第24話 マウント尋問
実の妹の陽子にキスをさせる為、陽子の部屋で陽子のベッドに座る。なんかもう、この時点でやばいことをしている気がしてきた。何と言うか、気まずいし変に緊張してしまう。
「……お、おねえ」
陽子はこわばった声で私を呼んだ。正面に立って私を見下ろしている。圧を感じるけど、何て答えたらいいのかわからない。
「あの、目……閉じてもらってもいい?」
陽子から目を離すのは少し抵抗があったけど、この流れで拒否すべきじゃないだろう。私は黙って目を閉じた。
目の前の陽子がごくり、と唾をのんだのが耳に届く。その音が生々しく陽子の興奮を伝えてきて、余計に緊張してしまって心臓の鼓動が早くなる。
「……ん」
両肩をつかまれ、唇に生暖かいものが押し付けられる。柔らかい。
家族のとしての信頼の証ではなく、恋愛感情の下心でキスをされている。以前にされた時は突然だったし全然陽子が私を好きなことが理解できていなかったから、何も思わなかった。ただキスをされているな、何か言っているな。それだけだった。
でも今は違う。陽子が私に向けて性欲を燃やしているあの目を間近で見せられて、陽子の劣情については嫌と言うほど理解させられている。
ただ唇を合わせているだけ。陽子となら大したことではない。そう頭では思うけど、脳裏に陽子の乱れた姿がどうしても浮かんでしまう。前回と違って、性的な意味でキスをしているんだと言う意識をしてしまう。
肩にかかった重みが思いのようで、その熱量に私は思わず身を引くようにしてしまい上体が倒れないようお尻の横に後ろ手をついた。
「っ、おねえ!」
「う!」
陽子はそんな私に一瞬ついてくるように強く唇を押し付けてから、力を抜くように顔を離して、私のお尻と手の間に膝をついてベッドにのりあがり、私の肩を強く押した。
口をくっつけているのだから、動くと危ない。そう思っていたのでいきなり押されると思わず油断していた私はあっさりと陽子にベッドに押し倒されてしまった。
「ちょっと、ようー」
「ん!」
文句を言おうとする私に、陽子は上から押し付ける様にまたキスをした。開いていた口に滑り込むように舌がはいりこむ。それに前みたいに気持ち悪い、と感じるには、すでに私はキスの気持ちよさを知ってしまった。
赤の他人で親愛でのキスなんて考えられない小梅だからこそ、素直に性行為としてキスを快楽的に受け入れることができた。だけど、知ってしまった今、陽子が相手でもそれを思い出してしまう。
「んぅっ」
気持ちいい。陽子相手でも、キスが気持ちいい。と言うかむしろ、年下の陽子としていると思うと、余計に気持ちいいとすら感じてしまう。
うごめき触れ合う舌が気持ちよくて、反射的に私も応えてしまう。してもらうだけじゃなくて私も動かすとより気持ちいいと知っている私は、つい無意識にそうしてしまった。
「んん!」
陽子はそんな私に足を閉じる様にして膝でお尻を挟み、ぐっと体を寄せる様にして体重をかけ、より口づけを深くした。
その拘束されるような感覚は、全力で抵抗したくもなる。だけどそんなわけにもいかない。そんな二律背反を生んで、私の体は従順に快楽を求めてだしてしまう、思わず閉じる足に力が入る。
それに察したのか、陽子は掴んでいる私の肩をぎりぎりと握りだす。それはちょっと痛い。
勢いに苦しくもなってきたので、ぽんぽんと陽子の背中側に手を回して、多分腰あたりをたたく。
「っは、はぁ。お、おねえ」
「ん。はぁ。満足、した?」
ちょっとだけ顔をあげてキスをやめた陽子は大きく揺れる様にして息をしながら私に呼び掛ける。その熱っぽい目に、上がった体温を意識させられてしまいそうになるが、さすがに陽子とこれ以上なんてことはない。
これで終わりだ。上がった熱に残念、なんてことを考えてしまいそうな頭を軽く振りながら、これで切り上げようと陽子に確認しながらその腰を掴んでやる。
した、と言ったらすぐに持ち上げてどかせるようにする私に、陽子はぐっと眉間にしわを寄せた。
「満足、してない。むしろもっともっとしたいよ」
まあ、その可能性も考えたけど。陽子ったら欲張りさん。などと考えている場合じゃない。だってこれ以上されたら私もその気になってしまう。
まずは冷静になるためにこの空気をかえよう。
「陽子、肩を握ってくるの痛いからやめてもらっていい?」
「……それはごめん。でも、おねえ、今、ドキドキしてたでしょ? キス、応えてくれたじゃん。ちょっと私のこと好きになったでしょ? なんでそんな突き放すような言い方するの?」
キスをやめてもつかんだままだったのをやめて、改めてベッドに手をついた陽子は私を見下ろしながらもそう問い詰めてくる。
まあ、あれだけくっついてたらお互いの鼓動くらいわかるし、そうなるか。でもちょっと虚をつけたので空気かわったよね?
