18歳
枯れ尾花
第1話 はき違えた、踏み違えた、どこまでも間違えた
思い返せば思い返すほどに、何故思い返したのか?何故思い返したのか?と自問自答を繰り返した。
顔から火が出ているのではと思うほどに恥ずかしくなり、自分を殺人犯だと思い込んでしまうほどに自己嫌悪に陥る。
見苦しい言い訳ばかりを頭の中で繰り返し、仕方なかったと自分を言いくるめ眠りにつく。
それを悟ったのが今。
心の底から死にたくなる。
言いくるめるのに限界が来た。
逃げ道がなくなっていることに気づいたみたいだ。
夢へ逃げても現実からは逃れられない。
時間は残酷だ。
人間は鬼だ。
人生は罪だ。
僕は雑魚だ。
残された時間をまるで夏休みの初期のように無駄に使っている。
限りあるものと分かっているのに、喉から手が出るほど欲しがっている人がこの世にはたくさんいるってのに。
あぁ、息苦しい。
この世は地獄だ。
「おはよう」
「あぁ、おはよう」
この世の菌という菌がすべて死滅してしまうのではと思ってしまうほどの寒さが僕達を取り巻く。
木々は枯れ果て、昨夜の雨のせいでコンクリートの表面に薄く氷が張り、少し足元がおぼつかない。
こういう時は気を付けないとな。
「それじゃあ行こうか。滑ると危ないから今日は手をつなごう」
「ふふん。なぁに?かっこいいじゃん」
「茶化すのならやめるよ」
「うそうそ。ちなみに私は毎日でもいいんだけどなぁ」
駄菓子のように甘い声で僕の指に細く儚い指を絡めてくる。
その手は危ういほどに冷たく、驚くほどに細い。
しかし、思い切り握れば潰してしまえるとは思えなかった。
細く冷たい指には芯があり、骨折させてしまうことはできるのかもしれないが、肝心なものは確実に折れないだろう。
曖昧模糊で抽象的な例えだと思う。
でも僕はそんな、感覚でしか分からないようなものから常に逃げ続けていた。
始まりは小学生のころからだった。
まるで変わらないを演じる彼女と、本質的に見れば何も変わらない僕とのはっきりとしていて奇妙な関係はあの頃からすでに始まっていたのかもしれない。
確かに言えることは・・・・・・・・僕はまだまだこどもだってことくらい。
常に感じる視線。
鳴りやまないひそひそ話。
増える女の子との絡み。
ニタニタとした顔。
謎の団結。
僕の世界は一瞬にして変わった。
僕の意思を無視して、僕の成長を無視して。
何の許可もなく土足で、恋という名の令状を片手に僕の中に入ってくる。
ぎらついたあの笑顔も、協力という建前の抑制不可な好奇心も僕は忘れられない。
ここまで、まるで僕が被害者であるような言い回しをしてきたが、やはりこういう時は男は弱い。
結果的に僕は加害者で、彼女は被害者、そしてあの取り巻きは記者、関係のない奴らは無害な傍観者になり切れず。
遅咲きのあふれ出る好奇心を記者の誇張された記事で事実を知ることとなる。
一方的で理不尽な嫌悪感を抱かれ、厄介者扱いされ、勝手に誰も寄り付かなくなっていった。
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