第12話 ……どゆこと?
「人間が、絶滅した……」
「それ、本当なの?」
『間違いありません』
不安と驚愕を混在させた表情で北河も追求する。
反して
嘘であってほしい。そんな淡い期待も消え失せ、北河は険しく眉を
「原因は何なの? やっぱり映画とかゲームの設定みたいに、戦争やウイルスで?」
『それも要因の一つではありますが、根源的な理由は別にあります』
無機質な表情から放たれるその言葉に、俺達の視線は釘付けられる。そして、
『
放たれたその一言に、ゾクリと寒気が走った。
冷たい夜風が木の葉を騒がせて、焚き火を揺らめかせる。
「嘘よ!」
静かさの中で北河が唐突と声を張り上げた。
「だって
『うむ。その認識で間違いはない』
「ほらやっぱり!」
北河は汗を浮かべながら、どこか取ってつけたように高姿勢に腕組みした。
『だが可能性はある』
けれどヴェルファイヤーの一言が、貼り付けた北河の気持ちを
「……その可能性って?」
『突然変異だ』
絶句する北河に代わり俺が尋ねると、ヴェルファイヤーは
『生命とは複雑だ。生きようとする力、そして種を繁栄させようとするエネルギーは凄まじい』
「だから何? 分かるように言って!」
『すまない。突然変異率が高くなると比例して分子進化速度が上昇するということだ。分子進化が必ずしも表現型レベルの進化に反映するわけではないが一般に分子進化速度が高くなれば表現型の進化速度も多少なりとも影響を受けて高くなる傾向がある。思うに
「ちょ、もうやめろ! 余計に分からなくなる! 頭がパンク寸前なんですけど!」
ただでさえ面倒くさい設定とか用語が多くて鬱陶しいのに! これ以上専門用語を増やすな!
「つまり、
『その通りだ、ユウナ』
難しい顔で呟く北河にヴェルファイヤーが応じた。初めからそう言えば良いものを……というか北河はよくあの解説を理解できたな。
「でもそれが本当なら私達も危険じゃない。絶滅の原因が
『その心配は無用です』
今度は
「どうしてそんなことが言えるのよ」
『人間が絶滅した後、異常変性した
「……どゆこと?」
さっきから話が全く頭に入ってこない俺が首を傾げて尋ねると、北河はジトリと俺を横目に見た。
もしかして、話についていけてないのは俺だけなのか……?
『つまり人間を宿主とした
だが
だから難しい言葉を使うのはやめて下さいヴェルファイヤー先生! 途中までは良かったのに後半部分で理解する気力を失くしたわ!
「確かに人間を宿主にエネルギーを得ている
「だから?」
「……要は私達が
『大雑把な解釈だが、そういうことだ』
何故かげんなりとしている北河にヴェルファイヤーが補足を加えた。
「えっ、それじゃあヤバくない? 俺達……というか
「だから、その人間を殺す菌は人間を宿主にしてるの! でも
「ああ、なるほど」
ポンと掌を叩いて理解する俺に、北河は額に手を当てあからさまな溜め息を吐いた。なんだろう、俺ってそんなに頭悪いかな……。
「でも人間だって馬鹿じゃないわ。シェルターなり隔離施設なりあるでしょう。絶滅なんて変よ。皆がみんな
『いや、それは考えにくい。核爆発の放射能や太陽フレアなど事後発生的な現象なら防ぎようもあるだろうが
「確かにね。だけど――」
そうして
ていうか俺さりげなく
不意に目頭が熱くなって堪らず俺は顔を伏せた。
『あの』
そんな俺に
視線を上げると、何故か彼女が目の前に立って俺を見つめている。
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