視官も務め、プログラムを完了させている。



基本方針

・専属監視官と最高責任者の強い希望により、サイトB(通称:レキの村)にてプログラムを実施。


・被験者が専属監視官の経験を持つので、イレギュラーのリスク高。イレギュラーの発生条件や記憶の喚起条件等も観察対象とする。


・被験者には身元引受人がおらず、その役割を専属監視官が兼任する。№356と同様に過度な転移が起こりやすい環境なので要注意。その点でもデータを収集予定(専属監視官本人も承認済)。


・専属監視官の希望により、CASE9(通称:スローライフ)をベースに治療を行う。


・経緯を考慮し、被験者と専属監視官は治療の成否に関わらずサイトBに常駐させる可能性も有り。最終決定は最高責任者、臨床心理士、所属施設長の合議で決定する。



担当責任者

最高責任者  村田 裕二(ロール名:ユージン 役職:酒場のマスター)


専属監視官  北川 悠里(ロール名:ユーリ  役職:村長の孫)


臨床心理士  原田 祐 (ロール名:タスク  役職:村民)


所属施設長  吉岡 楓 (ロール名:カエラ  役職:村長)

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転生者の箱庭 真嵜 政利 @marumaruru

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