第10話女は怖い!
結局、今度は両家の親を交えて話し合う事になり、ラグナとシリルはどう償うか宿題となった。
でも今回フィーラ様とマリン様は今まで言えずにいた本音を少しは吐き出せてちょっとスッキリしたお顔になっている。
対照的にラグナとシリルはどんよりしてるけど、いきなり婚約破棄を突きつけられて現実を受け止めきれずに罰を受けるより、償う猶予を貰えてよかったじゃない。
もう少しでそうなる所だったけど王妃様の間接的な介入でグラント公爵家もフォルツ侯爵家も一方的な破棄はできなくなって、ラグナとシリルには反省と自覚を齎した。
もしかして私を巻き込んだのって、私にも反省と自覚を促すため?
怖っ!王妃様は敵に回さないようにしよう。
反省はしてるけど、私の償いって週末にカルゼの邸に行き多分ゴニョニョなんだと思う。
断るなんて選択肢は私にはないけど、結婚前に純潔じゃないのはさすがに不味い。
どうしよう·····
私達はそれぞれの教室に戻るべく一般食堂を歩いていたら、ピンクブロンドの髪を揺らしながらこちらに体当たりしそうな勢いで走ってくるシフォン。
学園の警備に見張って、特Aに来たら捕まえて警備室に連れていくよう言ったのに、一人なんだけど?
警備は何やってんの?
取り敢えず今はこの子をラグナ達に近づけちゃ行けない。
私はラグナ達を守るように一歩前に出た。
アジスとカルゼも前に出ようとしたけど、ややこしくなるから出てくんな。
「シフォン様、お下がりなさい。
いくら学園といえど礼儀をわきまえたらいかが?」
今の状況みて空気読んで!
「ラグナ様、警備の者が私がラグナ様の元へ行くのを邪魔するんですぅ~。」
なのに私の存在をスルーしてラグナの元に行こうとすんな!
「もう一度言うわ。
下がりなさい。これは警告よ。」
「アーシア様、宜しいではありませんか。
折角ですから殿下の
さっきのってラグナがこれからは君を大切にするってやつ?
「ではシリル様も先程わたくしの言った言葉を覚えているなら
マリン様は悪いと思ってるなら自分で考えろってのだろうけど、シリル大丈夫?
『シフォンにマリン様が馬鹿にされたって昨日話したよね。
それ頭に叩き込んで喋りなさいよ。』
シリルが前に出た時に小声で伝えたけど、これぐらいはいいよね。
シリルは私の忠告に小さく頷いて、ラグナと一緒にシフォンに対峙した。
さっきの話し合いで初めて知ったけどラグナもシリルも、シフォンに好感を持っていたけど体の関係どころかキスもしてなかったらしい。
マジで?
アジスはシフォンに嫌悪感があったし、カルゼに至っては同じ空間に居るだけ程度の認識だったそう。
私が見る限りシフォンは全員が自分に気があると思ってるけどね。
それにしてもさっきまでそんなにいなかった学園生がだんだん増えて来てるんだけど。
他人の修羅場は楽しいですか。
そうですか。
「
下がれ。」
「え?」
いきなり名前呼びから家名呼びになったら疑問しかないよね。
「聞こえなかったか?
下がれと言ったんだ。」
「ど、どうして?」
「私の振る舞いが君に誤解を与え、私の大切な婚約者でもあるフィーラを傷付けていたのに気づいたんだ。
これからは誤解を受けるような態度を慎まなければならない。
ハウゼン男爵令嬢、君の貴族にない思考は新鮮で得るものがあり感謝している。
だが私の好奇心によって誰よりも大事なフィーラを苦しめる結果になり後悔してもしきれない。
フィーラ、本当に申し訳なかった。」
腐っても第二王子、片膝ついてフィーラ様の手の甲にキスする姿は絵になる。
「そんな、そんなのおかしいです!
ねえ、シリル様、なんとか言ってください!」
シリル、私が今言った事忘れずに!
