異世界転移したおっさん、放置ゲーの独自システムに救われる

空飛ぶ猫

1章 異世界転移

1話

俺の名は、小石こいし まなぶ。32歳独身。

どういう理由か知らないが、よく『大学だいがく』のあだ名で呼ばれていた。

年齢 = 彼女いない歴だから、立派な魔法使いである。



……すまん。魔法使いは嘘だ。ただのサラリーマンである。

ゲームとかラノベとかが好きな、ただのおっさんとも言う。

おっと! 目から汗が……


ま、まぁ、それは置いといて。


唐突だが、自分語りをさせてほしい。

えっ! いらないって?

遠慮せずに聞いてくれ。頼む! お願いだ!




ゴホン。では。


俺はそこそこ勉強ができる!

所謂、勉強ができる馬鹿という奴だ。

だから、応用が利かない、機転も利かない……と思う。


……あるぇ!? 俺、できない男に聞こえない? 大丈夫?


ま、まぁ、これも置いといて。(今日2回目だなぁ)


次は容姿だ。

俺は身長が178cmある。体格もごつい。運動はしていない。

顔は体に合わせて、四角い輪郭だ。

顔のパーツは……モブキャラのサブレベル、と言っておこう。

最近のモブ、かっこよくない!? あれ理不尽だと思う!


……話を戻そう。

最近は、飛び出てきた下っ腹が悩みだ。それと身長もかな?

昔は、178cmでも頭一つ抜けて高かったが、最近では平均ぐらいだろうか?

会社に入ってくる新人が、俺より目線高くて、なんかムカつく。


そうそう新人と言えば。

俺は、地元の大学をそこそこ良い成績で卒業。

実家から近い都市部にある、ホワイト企業と評判の会社に就職。

約10年間、身を粉にして働いてきた。


……嘘だ。

たまに残業はするが、ほぼ定時かつ、有休も上限までは使い放題の優しい会社だ。

ただ、上司には少し困っているか。

俺も優柔不断だが、上司も優柔不断なんだよなぁ。

人によく見てもらいたいから、色んな部署から仕事を引き受けて、回らなくなって部下に丸投げして……。

うん。典型的なダメ上司? でも面倒見はいいんだよなぁ。


おっと、また脱線だ。すまんすまん。

ちょっとした愚痴も零してしまったが、ここからが本題だ。




2222年2月22日 22時22分

この記念すべき日と時間に、とあるゲームがリリースされた。


その名は『Second Life Online』。通称SLOである。

どっかで聞いたことありそうな名前だ。

また、発売日時から『Eleven Second』。通称ESとも呼ばれている。

というより、大半のプレイヤーがESと呼んでいた。


これが、まぁた面白いんよ。なんといってもシステ……etc




--10分後--


ぅおっほん。失礼、話が横転してしまった。

まぁ、とにかく俺がESを好きで、愛していることが伝わっただろう。


ESは、ただの放置系ゲームの一つである。

VRMMOと思ったそこのお前! 残念だったな!


放置系の魅力は、ログインしていなくても、勝手に経験値が溜まることだろう。

仕事が終わって、ログインして、溜まった経験値を使って、レベルを上げて。

あの、レベルがポンポン上がる爽快感! たまらん!


様々な放置系ゲームがある中、ESは他とは違う、独特のシステムが採用されている。

今でこそ人気だが、リリース前後はそんなに注目を集めていなかった。

簡単だ。2200年以降は、VRゲームが市場を独占していたからだ。

まぁ俺は、元々システムに重きを置いていたし、VRゲームの戦国時代中に放置ゲームという異彩さ。

実家暮らし、彼女なし、趣味なしの俺が、ESにハマるのは火を見るよりも明らか。

もちろん発売初日から、有休を使ってまでプレイしている。

さらに本日までの課金総額は1000万越え。

実家暮らしをいいことに毎月10万、どうしても欲しいアイテムや装備があれば、ガチャで当たるまで。

そんな美課金……間違えた。微課金生活をしていた。




そして、2231年2月22日の今日、9年を迎えるESは……特にイベントもなかった。

ここ数か月、イベント尽くしだった運営も、公式で休みたいと闇を零すぐらいにやばかったらしい。

プレイヤー総出で運営を説得し、9周年目は静かに迎えようとなった。


というよりこの運営、プレイヤーを思ってくれてマジ神だ! と思ってしまった。

でも2か月前の、エクス装備一式の改悪はマジで許さねぇぞ!



まぁ俺も、イベントで貯金溶かしたから、静かに過ごそう。

というより、両親にばれて。

近所迷惑かってぐらい怒鳴られ、家から追い出され。

財布も通帳も置いて来たから、無一文の俺氏。

まだ雪がちらつく中、これからどうしよう?

仕方ねぇ。給料日まで会社に寝泊まりするか。


そう思って一歩、踏み出した時。

ジャージを着ていても、肌を刺すように冷たかった感覚がなくなる。

驚いて顔を上げた先に、中世を模したような建物群。

少し大きめの通り。その端に立っていた。



……ふぅ。とりあえず、自己紹介だな!






うっし。自分語りと近況報告が終わったな!

そして、そこそこ時間が経ったのに、景色が全っ然、変わらねぇ……

完全に現実逃避。おまけになんで自己紹介?

はぁ~、これ本当にどうしよう?

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