第05話 ヴェルファイヤー
俺達の世界に存在する
だが
それが異常を起こし時に暴走してしまう。猛獣と違って麻酔も無い
それを実現しているのが、この制服型の
だからこそ北河を抱きかかえても、これ程の速さで走ることが出来るのだ。
◇◇◇
「だからってあんなデカいヤツの
すると直後、目の前に大きな川が現れた。
「うっ……!」
俺はたじろいだ。さすがに北河を抱えたまま渡るようなことはできない。流れが速すぎるし、深さも分からない。
「な、長瀬……」
青ざめる北河が後ろを指し示した。
怪獣がすぐ目の前まで迫っている。
鋭く尖った牙の向こうから、コロコロと唸るような声が耳を突き刺して。
額に汗が浮かび
(北河とライナを逃がして、俺が――)
蒼い右手の鎧に拳を握り、北河を降ろそうと腰を低くした、その時。
『カズキ!!』
精悍な、けれど機械的な男の声が響いた。
そして次の瞬間、黒く巨大な拳が俺の頭上を覆い怪獣へと穿たれる。まるで小型の隕石が激突したかのようだ。
『アンギャオオオッ!』
巨大な拳を穿たれた怪獣は雄叫びを上げながら3歩ほど
拳が引き戻されると同時、俺は振り返った。
そこ居たのは赤い装甲を纏う巨大な
炎のように赤い光沢を放つボディ。機械然としたその姿は『モビルスーツ』や『スーパーロボット』という表現がピタリな出で立ち。まさに前時代的なロボットアニメを具現化したような風体。
光沢放つボディを人間みたく動かして、赤い巨大ロボットは無機質な眼で俺達を見下ろす。
『間一髪だったなカズキ! 我々が来たからにはもう大丈夫だ!』
淀みも迷いも無い勇敢な声を響かせ、巨大ロボットはビシッと勢いよく親指を立てた。
「助かったよ、ヴェルファイヤー!」
俺が応えると赤いスーパーロボット……いや、巨大ロボット風の【
◇◇◇
俺たち
俺の場合は右手に嵌めた蒼い手甲。
この
【
ゆえに
それが【
◇◇◇
怪獣はよろめきながらヴェルファイヤーを睨みつけ凶悪な唸り声をあげる。
『ギャオオオオオオスッ!!』
天を衝くような怪獣の絶叫。体が痺れるような大気の震撼。俺に抱えられたままの北河は堪まらず耳を塞いだ。
巨大ロボット風
怪獣は
『遅い!』
怪獣と並び立つほどの巨体。にも関わらず俊敏な動きでもってヴェルファイヤーは攻撃を躱した。
地鳴りと風圧が容赦なく俺達を襲う。
「きゃっ!」
「北河!」
俺は北河を抱き込むように背中を丸めて、ヴェルファイヤー達に背中を向けた。
「大丈夫か?」
「え、ええ。ありがとう」
巨大怪獣と巨大
ヴェルファイヤーは川に足をつけて間合いを取ると、
するとヴェルファイヤーの黒い拳が、みるみると白い輝きで染まっていく。
『ブレイジング・フィンガーッ!!』
真夏の太陽みたく白く輝く左手を突き出し、ヴェルファイヤーが怪獣を迎え撃つ。
光る掌が怪獣の頭を鷲掴みに捉えた。
『ギャオオオオオッス!!』
怪獣の前頭部を掴んだヴェルファイヤーの手が煌々と輝きを増す。
怪獣はバタバタと手足を動かすも事切れたように沈静化してその場に倒れた。
倒れた怪獣を背景にヴェルファイヤーは凛々しくポーズを決めると、頭部に輝くブレードアンテナをキラリと光らせた。
いやいや、格好良すぎるだろお前。
「助かったぜ、ヴェルファイヤー」
『仲間のピンチに駆け付けるのは当然のことだ。二人が無事で良かった』
「本当にありがとう。まさか貴方も来ているとは思わなかったわ。ところで、貴方がここに居るってことはあの子も来ているのよね?」
『うん、来てるよ』
北河が尋ねると、ヴェルファイヤーから女の声が響いた。抑揚のない幼い印象の
『ヴェル、降ろして。外に出る』
「承知した!」
中から響く少女の声。ヴェルファイヤーはすかさずそれに答えると、その場に片膝を付いた。
すると分厚い胸部前面が解放されて、中から静かに姿を現す。
小学生のような見た目の女の子が。
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