強制スローライフ〜異世界召喚後のスタート地点が天空の孤島だったのでスローライフ生活を送る事にしました。他にどうしろと?〜

ナザイ

天空0 異世界召喚



茜色に染まった帰り道。


足元に突如青白く輝く魔法陣が現れた。


突然の出来事に呆然、


「異世界召喚、キターーーー!!」


と言う事もなく、俺は全力で歓喜した。


昨日読んだライトノベルと全く同じだ。


チートで、人々を救いチヤホヤ。

寄ってくる女の子達でハーレム。


仲間を作り、共に困難を乗り越え、世界を救うと言う展開だけでも胸が熱くなる。


おっといけない。


まず無知な、望んでもいないのに喚ばれてしまった哀れな異世界人を演じなければ。

やはりテンプレを求めるならテンプレで。



魔法陣の光がより激しくなる。


同時に意識が遠退いてくる。


いよいよ召喚されるようだ。


まずは知識チートでポンプの知識を広めて――――





目が覚めると、そこは草原であった。


風が涼しい。


同時に直後の記憶が蘇る。


間違いない。ここは異世界だ。

夏の東京にしては涼し過ぎる。


魔法陣による召喚で人為的なものを明らかに感じるが、召喚先は王宮や神殿では無く、ランダムに飛ばされるパターンだったらしい。

珍しいが、聞いたことはある。


そんな事を思っていると、突如頭の中で、いや頭の中まで響く声が聞こえた。



天上あまがみゆたかの異世界転移を確認。

ステータスを開放します。

勇者召喚を確認。

ジョブに“異世界勇者”を追加します。

不完全な勇者召喚による余剰エネルギーを確認。

余剰エネルギーを最適化します。

最適化完了。スキルに再構成します。

固有スキル〈適応〉を獲得しました。

余剰エネルギーは消費しきれていません。

固有スキル〈適応〉により、余剰エネルギーに適応します。

抑え込む事に成功しました。

余剰エネルギーを適応エネルギーに変換しました。

固有スキル〈適応〉のレベルが1から2に上がりました。

固有スキル〈適応〉により、周辺環境を検索します。

検索完了、適応エネルギーを用いて適応化を試行します。

成功しました。

パッシブスキル〈光合成〉を獲得しました。》



これはアレだ。

異世界転移定番のステータス更新だ。


どうやらこの世界はステータスやスキルのある世界らしい。


そして固有スキル〈適応〉とやらが俺のチート、召喚特典なのだと思う。

そして何よりジョブが異世界勇者、これは勇者召喚に間違い無い。


フフフッ、俺の異世界生活はチート勇者の救世ルートで決まりだ。

これからヒロインである仲間達と出会い、ハーレム関係に。


まさか妄想が現実になる時が来るとは。


よくライトノベルの主人公達は、召喚当初戸惑うみたいだが、興奮が一周して集中力が半端ない俺は、一瞬で状況を理解した。


自分が優秀過ぎて申し訳無いくらいだ。


おっと、定番のステータスも見てみなければ。


「ステータスオープン!」


手を突き出しスライド。


思った通りにステータスが表示された。



 名前:ユタカ=アマガミ

 称号:【異世界召喚者】【異世界勇者】

 種族:異世界人

 年齢:15

 職業ジョブ:異世界勇者Lv1

 能力値アビリティ

 生命力 1000/1000

 魔力 1000/1000

 体力 1000/1000

 力 100

 頑丈 100

 俊敏 100

 器用 100

 知力 100

 精神力 100

 運 100

 魔法:全属性魔法Lv1

 固有スキル:適応Lv2

 パッシブスキル:光合成Lv1

 アクティブスキル:アイテムボックスLv1、鑑定Lv1



「おおっ! 定番のアイテムボックスと鑑定まである! しかも全属性魔法付き! よっしゃあ!」


適応して何故か光合成を手に入れたのだけは謎だが、全て定番、テンプレ通り!

俺の未来は約束されたようなものだ!


だが、油断はいけない。


ランダム転移でどこに飛ばされているか分からない。

王宮や神殿なら何も問題ないが、外なら普通に魔物が存在すると考えた方が自然だ。


いくら勇者要素が一式揃っているところで、武器も無ければレベルアップもしていない状態では、ゴブリン相手でも危険だ。

元々俺は喧嘩の強いタイプでも、運動神経抜群でも、武術経験者でも無い。

喧嘩をしたのは小学生低学年が最後な漫画部、ゴリゴリの文科系だ。

へっぴり腰拳法しか使えない。


現状、戦闘に使えそうなのは魔法だけ。

それも使い方が分からない。


まずは慎重に人里に向うべきだ。


見晴らしの良さそうな所は、あっちかな?


緩やかな坂、丘を登るとまだ辺りは霧に包まれていた。

しかし俺の明るい希望に呼応する様に、どんどん晴れてゆく。


「…………」


とてつもなく見晴らしが良い。

言葉が出ない程に。


「ここは何処だぁーーーーーー!!!?」


目に映るのは、地平線の彼方まで続く雲海であった。

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