「確かに心臓は早くなったけど、それってもう身体的な反応だし、なんていうの? だから恋かって言われたらわからないんだって」
「ご、強情すぎる。……じゃあ、おねえ、このまま、最後までやらせてください」
「なんでそうなるの」
発想の飛躍が過ぎる。私がドキドキするって言うのが分からないからキスでドキドキさせるって話だったよね?
「だって絶対ドキドキしてたのに、認めないから」
いや、確かに陽子相手でも興奮したしドキドキしたよ。でもさぁ、性的興奮でのドキドキは恋愛の相手を思ってのドキドキとは別じゃない? 実際小梅にもそうだったし。
「そんなこと言われても、ドキドキすればいいってものじゃないでしょ? 一緒にランニングして脈拍あがれば恋ってものじゃないじゃない?」
「なんでそーゆー発想になるかなぁ! ドキドキの種類が違うじゃん。こないだ私がキスした時、どきどきした感じなかったじゃん。でも今日はちょっと違ってなかった? こう言うことしてドキドキするのはそう言うことって言うか、そもそもおねえ、自分から舌動かしてたじゃんか!」
「うーん」
そう言われると前回と違うのは確かだけど、陽子への感情によって変わったと言う感じではない。
「……世の中には、恋愛を絶対しない人もいるんだって」
「え? 何急に」
「おねえって、そう言うタイプなのかなって」
陽子のたった一週間にも満たないこの関係でなびかないからってそう言う判定するのは時期尚早がすぎると思います。今は確かにわからないし、考えすぎて恋愛感情って意味わからんくね? ってなってはいるけど。
「断定できる状況じゃないでしょ。私まだ高校生だよ? 恋を知らないって珍しい話じゃないでしょ」
「珍しいでしょ」
「私だって真面目に恋愛について考えてるんだから、そんなに言わなくてもいいでしょ」
陽子からしたら私の態度ははっきりしなくてもどかしいのかもしれないけど、私としてはつい最近の話だし、そう簡単に結論なんて出なくても仕方ないと思うんだけど。
こういうのって普通、もっと何カ月も時間をかけていくものじゃないの? 思わず文句を言ってしまう私に、陽子はちょっとだけ視線を泳がせる。
「別に、悪いって意味じゃなくて……おねえがそう言うタイプなら、それならそれで、私は……おねえが私に恋愛感情を持たなくてもいいってことが言いたかったの」
「ん? どういうこと?」
「だから……私が特別で、私と、その、えっちなことできて、私が一番傍にいられるなら、恋愛感情じゃなくても、いいから」
いいからって、なんか妥協みたいに言われたけど、私は全然よくないんだけど? なんか陽子、さらっとこのまましようとしてるね?
陽子は真っ赤な顔でまっすぐに私を見ているけど、なんかいいこと言った感すら出すのやめてくれないかな。
と言うか、いつまでもこんな至近距離でいるのがまずいのかもしれない。キスの余韻が消えるくらいはもう話してるのに、全然熱がひかないし。
陽子の腰をつかんで持ち上げようとするも、腕を曲げてのりかかるようにしてから、いやいやをするようにお尻をふって体を擦りつけてくる。胸がこすれあって下着が擦れてしまい、力がうまくはいらない。く、陽子の癖に色仕掛けか。
「お願い。私におねえの初めて、ちょうだい。小梅さんに勝てないの、薄々わかってる。私より大人だし、美人だもんね。でも、せめて、おねえの初めてがほしいの! 恋人は諦めるから、ただおねえは時々させてくれたらそれで、私は満足するから」
黙って聞いていたら、泣きそうな顔になりながらとんでもない要求をされた。
何一つ妥協してなくない? そして初めて初めてって、お前はユニコーンか? 恐いんですけど。
「あのねぇ、別に私は陽子が小梅と比べてそんな劣ってるとか思ってないって。卑下するのはやめな?」
「え……じゃあ、私を恋人にしてくれるの?」
「小梅とも陽子とも恋人にならない、じゃあダメなの?」
「……じゃあ、せめて、私をおねえの性欲発散に使ってよ」
なにがどうせめて? 目的変わってない? ねえ、絶対今やりたいだけでさっきからしゃべってない? 人の同情ひくようにさぁ。その場合、性欲処理として人を使ってるのはお前だろうが。
さすがに直接的すぎて引いてしまう私に、陽子はここが畳みかける時だとおもったのか、ぐっと顔を私の首元にふせるようにして全身でよりかかり私の二の腕を両サイドからつかむようにして抱き着いてくる。
「お願い! いつかおねえが私以外を好きになるとして、せめて初めてがほしいの!」
「そんなこと言われても、初めてじゃ……ないし」
台詞の途中で見開かれた陽子の目に、やべっと思ったけど今さら引けないので全部言う。ぱっと陽子は顔をあげる。私も首だけあげる。目をまん丸にしている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます