ORDINARY 裏街の月

流 裕

プロローグ

新年が始まり少し経った頃、この日初めて、多華子は東京に来た。ちょうど1週間後は30歳の誕生日だ。そうだ、遂に私は30代になる!…それが怖かった。やりたいことがあるわけではない。それでも…あのままでは私はみるみるおばさんになり、あんな片田舎で人生を終えてしまう!毎日のように仕事をし、農作業も手伝っているため、体型は悪くない。時々「童顔だね」とも言われるし、我ながら若く見えると思う。そうだ、私の人生を変えるのは今しかない。


東京に着いてすぐに住む場所を探した。設備のわりにはかなり安いアパートを見つけた。不動産屋に迷わず「ここにします!」と言うと、少し苦笑いをされた。


片手に花束を持ち、今アパートの前まで来た。そのアパートの名は


「ゆーかり荘」

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