「俺も同じだ。
ハウゼン男爵令嬢との関係を婚約者に疑われた。
その原因は俺の愚かな行動にある。
ハウゼン男爵令嬢には貴族以外の考え方を教授してもらったがもう十分だ。
そんなものより守るべきは婚約者の矜恃と信頼だ。
どちらも守れなかったのは俺の失態だった。
マリンすまない。」
こちらも片膝ついてマリン様の手の甲にキス。
騎士を目指してるだけあって様になるわ。
腕吊るして両頬パンパンに腫らしてなければだけど。
二人ともあくまでも知識を深める為だって言いたいんだね~。
信じられないけど二人とも好意とは別にシフォンの貴族的でない思考や知識ー要するに庶民的なものにも興味があってよく話していたそう。
でもそれなら庶民的な同性でもいいじゃない?ってなるよね。
そんな言い訳が通用するかな?
「私の事可愛いって言ったじゃない!」
「社交辞令だ。
フィーラのチスの泉のような美しさには叶わない。」
「俺も一般論として言っただけだ。
マリンのチスの泉のようなずっと見ていたいほどの輝きはない。」
二人して人の台詞をパクるな!
特にシリル、私の台詞そのままじゃない。
もっと捻れ!
「二人とも酷いわ!
カルゼ様、アジス様はこんな酷い事言いませんよね。」
うわ、カルゼとアジスに飛び火した。
「酷い事も何も俺は君とほとんど喋ってないけど?」
空気だと思ってたもんね。
「僕も相槌を打つくらいしかしなかったよね。」
アジスは想像つく。
「あんた達二人ともなんで特Aで食事してたの?」
「シーちゃんが一緒にご飯食べてくれなかったから。」
あ、自爆したわ·····
こっちは後からフォローするとして、アジスを見た。
「付き合いで。」
そうだったね。
「どうして皆そんな酷い事ばかり言うの?!
今まで婚約者なんて気にしてなかったじゃない!
婚約者よりも私を優先してくれたじゃない!
そうか、婚約者に何か意地悪を言われたんでしょ?
私もフィーラ様やマリン様にーー」
「
私達の婚約者を侮辱するなら絶対に許さない!
それにフィーラやマリン嬢は君より爵位が上だ。
許しもないのに馴れ馴れしく名で呼ぶな!」
「ラグナ様·····」
「殿下や俺の名ももう呼ばないで貰おう。
許した俺達が間違っていた。
それに関しては謝罪する。
申し訳ない。
そのせいで君が立場を忘れた行動をとっていたなら、改めてもらいたい。」
シフォンからすれば
ラグナ達も悪いけどシフォンも
貴族しか通わない学園で高位貴族令嬢を敵にまわしたんだから。
フィーラ様もマリン様もすっごいドヤ顔。
この子の貴族としての人生終わったわ。
警備が来たので手を上げてシフォンを指し、連れていくよう合図する。
なんで捕まえて置けなかったかは後で聞こう。
·····いや、聞くまでもなかった。
顔にすっごい引っ掻き傷がある。
痛そう~。
衆人環視の中、乱暴に腕を掴まれて引きづられても自業自得だね。
「いや、助けて!
ラグナ様、シリル様、カルゼ様、アジス様ーーー!」
名前を呼ばれたラグナとシリルは婚約者の手を取り、カルゼは私にピッタリ引っ付いている。
アジスだけ困ったようなお顔で引きづられていくシフォンを見てたけど、つけ込まれるよ。
「アジス、同情したら死ぬ死ぬ詐欺に引っかかるよ。」
アジスは優しいからね。
「いや、ちょっと可哀想だとは思うけど、人の悪口でマウントとってくる人に何言われても響かないよ。」
そりゃそうだよね。
この子もラゼントリオの教育受けてるから、大切な人以外にはそれなりの対応しかしないか。
後は家同士の問題になるから、王妃様のお願いはちゃんとできたよね。
アジスのフォローが大きかったけどね·····
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