帝国海軍空母概観
「引き続き私が解説させてもらうよ。
航空母艦の歴史は第一次世界大戦の最中に始まった。イギリスが既存の軍艦を改造し、今の観点から言うと中途半端な、発艦だけできて着艦はできないような水準のものだったけど、いくつかの空母を実用化し、ドイツ相手に投入したんだ。もっとも、第一次世界大戦レベルの戦車が肩透かしだったように、大した戦果は挙げていないんだけどね。
世界初の本格的な全通式飛行甲板を持った空母は、商船改造空母ではあるけれど1918年に就役した『アーガス』だった。まあ第一次世界大戦には間に合っていないんだけど。
第一次世界大戦が終わった時点で世界に存在している空母は全て、元は戦艦やら貨客船やらから改造されたものだった。では最初から空母として建造された最初の空母は誰かというと、それこそが1922年竣工の帝国海軍初の空母『鳳翔』だ。もっとも、鳳翔は現代の視点からいうと軽空母に分類される規模のもので、大東亜戦争の頃の大型化した艦載機を運用する能力はなく、輸送船みたいな活躍しかしてないんだけどね。
さて、ここから様々な空母が世界中で活躍し始める訳だけど、既に出ている様に空母は割かし他の艦種を改造して作りやすいから、正規空母と改造空母が入り混じって、技術的な進歩が分かりにくいんだよね。だから分けて解説していこうと思う。
あ、ここでは、最初から空母として建造された空母を正規空母、元は違う艦種だった空母を改造空母と呼ぶことにするよ。赤城と加賀はこの基準で言うと改造空母だ。
まずは、第一次世界大戦からワシントン・ロンドン海軍軍縮条約時代までについて。
最初の正規空母鳳翔に続いて建造された2隻目の正規空母が1933年竣工の『龍驤』だ。ただし龍驤については、当初ワシントン条約で規制されていない1万トン未満の空母として設計された艦で、純粋な進化系とは言い難い。それに龍驤も軽空母に過ぎず、後世の艦載機の運用にはちょっと無理があった。
続いて、まあ条約の紆余曲折は省略して、ロンドン条約の方で割り当てられた空母の排水量の残り2万トンほどを消化する目的で建造されたのが、1937年竣工の『蒼龍』と『飛龍』だ。まあこの2隻については、建造途中で帝国が条約から脱退したから、最終的に1万5千トンくらいに拡大しているんだけどね。蒼龍と飛龍に至って、ようやく大東亜戦争水準の新型艦載機を普通に運用できる正規空母が完成したんだ。
ここでこの時期の改造空母に目を向けよう。
帝国最初の改造空母は1927年竣工の『赤城』と1928年竣工の『加賀』だった。どちらの戦艦から改造された艦で、基準排水量は4万トン近くある。正規空母達と比べると差は歴然で、ずっと主力艦扱いだったのも納得だね。
そして次は、大東亜戦争期について。
ようやく何の制限も受けずに建造することができた正規空母が、1941年に竣工した『翔鶴型』の『翔鶴』と『瑞鶴』だ。排水量は一気に2万6千トンまで増加。ようやく赤城や加賀に並べる規模の正規空母が出たわけだ。
正規空母はここから更に進化する。次に出たのは1944竣工の『大鳳』。基準排水量およそ3万トン、翔鶴型の発展形たる装甲空母として建造された艦だ。まあ装甲空母になったせいで肝心の艦載機運用能力が落ちているという問題はあるのだけどね。
また大鳳と並行して建造されたのが、戦時急造型としてほとんど飛龍のコピーで建造された『雲龍型』だ。まあ戦時下で質より量というのはよくあることさ。雲龍型1944年から1946年にかけて6隻が建造されたね。
質より量ということで、大東亜戦争では改造空母も盛んに投入された。
最初に投入されたのは、1940年から竣工し始めた『瑞鳳型』の5隻だ。瑞鳳型とは言っても元になった艦は違くて設計も当然違うんだけど、軍艦から改造されたという点は共通だから、面倒くさいから同型艦ということにしたんだろうね。排水量としては1万トン前後で軽空母なんだけど、甲板が長めだったから割と新型の艦載機でも運用することができたよ。
次が1942年に竣工した『隼鷹型』の『隼鷹』と『飛鷹』だ。こちらは元は商船だったという特徴があるね。もっとも、実は元から空母に改造する目的で建造されていたんだけどね。排水量としてはおよそ2万5千トンだったけど、元は商船だったからか、艦載機運用能力は飛龍にやや劣る程度だった。
続いて、1942年から竣工した『大鷹型』の5隻だ。いずれも商船から改造された空母で、まあ大体隼鷹型と同じようなものかな。排水量はおよそ2万トンで、艦載機運用能力は隼鷹型未満なんだけどね。
そして最後は御存じ、元大和型戦艦三番艦の『信濃』だ。まあ言うまでもないだろうけど、大和型戦艦並みの装甲とそれに伴う排水量を持っているお陰で、未だに世界最大の空母であり続けている。もっとも、あくまで装甲が重いだけで、空母としては飛龍くらいの能力しか持っていないんだけどね。
さて、大東亜戦争が終結すると、あえて改造空母を用意する必要はなくなり、新規には正規空母だけが建造されるようになる。
戦後最初に建造されたのは、1948年から順次竣工した、大鳳の発展形となる装甲空母『蒼鳳型』の4隻だ。排水量はおよそ3万2千トン。規模は大鳳と大して変わらず、大鳳に改良を施した艦といったところだね。装甲空母は空母を少数しか持てない国には人気なようで、蒼鳳型は結局、一番艦の蒼鳳以外は全て中華民国やインドに供与されたよ。
次いで建造されたのが、装甲がないにも拘わらず排水量4万6千トンを誇る大型空母、1953年から竣工している『蟠龍型』だ。帝国海軍で初めて飛行甲板に斜めの滑走路を持つ設計で、これまでの空母とは一線を画す能力を持っているとされ、特型空母と名付けられている。今は3隻が運用されているけど、まだ建造中の子もいるよ。
そして最後が、帝国海軍が建造中の超大型空母『鳳翔』だ。世界最初の空母たる鳳翔の名を継いだ原子力空母だけど、どんな諸元をしているかは公表されていない。どうなるんだろうねえ。
以上で解説は終わりだ。すごい雑だったけどね。じゃあ早速、瑞鶴達の話を始めよう」
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