ひびわれ

蒸し暑い箱の中。

右の背に重心を預け、座面に右のかかとをかける。

だらりと掛けた椅子からは、立ち上がるまで音はせず。


耳から伸びるイヤホンの白。

指先で揺らせば耳奥の音も揺れ。

耳奥に揺れる音は、意味を捉えられる間もなく身のうちから漏れていく。


焼き付ける日差しの下。

地に身を投げ出して、空の、日の重さを感じた。

頭を傾け、耳に地面が届いたら、脳髄に響く遠くの音。


身体に響く、耳を塞ぐ意味なく、押し付けられる音。

逃れようもなく、逃れる意思などなく。


受け止める地など、今はなく。


耳奥に響く音ではもう、欠けた身のうちには残らない。


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